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四章 ~胸騒ぎ 別名、虫の知らせ~


  ◆


 中田君が教室に戻ってきて、その後の授業は普通に開始された。中田君は何も言っていなかったけど、どうやら無事に解決したらしい。―――でも、胸騒ぎは未だに続いていた。


 授業がいつも通りに終わり、下校時間になる。中田君は用事があるとかで、少し残っていくみたいだった。ついでに、西崎君も。だから私は、荷物を纏めて一人で帰ろうと思っていた。

「……っ!」

 そしたら突然、胸の奥がちくりと痛んだ。

(もしかして、これも、胸騒ぎなの……?)

 今まで、こんな感じになったことはなかった。だから、病気じゃないかと不安になって、保健室に寄ることにした。


「……失礼しまーす」

 保健室の扉を開けるけど、中には誰の姿もなかった。

「あれ……? 先生、留守なのかな……?」

 だとすれば、ここにいても意味が無いように思えてきた。

「……やっぱり、帰ろう」

 よく考えたら、痛みは大したことないし、先生の手を煩わせることでもないように思えてきた。それなら、早く帰って休んだほうがいいだろう。

 私は保健室の扉を閉めて、昇降口に向かった。


 校門を出て、通学路を自宅へ向けて歩いていく。ただそれだけなのに、いつものことなのに、今日だけは何かが違った。

(もしかして、見られてる……?)

 私に友達がいない原因。背が高いのは、その直接的な理由じゃない。一番の理由は、背が高いせいなのか、私が時々変質者に付き纏われるからだ。それ故に、私といると自分も目をつけられるからと、私は長い時間を一人で過ごすことになった。それに、変質者は当然にしても、周囲からも奇異の目で見られ、私は所謂「浮いている子」だった。そんな子と仲良くすれば、自分も除け者にされる。この前テレビで見た、いじめ問題を取り上げたドラマみたいな感じだと思う。子供の集団心理って、結構怖い。

 話が逸れたけど、つまり私は、他人の視線に敏感だ。特に、好奇の眼差しよりも、悪意の篭った視線にだ。そして、これは多分、後者のほう。誰かが、私を、悪意を持って見ている。

(どうしよう……?)

 一応、防犯用のブザーは持っている。けど、この手のブザーは誤作動が多くて、それに慣れたせいか、今では誰もすぐには駆けつけてくれない。でも、ちゃんと人通りの多い道を選んでいるし、まだ明るいから、今すぐ何かをされたりはしないはず……。

(とりあえず、人の大勢いる場所でやり過ごす……? ううん、それよりも早く帰ったほうが……)

 そうやって考えながらも、私は自然と早足になって、視線の主から逃れようとしていた。だけど―――

「……っ!」

 帰りを急ぐあまり、つい近道である人通りの少ない道に入ってしまった。それに気づいたときには、目線の主が、すぐ傍にまで迫っていた。

「よぉ、電柱女」

 そして、背後から聞こえてきたのは、そんな嘲るような声だった。

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