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紺碧の死神  作者: 零光
13/14

13:格の違い


鎌を握る手が汗ばむ。

アレストが辺りを火の海にしたこともあるが,異様に汗がでてくる。

いくら俺が鎌を握っているとはいえ,戦闘経験ゼロ,運動音痴な俺に何ができるのか。

適当に振り回す……しかないな。

目の前には聖人界ナンバー2になった少女,そしてその奥ではリクがアレストと戦っている。

いくら戦争でもこんな光景はもう二度と見れないだろう。

てか見たくねぇ。


「あなたもやる気? 悪いけど遊んであげる余裕は無いんだよ。じゃ」



そこまで言うとナユはもう俺の目の前。

こいつら移動速度の限界無いんじゃないのか?


「くっ,くるなぁ!!! 」


もうこうなりゃやけくそだ。

適当に鎌を振る。

これしかないだろ,この状況。


「はっ……」


そんな声が聞こえたのは俺が鎌を振り落とした直後だった。

俺が振り落とした鎌から何か出た。

よく分からないけど青白い光が飛んでいき,通過した後には跡形も無く前方の景色が無くなっていた。

ルゥは上空に飛んでいて驚いた表情,ナユはどうにかかわしたようで地面に座り込んでいた。

はて,俺どうした?

ルゥがこの鎌を使ってたときはあんなの出無かったよな。


「ここまで早いなんて……」


俺の横に舞い降りたルゥは今まで見たどの表情よりも驚きが現れていた。

早いって何が?


「ゆうくんのデータ転送量。そのブートストーンはその人の容量を力とかに変換して使うことが出来る物なんだけど,それを変換するのには時間が必要でより変換が早いほど大きな力が出せるの。これは個人差があるんだけどゆうくんはこの速度も優秀だったって事。凄すぎるよ」


なんか褒められすぎな気がしたが,これなら少しは戦えるんじゃないか?

自分で自分が怖くなってきたね。うん。


「ゆうくんは早く恵美さんの所へ。きっと,この建物の最上階だよ。さっきからこの二人が守ろうとしているのはそこだから」


そういえば確かに二人とも,特にリクは派手に攻められているように見えるがそれを上手くかわしつつそこへは近づけないようにして戦っていた。


「でもナンバー1はそこにいるんじゃ? 」


天光とアレストが呼んでいた奴はまだ出てきていないし,リクは神の場所にいると言っていた。

神の場所は恵美がいる場所だろうし,俺が行っても逆に容量として捕らえられるだけでどうしようもないんじゃ?


「そこに着く前に追いつきますよ。あっちはナンバー2と3。こっちはトップ2ですから。任せてください! 」


何時間か前に見たけどすごい久しぶりに見た気がするルゥの笑顔。

ま,負けないよな。

問題はどうやって俺がそこに行くかだな。

この二人はそこへ行かせないためにこうやっているわけだろうし,最初から本気で戦う気はないのだろう。


「くそぉ! 」


と,ナユが俺のほうへ繰り出してきた拳は俺の目の前で止まった。

小さな少女の腕を握っているルゥは先ほどの笑顔を忘れてしまったかのような冷酷な顔で


「もう十分遊んだよね。錠」


その言葉がルゥの口から出た瞬間ルゥの鎌がルゥの手を離れ空中へ舞い上がり,大量の紺色の雨がナユの周りにだけ降り注いだ。

その雨の一つ一つは全て矢のようにナユの体に襲い掛かる。

逃げようにもルゥに掴まれている腕が離れない。

雨はルゥだけを避けるように降っていて,徐々にナユの体が薄く,半透明になっていった。


「私の負けか。やっぱ噂どおり強いや。紺碧のルゥ……」


そう言うとナユはゆっくりと消えていってしまった。

ルゥの手から細い腕が完全に消えたとき,その雨も降り止んだ。


そんな様子を見ていると横で大きな火柱が上がった。

その火柱のすぐ横に立ているのはアレスト。

中には人影が見える。


「我を見くびりすぎではないのか? 緑陰よ」


火柱が一瞬で消えると中には既に服は燃え,ぼろぼろになったリクの姿。

体中から見覚えのある文字列が浮かんでいる。

あれは確か……。


「耐火の印か。リクも考えたけど,アレストの業火を完全に防ぐには足りないよ」


俺の背中にも耐火の印がある。

ルゥが俺に渡してくれたものだ。

ルゥは俺のそばまで歩いてくると座り込んでしまった。


「今のちょっと疲れちゃうんだ……ははっ。ごめんなさい」


いやいや,謝らなくても。

聖人界と死神界のナンバー2対決は死神界の圧勝か。

それでアレストは死神界ナンバー1,リクは聖人界ナンバー3。

実力の差もあるだろう。


「耐火の印で我の攻撃を防ごうとするのは良い案だが,それはあくまで自身の体を炎のみから守るもの」


そう言うとアレストの大剣が一瞬で黄色くなった。

バチバチと剣が電気を帯びている。

アレストの属性は炎なんじゃ?


「あの剣はノンアロンマイドって言う特殊な剣で好きな属性にいつでも変えることが出来るの。今は……雷だね」


ルゥはゆっくりと深呼吸をして俺の手を掴んだ。

そのまま俺を抱きかかえる。

再びお姫様抱っこ状態な俺。

結構恥ずかしい。


「アレストは大丈夫。先に行きましょう」


しっかり掴まっててくださいね。

そう言うとルゥは大きく翼を羽ばたかせ宙へ浮いた。

俺たちが進む方向から地面へ雷が落ちていく。

これもアレストの攻撃なんだろうか。

空気を振動させビリビリと音が響いている。

空はいつの間にか真っ暗。

俺はただルゥにしがみ付いているしかなかった。


と,上昇するのが終わり俺たちはその建物の一室に侵入した。

最上階の窓を割って中に。

その部屋は真っ黒な壁に青い照明。

明らかに妖しい。

そして俺たちの正面にそれはいた。

四角い透明の巨大な箱が宙に浮いていて,中には熊のような大きな獣。

眠っているように動かないその熊もどきはなにか特別なオーラを放っていて,嫌な予感がした。

こいつが神……なのか?

そしてもうひとつ,その箱の隅っこに見慣れた制服の少女が一人。

見つけた。

そこにいたのは紛れも無くクラスメートの恵美だった。

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