――進むべき道
帝国内、首都の中心にある広場。石畳を踏みしめながら、僕たちは慎重に歩いた。周囲の建物は重厚で、外見からして軍事・行政の中心であることを示している。街の人々の視線は僕たちに注がれていたが、恐怖というよりは、好奇や警戒の色が強い。
「……この街、思ったよりも緊張感があるわね」
セレナが低くつぶやく。彼女の声には、ただの感想以上の警戒心が含まれていた。
「帝国の中心地だけあって、王国や教会の圧力が直接届く場所だからね」
僕は剣を軽く握り、周囲の警備を確認する。街の中央にある帝国管理部の建物に近づくにつれ、道行く兵士たちの視線が鋭くなった。
建物の扉をくぐると、整然とした広間に通される。背後には軍服を着た役人や研究者、そして帝国ギルドの代表らしい人物たちが座していた。
「……ここに来た目的は理解しているな?」
中央に座する男が低く問いかける。彼は帝国管理部の重鎮、ハインリヒと呼ばれる人物だった。
「はい」
僕は言葉を選びながら答えた。「僕たち《希望の光》は、この帝国で訓練を続け、力をコントロールしたいと思っています」
ハインリヒはゆっくりと頷く。
「……王国および教会から、君に対する排除命令が届いている。彼らは、男の聖女という存在自体を危険視しているのだ」
リディアが小さく声を上げる。
「それって、私たちも帝国内にいるだけで狙われるってこと?」
「その可能性は高い」
ハインリヒは静かに答え、手元の資料をめくった。「だが、我々帝国としては、君の力は評価に値する。危険を承知で活かす道を模索すべきだと考える」
剣火が腕を組む。
「つまり、保護と管理、どちらに重点を置くかが問題ってことね」
「そうだ」
ハインリヒは資料を差し出す。「君たちが安全に訓練を続けるための条件を示す。だが、これには帝国内での政治的圧力を理解し、対応する覚悟が必要だ」
アリシアが資料に目を落としながら呟く。
「……やっぱり、帝国でも完全に自由ではないのね」
セレナは視線を前に向けたまま言った。
「危険を承知で力を伸ばすしかない、ってこと……ね」
僕は深く息をつき、剣を軽く握る。
「分かった。僕たちはここで力をコントロールし、帝国内で正しい立ち回りを学ぶ」
ハインリヒはゆっくりと立ち上がり、僕たちに近づいた。
「君たちが力を制御し、街や帝国に貢献できれば、帝国は君たちを公に支援するだろう。しかし、王国や教会の圧力が強まれば、状況は一変する」
リディアが顔をしかめる。
「それって……安全圏なんて、ないってこと?」
「その通り」
ハインリヒは静かに頷いた。「だが、君たちは仲間と共に行動できる。力を磨き、慎重に行動すること。それが最善の防衛になる」
広間を出ると、街の喧騒が改めて僕たちを包んだ。人々の視線は冷たくもあり、好奇心に満ちてもいた。帝国内での立ち回りは簡単ではない。王国・教会の情報網は強力で、ちょっとした噂や行動が大きな影響を及ぼす。
「……僕たち、どう動く?」
僕は剣を軽く振り、仲間に問いかけた。
リディアが肩に手を置く。
「まずはここで力を磨く。帝国内で安全を確保する間に、戦略を立てよう」
剣火も小さく笑う。
「うん、街やギルドを通して情報を集めつつ、クエストや訓練で実力を上げる。それしかないね」
アリシアが小さく頷き、セレナも静かにうなずく。
僕たちは肩を寄せ合い、帝国内での次の行動を心に決めた。
街を歩きながら、僕は考えた。王国・教会の圧力は確かに強い。しかし、仲間と共に力を磨き、正しい立ち回りをすれば、帝国内での居場所を作ることは可能だ。副作用を制御し、剣姫たちと連携を深め、危険に備える。僕たち《希望の光》の旅は、まだ始まったばかりだった。




