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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

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――帝国を出るという選択

帝国の街は、相変わらず賑やかだった。

市場では呼び声が飛び、酒場からは笑い声が漏れてくる。


でも――

その中を歩く僕たちに向けられる視線は、少しずつ変わってきていた。


「……気づいてる?」

セレナが、僕の隣で小声で言う。


「うん」


視線が、増えている。

好奇でも、純粋な警戒でもない。


**“観察”**だ。



変わり始めた空気


冒険者ギルドでも、同じだった。


受付の職員は丁寧だ。

態度も、言葉遣いも変わらない。


けれど、奥の方で管理部の職員が何かをメモしているのが見えた。


「正式評価は、まだ保留です」

「少し……時間をください」


その“時間”が、意味するものを、僕たちはもう理解していた。


「評価じゃないわね」

リディアが、宿に戻ってから言った。

「分類よ」


使えるか。

管理できるか。

危険か。


「帝国は合理的」

「だから、曖昧なものを嫌う」


そして僕は、あまりにも曖昧だった。



管理部からの“提案”


数日後、帝国管理部から非公式の呼び出しがあった。


「監視下での活動継続」

「行動範囲の制限」

「祝福使用時の事前報告」


丁寧な言葉で包まれた、拘束。


「保護です」

そう言った研究官の目は、誠実だった。

だからこそ、余計に分かる。


これは善意だ。

だが、自由ではない。


「……拒否したら?」

剣火が聞く。


「強制ではありません」

「ですが――」


その“ですが”の続きを、誰も口にしなかった。



街で起きた、些細な事件


その帰り道。

路地裏で、小さな衝突が起きた。


亜人の行商と、人族の衛兵。


「許可証を見せろ」

「ここは帝国領だ」


行商は怯えながら、書類を差し出していた。


「……問題ないだろ」

僕が口を挟むと、衛兵がちらりと僕を見る。


一瞬。

そして、視線を逸らした。


「……失礼しました」


それだけだ。

何も起きなかった。


でも――


「今の、見た?」

アリシアが震えた声で言う。


「“僕たちがいるから”引いた」


守られたんじゃない。

警戒されたんだ。



居場所が、薄れていく


夜。

宿の部屋で、誰もすぐには口を開かなかった。


「……帝国はさ」

剣火が、ぽつりと言う。

「悪くないと思うんだ」


「うん」

僕も頷く。


「でも」

リディアが続ける。

「“共に生きる場所”じゃない」


帝国は守ってくれる。

けれど、それは檻の中だ。


「このままいたら」

セレナが静かに言う。

「いずれ、選択を奪われる」


聖女スキルの運用。

剣姫の配置。

行動の可否。


全部、“合理性”で決められる。



次の行き先


「……亜人の国」


僕がそう言うと、全員が顔を上げた。


「人族圏の外」

「帝国の直接統治外」

「教会の影響も、比較的薄い」


「でも、簡単じゃないわよ」

アリシアが言う。

「聖女への感情、複雑だし」


「だからこそ、だよ」

セレナが答える。


「亜人たちは、祝福を“力”じゃなく」

「“災厄”としても知ってる」


奪われた歴史。

利用された記憶。

それでも生きてきた種族。


「僕たちが行く意味がある」


部屋に、静かな覚悟が満ちていく。



出立の前夜


窓の外、帝国の灯りは美しかった。

秩序があり、強く、冷たい光。


「……短い滞在だったね」

剣火が笑う。


「でも、無駄じゃなかった」

リディアが言う。

「自分たちが、何を望んでいるか分かった」


僕は剣を手に取る。

鞘に納めたまま、それを確かめるように。


「ここは、通過点だった」


守られる場所じゃない。

選ぶ場所でもない。


「行こう」

「次は――」


「“祝福に怯えない国”へ」


誰も異論はなかった。


こうして僕たち《希望の光》は、

帝国を去る決断をした。


それは逃避じゃない。

次の答えを探す旅だった。


そして――

亜人の国で、

世界はまた、別の顔を見せることになる。


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