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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

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――閑話休題、世界は、なぜこんなにも歪んだのか

帝国の宿の奥、簡素な個室。

灯りは一つ、窓の外では夜警の鐘が低く鳴っていた。


リディアが机の上に、いくつかの資料を並べる。


「……これも、今のうちに整理しておきましょう」


紙に書かれているのは、地図、系譜、そして“聖女顕現例”の記録。


「私たちが戦っている相手は、単純な敵じゃない」

「“仕組み”そのものよ」


僕は椅子に腰を下ろし、黙って耳を傾けた。



■ 聖女という存在


「まず、聖女について」


セレナが口を開く。


「聖女は、生まれつき決まる存在じゃない」

「“祝福”が顕現した時点で、そう呼ばれる」


祝福は神の奇跡。

だが、奇跡は常に“代償”を伴う。


「本来、祝福は感情と結びつくもの」

「祈り、願い、恐れ、守りたいという想い……」


セレナは僕を見る。


「テイルの祝福が不安定なのは、間違いじゃない」

「むしろ、正しい」


教会が恐れるのはそこだった。

感情に左右される力は、管理できない。


「だから教会は、感情を削ぐ」

リディアが静かに続ける。

「祈りを型に押し込み、個を殺す」


祝福は強くなる。

だが、人は壊れる。



■ 副作用と“兵器化”


「副作用の正体も、そこにある」


僕は自分の手を見る。

光を宿すその感覚は、今も完全には制御できない。


「祝福を“道具”として使おうとすると、拒絶反応が起きる」

「心と力が、噛み合わなくなる」


帝国の研究資料にも、同じ記述があった。


――出力を上げるほど、精神摩耗が進行。

――感情遮断時、暴走率上昇。


「帝国は、それを知っている」

リディアが言う。

「だから、すぐに兵器として使わない」


「“使えるかどうか”を、まず見るんだよね」

アリシアが少し嫌そうに言った。


「そう」

「帝国は合理的」

「残酷だけど、嘘はつかない」



■ 剣姫という存在


「次は、剣姫」


剣火が鼻で笑う。


「便利な存在だよね」

「聖女を守るための“剣”」


剣姫は祝福を持たない。

だが、聖女の力を最も効率よく引き出す存在。


「心的同調」

セレナが補足する。

「信頼、感情、呼吸――全部が噛み合うと、祝福は安定する」


だから教会は、剣姫を“駒”として扱う。


「命令に従う剣」

「感情を挟まない盾」


リディアは一度、目を伏せた。


「……それで、何人も壊れた」



■ 王国・教会・帝国の違い


「王国は、教会の力を借りて成り立っている」

リディアが地図を指す。


「だから逆らえない」

「勇者も聖女も、国威発揚の象徴」


「帝国は違う」

アリシアが言う。

「力は資源。使えなければ切り捨てる」


冷たいが、嘘はない。


「そして――」

僕が続ける。

「魔王軍」


部屋の空気が、少し重くなる。



■ 魔王軍と、聖女への憎悪


「魔王軍は、聖女を“救済者”だとは思っていない」


セレナの声は低かった。


「過去の聖女たちは、多くの魔族を滅ぼした」

「命令に従い、感情を失ったまま」


その結果、何が起きたか。


「家族を失った者」

「故郷を焼かれた者」

「存在そのものを否定された者」


だから――


「魔王が捕獲を命じなければ」

リディアが言う。

「多くの魔王軍は、聖女を見た瞬間、斬る」


それが“普通”だった。


「……僕は、例外なんだね」

僕が言うと、誰も否定しなかった。



■ それでも進む理由


沈黙の中、剣火が言った。


「正直さ」

「こんな世界、嫌になるよね」


「うん」

僕は頷いた。


「でも――」

セレナが顔を上げる。

「だからこそ、変える意味がある」


聖女は道具じゃない。

剣姫は駒じゃない。

祝福は、命令のためにある力じゃない。


「《希望の光》は、実験体でも兵器でもない」

リディアが静かに締めくくる。


「これは――」

「世界が間違え続けた答えを、選び直す物語よ」


夜は、まだ深い。

だが、朝は確実に近づいている。


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