表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/45

――《希望の光》という歪なパーティについて

帝国の夜は静かだった。

宿の窓から見える街路は、昼の喧騒が嘘のように落ち着き、遠くで巡回兵の足音だけが規則正しく響いている。


その静けさの中で、僕たちは久しぶりに“戦いのない時間”を過ごしていた。


「……こうして落ち着いて座るの、久しぶりじゃない?」

アリシアが椅子にもたれ、肩の力を抜いて言う。


「確かに」

剣火が腕を組んだまま、少し笑う。

「最近は街に出れば警戒、外に出れば任務。頭を整理する時間がなかった」


リディアはテーブルの上に広げた紙束を軽く整えながら、僕を見た。


「だから、ちょうどいいわ」

「一度、私たち自身の立ち位置を確認しましょう」


セレナが小さく頷く。


「……ここは帝国。王国でも教会でもない」

「だからこそ、“私たちが何者なのか”を、はっきりさせておく必要がある」


僕はその言葉に、ゆっくり息を吐いた。



■ テイル ――「僕」と名乗る男の聖女


「まずは、テイルからね」


リディアが視線を向ける。

その目は研究者のものではなく、仲間としての確認だった。


「男の聖女。祝福は強力だけど、副作用がある」

「感情に強く反応し、“守りたい”という意思が出力に直結する」


「……兵器向きじゃないわね」

剣火が率直に言う。


「うん」

僕は苦笑した。

「たぶん、教会が一番嫌うタイプだと思う」


力を振るう理由が、命令でも義務でもなく――感情だから。


「でもね」

セレナが静かに言う。

「だからこそ、壊れにくい」


彼女は僕を見る。


「“使われる聖女”じゃない」

「“選ぶ聖女”になれる可能性がある」


僕はその言葉を、胸の奥で噛みしめた。



■ リディア ――剣姫にして、決断者


「次は私ね」


リディアは自分の剣を一度だけ見下ろしてから、口を開く。


「王国騎士団所属だった剣姫」

「教会と距離を取り、最終的には離反した」


「完全に裏切った、の間違いでしょ」

剣火が軽く笑う。


「そうとも言うわね」

リディアは否定しなかった。


彼女は常に冷静で、判断が早い。

だがそれは、感情を捨てたからではない。


「私は、教会のやり方が許せなかっただけ」

「“正しい力”を、人を壊すために使うことが」


だから彼女は剣を取った。

守るために、選ぶために。



■ 剣火 ――剣姫であり、炎のような存在


「じゃあ次、私?」


剣火は椅子の背に腕を回し、楽しそうに言う。


「元・王国騎士団剣姫」

「実戦派。考えるより先に体が動くタイプ」


「自覚はあるんだ」

アリシアが呆れたように言う。


「もちろん!」

剣火は笑う。

「でもね、私が動くのは“仲間がいるから”だよ」


彼女は僕を見る。


「テイルが倒れないように」

「リディアが判断に集中できるように」


一見、無鉄砲。

だが実際は、パーティの“前線を引き受ける覚悟”を一身に背負っている。



■ セレナ ――聖女を知る者


「……私は?」


セレナは少しだけ言いづらそうに尋ねた。


「情報役」

リディアが即答する。


「聖女の在り方を知っている」

「帝国と王国、教会の“違い”を肌で感じてきた」


セレナは元々、聖女に近い位置にいた。

だからこそ、分かる。


聖女が壊れる瞬間を。

祝福が呪いに変わる瞬間を。


「私は……」

彼女は少しだけ目を伏せる。

「同じ失敗を、繰り返してほしくないだけ」


その言葉は、とても重かった。



■ アリシア ――繋ぎ止める存在


最後に、アリシアが肩をすくめる。


「私は?」

「戦闘力はそこそこ、頭脳派ってほどでもないけど」


「調整役ね」

僕が言った。


「空気を読んで、場を和らげて」

「誰かが無理しそうな時、ちゃんと止める」


アリシアは一瞬驚いた顔をしてから、照れたように笑う。


「……そう見えてたなら、嬉しいな」


彼女がいるから、このパーティは崩れない。

感情と理性の間で、常にバランスを取っている。



■ 《希望の光》という未完成


「つまりさ」


剣火が言う。


「このパーティ、めちゃくちゃ歪んでるよね」


誰も否定しなかった。


聖女は男。

剣姫は教会離反者。

魔王軍からは狙われ、王国と教会からも危険視されている。


「でも――」

僕は皆を見る。

「だからこそ、選べる」


誰に従うか。

誰を守るか。

どう生きるか。


「私たちは、装置じゃない」

リディアが静かに言った。


「《希望の光》は――」

セレナが続ける。

「意思を持つ存在」


夜の帝国都市は静かだ。

だがその静寂の下で、確実に世界は軋んでいる。


そして僕たちは、その中心に立とうとしている。


――これは、嵐の前の、ほんの短い休息。


次に動き出す時、

もう“無関係”ではいられない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ