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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

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――閑話休題、聖女スキルは、祈りから生まれる

夜更け。

帝国の宿の一室で、灯りを落としたまま、僕は掌を見つめていた。


淡く、白い光。

意思を向けると、じわりと熱を帯びる。


「……やっぱり、まだ不安定ね」


リディアの声は静かだった。

責めるでも、評価するでもない。


「うん」

僕は正直に頷く。

「出そうと思えば出る。でも……“どう使うか”が、まだ曖昧だ」


その言葉に、セレナが小さく息を吸った。


「それが、普通なの」



■ 聖女スキルの正体


「聖女スキルって、よく“神の力”って言われるけど」

セレナは椅子に腰掛け、ゆっくり話し始めた。

「実際は、もっと人間的なものよ」


祝福は、空から降ってくる奇跡じゃない。

心の奥――

“強く揺れた感情”に呼応して、形を取る力。


「守りたい」

「救いたい」

「失いたくない」


そういう想いが、世界に干渉する。


「だから聖女スキルは、全部“同じ形”にはならない」


剣火が腕を組む。


「回復、結界、浄化、強化……」

「教会では分類されてるけど、実際はもっと曖昧だよね」


「そう」

リディアが続ける。

「本来は、用途じゃなく“性質”で決まる」



■ 教会式スキル分類の問題


教会は聖女スキルを、こう分ける。

•回復系

•浄化系

•補助系

•対魔特化


分かりやすい。

軍事運用に向いている。


「でも――」

セレナは少しだけ声を落とした。

「それ、後付けなの」


本来、祝福は“状況依存”で姿を変える。

回復にもなれば、防御にもなる。


「教会は、それを嫌った」

リディアが言う。

「変化する力は、制御できないから」


だから型を決め、祈りを固定し、感情を排除した。


「結果――」

「強いけど、壊れやすい聖女が量産された」


部屋に、静かな沈黙が落ちる。



■ テイルのスキルが「異常」な理由


「じゃあ、テイルは何が違うの?」

アリシアが尋ねた。


セレナは僕を見る。


「テイルの祝福は、“対象選択型”」


「……対象?」

僕は首をかしげる。


「誰を守りたいか」

「何を守りたいか」

「どこまで守りたいか」


それが、出力と性質を決める。


「剣を強化することもできる」

「結界を張ることもできる」

「回復も、浄化も――条件次第」


剣火が目を丸くした。


「それ、万能じゃん」


「違う」

リディアが首を振る。

「“制御が難しすぎる”」


感情が揺れれば、出力も揺れる。

迷えば、力も迷う。


「兵器としては最悪」

「でも――」


リディアは、はっきり言った。


「人を守る力としては、理想形よ」



■ 副作用の正体


「副作用は、力が強すぎるからじゃない」


セレナの声は、少し痛みを帯びていた。


「“心が追いついていない”だけ」


祝福は前に出ようとする。

だが、使う側が覚悟できていないと、反動が来る。


「吐き気、視界不良、感覚遮断」

「全部、拒否反応」


「……じゃあ」

僕はゆっくり言った。

「克服するには?」


セレナは即答しなかった。


代わりに、剣火が言う。


「決めるしかないんじゃない?」

「何のために使うか」


リディアが頷く。


「“誰かを守る”じゃ足りない」

「“誰を、どこまで守るか”を」


それは、力の問題じゃない。

生き方の問題だ。



■ 聖女スキルは、選択の力


「聖女スキルはね」

セレナが、最後に言った。


「世界を書き換える力じゃない」

「“選び続ける力”よ」


何を救い、

何を救わないか。


その積み重ねが、祝福の形を決める。


僕は、ゆっくり拳を握った。

光が、静かに宿る。


「……なら」

「僕は、選ぶ」


誰かに決められるんじゃない。

教会でも、帝国でも、魔王でもない。


「《希望の光》として」


部屋の中で、仲間たちが静かに頷いた。


これは、力の話じゃない。

これは――

意思の話だ。


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