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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第一章 聖女(男)になりました。

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――聖女は、管理される存在である

異変は、前触れもなく訪れた。


朝の冷たい空気の中、野営を片付けていたときだ。

アリシアが、わずかに視線を上げた。


「……来る」


その言葉と同時に、空気が歪んだ。


白い外套を翻し、三人の人物が道の先に姿を現す。

音もなく、だが圧倒的な存在感を放って。


「――王国教会、聖務庁より通達」


中央に立つ女性が名乗りもせず告げた。


白銀の髪。

感情を削ぎ落としたような瞳。


「聖女スキル顕現者、テイル・カトレア。

あなたの行動およびスキル行使傾向について、

看過できない兆候が確認されました」


……行使傾向?


「兆候、とは?」


アリシアが一歩前に出る。


「戦闘記録および魔力残滓の解析結果です」


女性は淡々と続けた。


「通常の聖女スキルと比べ、

あなたの祝福は異常な安定性と過剰な感応性を示しています」


セレナが、小さく息を吐く。


「……感応性、ね」


「本来、聖女の祝福は距離と精神的隔たりを前提に成立します」


女性は、はっきりと言い切った。


「にもかかわらず、あなたの祝福は

対象の状態に深く干渉しすぎている」


――鋭い。


「それは問題ではありません」


アリシアが即座に反論する。


「彼の祝福は、実戦で極めて有効だ」


「“有効”であれば許される、という話ではありません」


女性は視線をこちらに向けた。


「私は教会執行官――

《聖律官》リディア・エルノア」


その名に、セレナの表情がわずかに強張る。


「……来たわね」


「知っているのか?」


「ええ。

聖女を“聖具”として扱うことで有名な人」


リディアは、その言葉を否定しなかった。


「聖女とは、世界の均衡を保つ存在です。

個人的な関係性や感情に影響されるべきではない」


「……」


「あなたの祝福には、

感情の揺らぎが直接反映されている痕跡がある」


胸が、少しだけ締めつけられた。


「それは……」


言いかけて、言葉を飲み込む。


「理由は問いません」


リディアは続ける。


「男であること。

未熟であること。

あるいは、聖女スキルそのものの変質」


一拍置いて。


「問題なのは――

その力が“制御されていない”という事実です」


「制御は、できている」


アリシアが言う。


「少なくとも、被害は出ていない」


「今は、でしょう」


リディアの声は冷たい。


「よって、教会は判断しました」


彼女は宣言する。


「テイル・カトレアを、

教会監督下に置く必要があると」


「……隔離、ですか」


僕がそう言うと、彼女は否定も肯定もしなかった。


「保護、と言い換えても構いません」


「ふざけないで」


セレナが、珍しく声を荒げた。


「本人の意思は?」


「聖女に、完全な自由は不要です」


空気が、凍る。


「……それは」


僕は、ゆっくりと息を吸った。


「“聖女”を、人として見ていない言い方だ」


一瞬だけ、リディアの瞳が揺れた。


「……だからこそ」


彼女は言う。


「あなたは危険なのです。

自我を持ったまま、

世界に干渉しすぎる聖女は」


沈黙。


「条件があります」


僕は、顔を上げた。


「教会の指導は受けます。

でも――」


アリシアと、セレナを見る。


「仲間との連携を、切り捨てない」


「……」


「それが“不適切”だというなら、

聖女という概念そのものが、もう限界なんだ」


長い沈黙のあと。


「……条件付きで、認めましょう」


リディアが、わずかに頷いた。


「ただし、

あなたが制御を失えば――」


「そのときは、斬る」


アリシアが迷いなく言った。


セレナも、肩をすくめる。


「同意見ね」


教会、騎士団、剣姫、そして男の聖女。


立場は違えど、

もう後戻りはできない。


この選択が、

“聖女とは何か”という問いを、

世界に突きつけることになるのだから。

お読みいただきありがとうございます。

読んで面白いと思った方は是非評価のほどよろしくお願いします。

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