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マリアは、下を向きながら考えた。
どうしてこうなったのだろう?
ここは、トラス王宮の一室。この国の上流貴族10人が多分私のために集まっている。
豪華な衣装を着た、この国の重鎮。全員の視線が痛いほど私に向いている。
「・・・この娘が・・・」
「・・・本当に・・・」
ぶつぶつと独り言が、あちこちから聞こえる。誰も大きな声で発言せず、時間だけが過ぎるのかと思ったとき、隣から声が上がった。
「この者は、言い伝えの紫の娘。王宮に住まわせる。」
その声に、一番端の老人が
「それは、陛下の側室として迎えると言うことですか?」
「賓客としてだ。話は以上だ。」
彼はガタン、と音を立てて、椅子から立ち上がった。そのまま、振り返りもせずに部屋から出て行ってしまった。
誰も文句は言わない。それは彼がアレクサンドル・シュテット・ファイン・トラス、この国の国王だから。
そして、この王宮にマリアを無理やり連れてきた本人である。