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第26話:密林の『ハウジング』は命がけ

ドーナツ一つで騎士のプライドを売り渡した(?)イヴさんと共に、俺たちは密林の夜を進みます。

しかし、正式服のプレイヤーにとって、野宿なんてあり得ません。

「家がないなら、植えればいいじゃない」

リ・センセン、禁断の植物建築に手を出します。リスナーの皆さん、資材(投げ銭)の準備はいいですか?

※今回も描写の密度を限界まで強化した、2800字超のフルボリュームでお届けします!

「……なあ、リ・センセン。先ほどから何をブツブツと呟いているんだ? 貴様のその、空中に指を走らせる奇行には慣れたつもりだが、流石に不気味だぞ」


イヴが、まだドーナツの粉が口角についたままの顔で、不審そうに俺を覗き込んできた。

 リ・センセンは、彼女の問いかけにすぐには答えなかった。彼の瞳は、現実の鬱蒼とした密林を通り越し、システムが網膜に投影している『3D建築グリッド』に釘付けになっていたからだ。


「奇行じゃねえよ。……『シミュレーション』だ。イヴさん、12.0……じゃなかった、俺の故郷の常識ではな、ダンジョン攻略の基本は『拠点の確保』なんだよ。セーフゾーンがない冒険なんて、ただの自殺志願だ」


リ・センセンは、視界に広がるグリッド線を見つめながら答えた。

 『静寂の密林』。ここは一歩先も見えないほどの巨大なシダ植物と、魔力を吸って肥大化した食人植物の巣窟だ。普通に考えれば、どこで寝ても魔物の餌食になる。

 だが、廃人ゲーマーであるリ・センセンの目には、この密林の全てが『建築資材アセット』に見えていた。


【1.8mのメッシ:おいおい、リ・センセンの目が『クラフトゲー』の廃人モードになってるぞww】

【隣の王さん:まさか、この密林で『マインクラフト』始める気か? 正式服のハウジング機能、こっちで再現すんの? 運営、こいつBANしたほうがいいぞw】

【物理の張先生:……興味深い。周囲の植物の魔力伝導率を計算して、構造計算を行っているのか。リ・センセン、お前の脳内リソースはどうなっているんだ?】


「家人们(リスナーの皆さん)、見ててくれ。資材はそこら中に転がってる。……システム、換金レートがゴミなら、特定の植物の『成長制限』を一時的に全解除しろ。周囲の『鉄樹アイアン・ウッド』を強制転用する」


リ・センセンが右手の紋章を地面に叩きつけると、周囲の空気が一変した。

 ドォォォォン……! という、腹の底に響くような重低音が密林に鳴り響く。


「な、なんだ!? 地震か!? それとも強力な魔物の急襲か!」


イヴが咄嗟に身を構えるが、起きたのは破壊ではない。**『爆発的な創造』**だ。

 周囲に生えていた、鋼鉄のような硬さを誇る『鉄樹』たちが、リ・センセンの魔力を吸い込んで、意志を持っているかのように蠢き始めた。枝と枝が意思を持って編み上げられ、根が複雑に絡み合い、わずか数分のうちに、巨大な幹の地上十メートルほどの位置に、強固なプラットフォームが形成されていく。


それは、3.0時代の魔法体系では絶対に説明のつかない現象だった。

 契約も、呪文も、魔法陣もいらない。ただ『完成図(Blueprint)』を脳内からシステムへアップロードするだけ。


「……信じられん。植物を……まるで粘土細工のように作り替えるというのか。リ・センセン、貴様、本当に人間なのか?」


「ただのゲーマーですよ。……ほら、ぼーっとしてないで、上りますよ。ここが今夜の宿だ」


リ・センセンは自ら生み出した蔦のラダー(梯子)を指差した。

 ツリーハウスの内部は、外見の無骨さとは裏腹に、12.0の『ギルドハウス』のロジックが組み込まれていた。

 壁には発光キノコを埋め込み、一定の輝度を保つ『オート調光機能』。

 床には柔軟性の高い水苔を敷き詰め、どんな高級ベッドよりも快適な『休息レストバフ効果』。

 そして入り口には、魔物の接近を察知して警報を鳴らす『環境スキャン・センサー』。


「ふむ、……驚いたな。中は非常に快適だ。それに、この床の柔らかさは一体……。王都の高級宿屋でも、これほどの寝心地は提供できまい」


イヴが恐る恐る水苔の上に座り、その弾力に目を丸くしている。

 騎士として戦場を渡り歩いてきた彼女にとって、「安眠できる場所」というのは何物にも代えがたい贅沢なのだろう。リ・センセンはそんな彼女の横顔を、カメラの画角を調整しながらチラリと見た。


「……さて、家人们。拠点はできた。だが、配信者として一番大事なものを忘れてちゃいけねえよな?」


リ・センセンはドローンカメラをツリーハウスの隅に向けた。

 そこには、彼が投げ銭ポイントを削って実体化させた、一つの小さな『箱』があった。


【1.8mのメッシ:まさか……あれ、冷蔵庫か!? いや、電子レンジか?】

【物理の張先生:いや、魔力波形から察するに……通信ブースター、兼、高周波調理器か? リ・センセン、お前、この世界をどこまで改造するつもりだ】


「正解は……『万能換金・調理ポッド』だ! これがあれば、魔物の肉を突っ込むだけで、正式服レベルの飯(バフ食)が作れる。……イヴさん、さっきのロードの肉、少し切り取って持ってきたろ?」


「ああ、……これか? 食べるには硬すぎて、煮込むのに三日はかかりそうだが……」


イヴが差し出した、巨大なイノシシのロース肉。

 リ・センセンはそれをポッドの中に放り込み、システムの『レシピ・マクロ』を起動した。


【システム:調理開始。レシピ『12.0仕様:スパイスたっぷりスタミナステーキ』。予測完了時間:3分】


ポッドから、異世界のものとは思えないほど食欲をそそる、スパイスと肉汁が焦げる香りが漂い始める。

 イヴの鼻が、ピクピクと可愛らしく動いたのを、ドローンカメラは見逃さなかった。


「……リ・センセン。貴様は、私を堕落させる天才だな。こんな……こんな香りを、この密林で嗅ぐことになるとは……。王都の食事が、急に味気ないものに思えてきたぞ」


「ははは。俺の配信を支えてくれる『家人们』へのサービスですよ。さあ、焼き上がるまで……今日の『王都大脱出』のスーパープレイ集でも見返して、明日の作戦を立てようか」


リ・センセンは空中に巨大なホログラム・スクリーンを投影した。

 映し出されるのは、ルルちゃん(領主)の恥ずかしい映像と、それを見て爆笑する民衆の姿。


夜の密林。

 最凶の魔境の中に作られた、あまりにも不釣り合いで、あまりにも快適な『ゲーミング・ツリーハウス』。

 リ・センセンとイヴの冒険は、ここから本当の意味で『加速』していく。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


第26話、完!

リ・センセンのハウジング能力、もはや異世界の建築家たちが失業するレベルですね。

「家がないなら植えればいい」という、正式服プレイヤーならではのパワー解決。

そして、イヴさんの胃袋はもう完全にリ・センセンの「正式服グルメ」に掴まれてしまったようです(笑)。


【作者からのお願い】

「ツリーハウス住んでみたい!」「ステーキ美味そうw」と思った方は、ぜひ**ブックマーク(BM)と、下の評価ボタン(★★★★★)**をポチッとお願いします!

皆さんのポイントが多ければ多いほど、拠点の防衛設備がさらに豪華になります!

現在、4月18日の50話到達に向けて、文字通り不眠不休の「疯狗模式(狂犬モード)」で更新中!

ぜひ、続きを期待していてください!


それでは、第27話でお会いしましょう!

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