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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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ありのままを愛して

作者: 聖湾
掲載日:2013/12/05

 この世界は乙女ゲームの世界である。

 それは分かっていた筈だった。

 でも、こんな事になるとは思わなかったんだ・・・




「薫、黙って俺についてこい」


「何を馬鹿なこと言っているんですか。立花、さ、行きましょう」


「いやいや、副会長も何サラッと連れてこうとしてるんすか。薫ぅ、先輩方の言う事なんて聞く必要ねぇぞ・・・(俺の言う事だけ聞いときゃいいんだ)。」


「立花先輩、一緒にケーキ食べに行きましょう! もちろん僕の奢りです!!」


「お前等なぁ、立花が怯えてんぞ。立花、気分が悪くなったらいつでも保健室にこいよ」


「い、いや、あの・・・」


 五人のイケメンに囲まれたボクは、できる限り彼等と距離を取ろうと壁にはりつきながら、意味のない呻き声をあげた。


 逃げたい。どこでもいいから、ここから離れたい。

 誰か助けて!


 ボクは声にならない声で助けを求めた。




 ある日突然、ボクは乙女ゲームの世界にトリップしていた。

 朝、目が覚めたら自分の部屋ではなく、知らない、けれどどこかで見た覚えのある部屋にいた。

 最初は何が起きたのか分からなかったが、お母さんがとある乙女ゲームの主人公の母親になっており、攻略対象と同じ顔の少年が幼馴染として迎えに来た時点で、ようやく乙女ゲームの世界にトリップした事を理解した。

 しかも、おそらくは主人公のポジションだ。


 その乙女ゲームは『胡蝶の羽ばたき』。


 幼馴染のいる学校に転校した主人公が、そこで出会った俺様生徒会長、メガネ副会長、小動物系の後輩、腹黒保健医と交流し、恋人となるゲームだ。


 ここで、定番の乙女ゲームトリップものの小説ならゲーム知識を活用して彼等の誰かと恋人になろうとしたり、逆ハーレムを築こうとするのだろう。

 だが、ボクにはそれは当てはまらなかった。

 その理由は単純明快だ。


 ボクが本来の可憐な美少女の主人公ではなく、元の世界そのままの姿でトリップしたからだ。

 乙女ゲームの世界だと気付いた時は真っ先に鏡で姿を確認し、そこに自分の姿が映っているのを見たときは心底安堵した。

 素のボクが男の子と付き合うなんて考えられない。

 ボクが彼等と付き合うなんて、想像するだけで寒気がする。

 うん。あり得んわぁ。


 それに、どうでもよい事だけど付け加えれば、ボクはこのゲームの知識を全く持っていなかった。

 このゲームにハマっていたのはボクの姉で、ボクはこのゲームをやった事がない。というか乙女ゲームなんてやった事がなかった。

 ボクがこのゲームの攻略対象の顔とかを知っていたのは、姉がしつこくこのゲームをボクにやらせようとあれやこれやと話してきたからだ。

 何故姉がボクにこのゲームをやらせようとしたかと言えば、ボクの名前が原因だった。

 ボクの名前は立花薫。そして、このゲームの主人公のデフォルトの名前も立花薫。

 つまり、ボクと主人公は同姓同名なのだ。

 案外、ボクがこのゲームの世界にトリップしたのも主人公と名前が同じだったのが原因かもしれない。

 元の世界でもちょうど転校するところだったし。幼馴染はいなかったけれど。


 こうして早々に乙女ゲームとして考えることを放棄したボクは特に攻略とか考えずに行動した。

 横暴な生徒会長と喧嘩したり、学園祭の委員を押しつけられて副会長と予算を巡って口論したり、自信を失った後輩の相談に乗ったり、階段を落ちそうになった生徒を助けようとしたら自分の方が落ちて保健室に運ばれたりした。

 あと、何故か幼馴染が一緒に登下校したがっていつも一緒に登下校したり。


 ・・・うん。

 よく思い返してみると、何故か攻略対象とよく接触してるよねぇ。


 それか、それがいけなかったのか!

 知らないうちにイベントをこなしてたのか!


 いつの間にかボクの周囲にはイケメンの攻略対象達がたむろするようになり、なにやら攻略対象同士でメンチをきりあっている。

 これは、あれか。

 逆ハールートか? それともハーレムルートか?

 クラスメイト達の視線が痛かった。先生達でさえ、ボク等の姿をみると、そっと目を逸らすのだ。

 お願い。誰か助けて・・・


 そして話は冒頭に戻る。


「薫! 俺のものになれ!」

 嫌だよ、絶対!

「立花。さ、食事に行きましょう」

 絶対に別の意味で食べようとしてるよね!?

「先輩、ケーキ食べ放題ですよ!」

 食い物で釣られるか!

「薫、好きだ!」

 とうとう告白されたよ!

「やれやれ、ここは学校だぞ」

 なら何で先生もここにいる?


 引きまくっているボクの姿に、幼馴染が頬を紅潮させて詰め寄ってきた。

 その熱い視線が痛い。


「なあ、薫。何がいけないんだ!」


 その言葉に脳の配線のどこかがプチッと切れた。


「いけないに決まってるだろ! 問題大有りだ!!」


 ボクは自分の制服を示して叫んだ。




「ボクは男だぁぁぁぁぁ!!!」


同姓同名ですが・・・同性とは言ってません。

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