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合言葉はコード・ブルー  作者: ren
天使じゃない!
15/26

ICUの闇

かなり暗い話題になります。飛ばしても問題ないので、嫌な方はどうぞ飛ばして下さい。

次の患者さんはICUにいた。一歩ICUに踏み入れると、その異様な光景に驚く人は多い。サーベルさんもその一人だったらしく、しきりにキョロキョロしている。

「ここがICUです。」

「…なんと言いますか。ここは…落ち着かない場所ですね。」

そう、ICUは決して静かな場所ではない。可動式のベッドがズラリと並べられたそこには、点滴やらなんやらで体に何本ものチューブが刺さった患者さんが横たえられている。まわりを囲むのは音がなる機械ばかり…。ちょっとでも異変が起これば、すぐに各々の機械が音を出して看護師(ナース)が飛んでくる。

「サーベルさん、もしあなたがこのICUに3日ほど泊まらなければならなくなったら、どうします?」

「うーん。ちょっと気がおかし…いえ、耐えれないでしょうな。」

「そうですね。私も実はそう思います。」

「…!」

「ICUにいる患者さんで、この異常な環境に耐えられず、精神的症状を来す方は珍しくありません。それをICU症候群と呼んでいます。」

「…ICU症候群、ですか。」

私はとあるベッドに近付いて行った。そこには中年の女性がいた。女性の両手には大きなミトンの様なものがはめられている。

女性は見るからに異様なオーラを放っていた。顔は苦痛に歪み目はずっと瞑っているようだ。ひっきりなしにぶつぶつと何かを呟いているうえ、手足をしきりにバタバタさせているので、かなり近づきにくい。

私はサーベルさんに少し離れたところで待つように指示し、気にせずに近付いて行った。

「トウラさん、おはようございます。」

「…私を殺しにきたのか!」

「違いますよ。今日はご機嫌いかがですか?」

「外せ!この忌々しい手袋を外せ!」

「外したらトウラさん、また点滴抜いちゃうでしょ?もうちょっとの辛抱ですからね。」

「ううう、許さんぞお主!死んだら化けて出てやる!!」

「はいはい。」

トウラさんが全力で喚くのを相手しながら、私はなんとか朝の診察を終えた。

サーベルさんのところに戻ると、かなりショックを受けた表情だ。

「…今の方が、ICU症候群の?」

「えぇ。元は高校の教師をされていたそうですよ。道端で倒れているのを発見され、ここに来られました。…重度の人間不振になってしまわれているので、いつもあのような感じですが、昔は優しい先生だったそうです。」

「…。」

医療はキレイゴトでは済まない。例え患者さんに罵られても、しなければならないことはある。これはICUの抱える闇のほんの一部に過ぎないのだ。

私はサーベルさんを見ながら、そろそろ話題を変えた方が良いだろうと判断した。

「次の患者さんで最後です。終わったら、ちょっと早いですが昼御飯にしましょうか?」

「えっ!もうお昼ですか?」

サーベルさんはおもわず時計を確認していた。時刻は10時を少し過ぎたところ…。確かに昼御飯にはかなり早い。

「ここではいつ患者さんが運ばれてくるか分からないので、食べれる時に食べるのが基本なんです。」

「なるほど…。」

―何が食べたいか考えておいて下さいね、と言いつつ私達は最後の患者さんのところへ向かった。

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