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紺碧の死神  作者: 零光
5/14

5:地獄の業火

目覚ましが鳴る。

朝がやってきたかと思うと俺の上に何か柔らかくて暖かいものが乗っていて起きられない。

その柔らかくて暖かいものは俺の腹の部分に頭を置き,うずくまるようにして静かに寝息をたてていた。

こんな姿を見たら死神なんて思わないよな。普通。

その少女は紺色の髪をさらりと白くて綺麗な手で撫でながら少し上体を起こした。


「あれ? ……なんでゆうくんがそこにいて私の……!? えっ? もしかして上に乗ってました!? 」


えぇ。乗っていましたね。すぅすぅ寝息を立てながら。

そういうと彼女の顔が少し赤くなるのが分かった。


「ぎょ……ぎょねんなさい! じゃなくて,ごめんなさいっ!! 」


別にいいですよ。あんな可愛い寝顔が拝めただけ幸せですよ。

さて,今日はいい目覚めだ。



朝は昨日と同じようにリビングに置いてあったパンを食べ,学校へと向かった。

通学路を歩く男女と言うのは悪くない物だなんてこのときは思っていた。

しかもその少女は実に容姿端麗という言葉が似合う外観を備えている。

しかし,クラス内となるとそういう話ほどネタになる物はなく。


「おっ! 雄二〜お前って隅に置けないんだな」


クラスに入った時の第一声がそれだ。

隅に置けない?

何の話だか。


「まぁまぁ,そう否定するなって」


だから何が?


「昨日一緒に帰ってたろ? ルゥちゃんと」


俺は硬直した。というか目の前にいるヒロが何となく聖人に見えた。

いや,これは違うだろうが。

とにかく,いきなりというかなんで知っているんだ?


「いや,昨日予備校が急に休みになったんでお前を追いかけてたら二人が交差点前にいるのを見かけてさぁ。焦った焦った」


このやろう。

まさか学校始まって3日で見つかるとは予想もしなかった。

よりによってこういう話題はクラスに広まる速度が恐ろしく早い。

しかもルゥはこの事態を知らずに俺の後から教室に入ってきた。

もちろん女子軍からの質問攻め。

よく見えなかったが顔が紅潮していたように見えた。


今日学校はその話題がトップニュースとなり,俺とルゥはその対処に追われていた。


「ねぇ,雄二ってルゥちゃんと付き合ってるの? 」


単刀直入に聞いてきたのは恵美でいつもより少しおとなしそうな口調だったと思う。


「違うって,友達。仲いい友達」


俺はこの逃げ道で今日一日逃げ続けている。


「そっか」


いつもの恵美には無いようなおとなしい声で答えるとそのまま恵美は自分の席に戻っていった。

なんかまずかったか?


「雄二は良いよなぁ」


と、俺の横の席で頬杖をつきながら純が呟いていた。

何のことだか。

ルゥは友達だからな。


「分かった分かった。お前は鈍いからな」


意味分からん。

確かに鈍いかもしれないがいきなり言われても困るぞ。


「お前さぁ,わざとか? 」


何が。


「ふぅ,お前がわざとそんなキャラを演じているわけ無いか。大変だな恵美も」


なんで恵美が出て来るんだか。


今日はそんなネタがありふれる中で一日が過ぎていき放課後に。

今日は聖人来なかったな。

というかどうぞ二度と来ないで下さいませ。


「ねぇゆうくん? 」


後ろの席から人差し指で俺の背中をちょんっと突いてきたルゥは少し困惑したような顔をして小声で言った。

なんか背中がむず痒い。


「今日,一緒に帰ったらまずいかなぁ? みんな私とゆうくんの関係とかいうの聞きたがってるんだけど,私死神だってばれちゃったのかなぁ……」


ばれてはいないから大丈夫。

皆が聞きたがってるのはそっちの関係じゃなくて他の関係だろう。

でもさすがに今日も一緒に帰るのはまずいか。


「じゃあ俺が先に帰ってるから後を追ってきてください」


そういうことで俺は先に帰り家でルゥを待つことにした。

道は分かっているって言ってたし大丈夫だろう。

家についたころは5時過ぎでいつもならこの時間ゲームでもしてるんだが,何となくそんな気分にならなかった。

窓の外が暗くなり始めたころ。

次第に焦る気持ちが沸いてきた。

ルゥはまだ来ていない。


「遅い」


もうすぐで7時だ。

いくらゆっくり歩いているにしても遅すぎる。

何かあったんだろうか。


7時を過ぎたとき親が帰ってきた。

俺は不安な気持ちに駆られルゥを探しに行くことにした。


「どこ行くの? 」


「純の家! 」


親に聞かれた問いには反射的にこう答えていた。

純の事は親も知っているしこう言っておけば大丈夫だろう。

俺は通学路を自転車で逆走し学校まで着いたが,途中にルゥはいなかった。


「どこ行ったんだよ? 」


学校まで全力で自転車をこいできた俺は体力をだいぶ消耗していた。

飲料水なんぞ一瞬で我の前にひれ伏すだろう……じゃなくって。


「何やってんだお前? 」


そこにいたのは部活帰りの純だった。

この際誰でもいい。


「あのさ,ル……松野さん見なかったか? 」


純は不思議そうな顔をしていたがゆっくりと指を俺のもと来た道へと指差し,


「グラウンドでサッカーやってたときにあっちに小走りで行くのは見たけど」


すれ違ったか? それとも迷ったのか?


「サンキュ!! 」


そういって俺は再び家に向かって自転車をこぎだした。

後ろで純が何か言っていたが聞こえなかった。


だが昨日の交差点まで来てもルゥの姿は無かった。

本当にどこ行っちゃったんだよ?

信号が青になるのを待っている間辺りを見回してみたがルゥはいない。

その代わりに知っている人物を見かけた。


「恵美!! 」


俺の前方にいた恵美に声をかけるとびくっとして彼女はこっちに顔を向けた。


「雄二? 何してんのこんな時間に? 」


「ル……あ〜松野さん知らないか? 」


そういうと恵美は小さく声を洩らした後なぜか少し目を伏せて


「ごめん,見てない」


それだけ言うと恵美はごめんねと言い残し歩いていってしまった。


「おっ……おぃ!? 」


何かまずいこと言っちゃったか?

何か俺嫌われた?

恵美の後姿を見ていたとき体が嫌な気配を感じた。

何かこの前の,紫の空間と似た空気。

そしてその空気は徐々に膨張していき,俺の視界に異常な光景が浮かんだ。

紫色の光が柱のように天空に向けて立っている。

場所は俺の家の方。

嫌な予感がした。

周りの奴らには見えてないのか?

恵美は気になるがこの気配の方が気になる。

何か嫌な感じだ。

俺はその紫の柱目掛けて自転車をこいだ。


周りの風景が全く気にならなくなるくらいの速度で俺は一直線にその紫の柱を目指した。

そしてその前まで来たときに俺はわかった。

この柱の中にルゥはいる。


外からは見えないがルゥの気配がする。

音はせず,ただそこに垂直に空へ向かって伸びている紫色の柱。

そしてその柱は俺の家のまん前に立っていて通行人はその柱をわざと避けて歩いていた。

まるで最初からその場所は無かったかのように。


「行くしかねぇよな」


俺は覚悟を決めその紫の柱に突っ込んだ。

耳鳴りのような音がして中へ。

そこでは信じられないような光景が広がっていた。


目の前には見慣れた少女がいた。

しかしそこにいる少女の漆黒の翼はぼろぼろで,黒のマントも破れ,鎌は地面に刺さっていた。

なんなんだよ。これ……。

そしてその少女をそこまでしたであろう相手は少女の前に立っていた。

俺と変わらないくらいの背丈で真っ赤な髪,赤いマント。

鋭い眼光のその男はルゥを見下すように見ていた。


「紺碧は所詮この程度か? こんな事じゃあのカップを聖人から守りきるなんて不可能だ」


何なんだよ?

俺は怒りのような感情が胸にこみ上げ,気づいたときにはそいつ目掛けて走っていた。


「ん? こいつか? 例のカップは。よくここに入って来れたものだ」


「うぉおおぉお!! 」


こいつは絶対許さない。

そんな感情が俺の中で溢れていた。


「止めてっ!! 」


俺の拳はそいつの顔の近くで止まった。


「その人は聖人じゃないの。私のボス,アレスト」


こいつが? ルゥのボス?

でもなんでこんな事に?


「それは……」


「全く,なんなんだ? このカップは前代未聞だな。我に殴りかかってくるとは」


そいつは俺の手を掴み振り払うと自分の前髪を払い


「こいつは早めに我らの容量として確保しておくべきだ」


……何?


「そんな事させません!! 私が守りきりますから……そんな事は……」


なんだ? どういう展開だ?


「このままこいつを放置しておいて聖人に狙われるくらいなら我ら死神側の容量として変換してしまえばこの戦争は勝ちも同然なのだぞ? それだというのに」


「私が聖人から守りきっても結果は同じです!! だから……ゆうくんを変換するなんて言わないでください」


俺にもようやく話はつかめた。

つまり俺がいなければ聖人側は神を作れないわけだから俺を死神側の容量として使ってしまおうという事なんだろう。

そうすれば聖人側は神を作り出せずに負ける。

そうすれば戦争は終わる。


「生きている人間を変換したら聖人とやっていることに変わりないじゃないですか! そんなの……」


ルゥはそういいながら泣いている。

どうしてそんなに俺のことを?

ルゥだって死神側の立場なのに……。


「殺してしまえばいいのだ。その為に我がわざわざおもむいたのだからな」


殺す?

俺,殺される?

確かに言い分的には正しい。

生きている人間を変換するのが駄目なら殺してしまえばいい。

それに俺一人で聖人と死神の戦争が鎮圧するというなら犠牲も少ない。

そういう判断だろう。



「そんな事は……私がさせない! 」


そういうとルゥはぼろぼろな体で地面に刺さっていた鎌を構え直しそいつに向けた。

鎌はところどころ燃えたような跡がついている。

どうしてそこまで……


「全く,理解できない奴だ。どこで教育を間違えたのか。そのような感情を抱くから弱くなるのだ」


そういうとそいつは右手を顔の前に出し目を閉じた。


「地獄の業火よ,我が力となり目の前の物全てを焼き払え! 」


その光景はあまりにも酷かった。

目の前で鎌を構えていたルゥを取り囲むように火柱が上がり,その火柱は一気にルゥを吹き飛ばした。

鎌は宙を舞い,ルゥは紫の空間の壁に叩きつけられ,堕ちた。

俺はすぐに走りよった。


「ルゥ!! 」


返事は無かった。

ただ彼女の手が俺の手を握り返し,離れた。


「殺してはいない。同志を殺しては罪に問われるのでな。変な奴だ。お前を殺し,容量を回収して戻れという指令を送った途端反抗しだした。よほどお前のことを殺したくなかったのだろう。そして我が代わりに来たところ,そいつはこの空間を作り出し我の事を待ち構えていた。ゆうくんは私が守ると言ってな」


そんな……自分のボスまで裏切って俺のことを。

なんでそこまで……?

どうして?


「余計な感情は迷いを生む。それではお別れだ」


俺はそいつに背を向けてルゥを守るような体制だった。

もう駄目だ。

そんな思いが俺の中にはあった。

しかし,そいつの攻撃は痛くなく,むしろ暖かい程度だった。


「……耐火の印……まさかお前につけられていようとはな」


俺はそいつの炎が当たった背中を見るとそこには赤い魔方陣のような物が浮かんでいた。


「どおりで一回も反撃してこなかったわけだ。自分の守護印を渡しておき,あらかじめ我の焔から守っておくとは。無茶をする」


背中……そこで俺は頭の中に学校での光景がフラッシュバックした。

ルゥが俺の背中を突いた時。あの時だ。

あの時,ルゥは俺に耐火の守護印を渡してくれていたんだ。

自分の分を,俺に。

こいつから俺を守るために。


「全く,いつでも無茶苦茶な奴だ。お前も信頼されているようだな。今回の件は一旦中止しよう。我は死神界へ戻る。ただし,聖人からカップを守りきれぬときは我は地獄の業火のアレストとしてお前を殺しに行くとそいつに伝えておいてくれ」


な……いいのか?

俺を殺して死神側に容量として捕らえられれば戦争は終わるんだぞ?

それなのに?


「そいつは死神界で我を除いて最強と語られる死神だ。幼少から大人より強く,速く,そして優しかった。そして紺碧とまで呼ばれるようになった彼女は我に今まで反抗などしなかった。……紺碧を頼むぞ」


そういうとそいつはマントを宙に投げると次の瞬間にはその場所にはいなかった。


「ん……」


その間にルゥが声を上げた。

俺はとにかくルゥの体を抱き上げながら名前を呼ぶことしか出来なかった。


「ルゥ……ルゥ!! 」


「ごめんね……? 怪我無い? 」


心配するのはこっちだ。

耐火の守護印だっけか?

それを俺に渡さないでおけばここまで怪我はしなかったのに。

そうしていると紫の空間は元の色に戻た。

とにかく俺の部屋まで運ぼう。

そう思いルゥを担いでみたが家には親がいる。

ばれないように行くか? 行けるか?

一応ルゥも人並みの重さはあったしダッシュは不可能だ。階段もあるし。

いっそ親に言ってしまうか?


「あ,私は大丈夫。1時間ぐらいで傷は治るの。だから庭の隅っこにでも置いておいて貰えれば治り次第ベランダまで飛んでいくから」


そう言うとルゥは俺の体から降り,ゆっくりと歩き始めた。

こういう時にあぁそうですかなんていって放っておくことも出来ないんだが。


「じゃあ俺も一緒にいるからさ」


それくらいしか出来ないだろうし。


「そそ,そんな大丈夫ですって! 私は人間より頑丈ですし,ほっ,ほらご家族の方に心配をおかけいたしましてはいけなく危うく大変でしょ? 」


最後のほう呂律ろれつが回ってなかったが,かといってこのまま一人で置いておく事も出来ないし。


「大丈夫です! あ〜じゃあベランダの鍵開けておいてください。案外すり抜けるのも大変なんで」


そう言うとルゥはのろのろと家の庭のほうへ歩いていった。

心配なんだけどな。


仕方ないので俺は家に入り親が庭に行かないよう監視していた。

夕食中もなんだか気が抜けない。


「どうしたの? ゆうくんなんか顔が硬直してるみたいだけど」


夕食を食べ終わって親の行動をしっかり監視している俺の表情はよっぽど硬かったのだろう。


「いや,別に。あっ,今日も夜食貰ってくから」


はいはいと親は言っていたが俺の頭の中はルゥの事でいっぱいだった。

傷が回復するって言ってもあの怪我は人間なら致命傷じゃないか?

それにあいつ,アレストとか言う奴は俺のことをカップとか呼んでたし。

考えれば考えるほど意味不明だ。

今更だけど俺が巻き込まれている事態は相当やばいんじゃないか?

聖人対死神の戦争に巻き込まれてるんだぞ。

はぁ,なんで俺が。

あ,そうだベランダの窓の鍵開けとかなきゃな。

思い出したかのように立ち上がり階段を上った先にある俺の部屋のドアを開ける。

さすがにまだいないか。

俺は窓の鍵を開け下を覗いた。

で,下から何かが俺のほうへ飛んできて掴まれた。


「あ,ゆうくん〜。お待たせ〜っ」


さっきまでぼろぼろで傷だらけだった少女はすっかり回復し翼を生やして俺の前を飛んでいた。

本当に回復するんだ。


部屋に入るとルゥはベッドの上に転がった。

あんな傷を負っても回復するなんて,死神ってのは凄いんだな。


「ん〜気持ちいい」


ごろごろと転がってはしゃいでいるルゥはまるで子供のようだ。

いやいやそれよりも。


「なんであそこまでして……」


彼女はいくら傷が治るといっても瀕死の状態まで追いやられ,自分のボスを敵に回してまで俺を守ってくれた。

自分の身を犠牲にしてまでも。


「だってゆうくんは私が守るって言ったじゃないですか」


そういうとルゥは小さな体で大きく伸びをして


「任せてくださいね」


本当に頼りになるな。

あ,そうそう夜食。

持ってきたおにぎりを食べているルゥを横目に俺は窓の外を見た。

さっきのがルゥのボス……か。


「おいしい〜〜ぃ! あ,さっきゆうくんの事をカップって言ってたのは私たち死神の人間の呼び名みたいな物です。深い意味は無いですよ」


そういえば俺カップとか言われてたな。

人間イコール,カップか。


「そういえばさ,ルゥの傷は治ったみたいだけど,マントとか鎌の傷も治るわけ? 」


俺が見たときはマントも鎌もぼろぼろだったし。


「治せますよ。えっと……原理は教えられないんですけど治せます。ほら」


そう言うとルゥはブレスレットから鎌を取り出した。部屋の天井に届いているその鎌は近くで見ると重々しく,こんな少女が持ち上げているのが嘘のようだ。

それに焼けたような後も消えていてまさに切れ味抜群,触ったら怪我するぜ,なんて思わせるような切っ先。


「私の愛用の武器です。ムーン・ソルバルケ。大きくて振りやすいんですよ」


ここでは振らないで,なんて言わなくても分かってるか。


「持ってみてもいい? 」


「はい! どうぞどうぞ」


その鎌は俺が手を触れると冷たく鉄のような感触だった。

それに,


「重っ!? え? ちょっと」


ルゥが手を離すと俺は両手でその鎌を支えるので精一杯だった。

ルゥはこれ振り回してたよな。

俺って貧弱だな。


「しょうがないですよ。この鎌は死神の手に馴染むように作られてますし,逆にゆうくんがこれを軽々持ち上げたほうが驚きです」


重い。

そう言って鎌をルゥに返すとそれをブレスレットの中にしまいこんだ。

便利なブレスレットだな。俺の汚い部屋のいらないものもそこにしまいこんでおけるのに。


「いらないものはちゃんと整理しましょうよ〜」


注意された。

まぁ,確かに。俺の部屋にあるものって結構無駄だな。

何があるかはご想像にお任せしよう。ありすぎていちいち説明するのも大変だ。


「ん,そういえばゆうくんにもあの空間の場所が見えるようになったんですね。私たちがいた」


そういえば。紫の柱は他の人には見えていないみたいだったし。

俺も進歩……したのか?


「たぶん私が耐火の印を渡したときにちょっと能力が移っちゃったとか,そんな感じだと思います。へぇ〜そんな事もあるんですかね? 」


聞かれても困る。そういえば耐火の印ってどんな物なんだ?


「目には見えません。というか,私にも原理は分からないんですけど何種類か種類があってゆうくんに渡したのは耐火の印。その名の通り炎を退ける効果があります。他に私が持っているのは耐風の印,耐水の印です。アレストが持っている耐電の印,耐聖の印,耐氷の印。これ以外は私は知りません。へへ」


色々あるんだな。

でもそんなのを俺に渡しておいて良いのかな?


「もちろんですよ〜。何なら私が持っている残り二つの印もゆうくんに渡しておきたいぐらいですよ」


でもそれじゃあルゥが無防備状態になっちゃうんじゃ。

俺の無事も大事かもしれないけどルゥがやられたら俺もやられるんじゃ。


「私はこのマントのおかげで基本能力が底上げされているのである程度の耐性はあるんですよ」


ほぉ。

便利グッズその2だな。

ブレスレットにマント,グッズではないけど翼。

凄いなぁ。


「ぜんぜん凄くはな……来ます」


へ?

ルゥの顔つきが急に険しくなり,俺の部屋が一瞬でどこかの森林のような場所に変わった。

森林といってもこの前のように木が俺とルゥを囲むようにそびえ立っていて,空は紫,木も紫。

もうこの空間を見るのも三度目,いやさっきも見たから四度目か。


「ゆうくんは私が守ります!! 」


上空に教室のときと同じように大きな穴が開いた。

ルゥは一気にマントを羽織り鎌を構え,翼を大きく羽ばたかせながら上空から来るであろう敵に備えていた。

するとまもなく何か動物の鳴き声のようなものが聞こえ,何かが近づいてくる音がした。

その視線の先にある黒い穴から出てきたのは俺が今まで見た聖人のような姿ではなく熊のように,いやそれより大きな怪物だった。


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