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七章 ~当日 狂戦士は~

 西崎君、牧野さんと合流した私は、弓、冷も含めた五人で、公園の中を歩いていた。向かう先は、桜並木のある遊び場。

「あれ……? あやめさんは?」

 その途中、牧野さんが思い出したように言った。ああ、彼女には言っていなかった気がする。

「あやめなら、場所を確保してもらってます」

「場所取り?」

「ええ」

 あの子は昔からそういうのが得意、というか好きだった。それはもう、病的なほどに。

「なんでも、昨日の放課後から確保しているそうです」

「えぇっ!?」

 牧野さんが途轍もなく驚いている。無理もないと思う。あやめのことを知らない人は、大体こんな反応をするものだから。かく言う私も、かつてはその一人だった。

「まあ多分、徹夜でP○3してるでしょうから心配要りませんよ」

「P○3!? P○Pじゃなくて!?」

 うん、私も最初は驚いた。携帯ゲーム機ではなく、テレビ用ゲーム機なんだから。

「小型発電機と小型テレビに接続して、野外でも不自由なく遊べるらしいです」

「そうなんだ……」

 カルチャーショックを受けた様子の牧野さん。しつこいようだけど、私もそうだった。まさか、そこまでしようとする人がいるだなんて、普通は思いもよらないだろう。

「何せ、P○3を買うために丸四日並んだ子ですから」

「四日も!?」

 因みに、当時の彼女は小学生。それも、保護者同伴ではなく彼女一人で並んだ。多分、今も一人で場所取りしてるんだろう。

「それって、危なくないの……?」

「私も最初はそう思いましたけど。あの子ったら、一緒に並んでる人たちと意気投合して、ずっとゲーム談義してたらしいですから。今日も、隣で場所取りしてた人たちと一緒にゲームして夜を明かしたって電話してきましたから」

 そのときのテンションは、明らかにおかしかったけど……まあ、それもあの子なのであまり気にしない。というかしたくない。

「あやめさんって、そんな人だったんだ……」

「まあ、あの子は楽しいことのためなら何でもしますから。一緒にいると退屈しないですよ」

 噂によると、学校ではあやめのファンクラブが出来ているそうな。だけど、あやめは学校でそういう一面を出さないことが多いから、普段の明るくて活発な性格が評価された結果だと思う。もしそのファンクラブの人たちがあやめの本性を知ったら、一体どんな風に思うんだろうか……。

「ですからあの子、今頃徹夜明けの妙なハイテンションでしょうから、ちょっと注意して下さいね」

「う、うん……」

 一応事前に話しておいたから、これ以上のショックは受けないと思う。っていうか、「あの」状態になってると思うと、私ですら覚悟を強いられてしまう。……せめて、寝不足でテンションが落ちてますように。



「おっはよーみなさぁん! 今日も元気にフィーバーしようZE☆」

「……」

 ……駄目だった。初っ端から意味不明すぎる。台詞だけだと誰だか分からなくなってしまった。

「どーした桜にゃ~ん? 相変わらず暗いのぅ~でも今日はパァ~ッッと弾けて消し飛べYO!」

「あ、あやめさん……?」

 これは……想定していたよりダメージが大きいみたいだけど、無理もない。目が充血して、隈が出来てて、肌はボロボロの最悪コンディションなのに、笑顔だけはとても眩しい。いけないお薬とお酒と合法的なお薬とその他諸々を一度に服用したと思われても仕方がない状態なのだから。私だって、この子じゃなかったら真っ先にそう思う。

「ゆぅにゃぁ~ん駄目だZO☆ ゆぅにゃぁ~んはうさ耳つけてピョンピョンするのDA!」

 なんか、さっきから語尾がローマ字に……まさか、もうここまで進行していたとは。恐るべし、徹夜明け。

「ほらほらぁ、こっちこっちぃ~! ついでにビール持ってこーい!」

「お酒は二十歳からです」

 ……とりあえず、法とマナーだけは守らせないと。

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