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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

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34/45

――魔王軍の過去

あの日――

幹部候補がまだ幼かった頃、故郷の村は静かに朝を迎えていた。

小川のせせらぎ、鳥のさえずり、家族の笑い声。

平和で穏やかな時間が、何の前触れもなく引き裂かれた。


空が突然、光で裂ける。

天から降り注ぐ白光、金属の鎧に包まれた聖女たちの群れ。

僕たちの村は、逃げ惑う人々の叫びで満ちた。


「な、何が……?」

幼い彼は母の手を握り締める。

しかし母も父も、助ける暇もなく光に焼かれ、吹き飛ばされた。

木々は裂け、家屋は燃え、煙と焦げた匂いが立ち込める。


その中心で――

狂気じみた笑みを浮かべた聖女が、炎の中に立っていた。

髪は風になびき、瞳は異常なまでに光る。

「神の意志は正しい! 間違いなどないのです!」

その声は叫びとも祈りともつかず、村人の悲鳴にまぎれて響いた。


彼女は笑いながら光を振りかざす。

「あなたたちは、罪深い! だから消えるのです!」

幼い彼の弟妹も、助けを求める間もなくその光に飲み込まれた。


――あの時、世界が一瞬で壊れた気がした。


幹部候補の胸に刻まれたのは、ただ一つ――

「聖女は、守るためにあるのではなく、破壊するためにもある」

怒りと悲しみ、そして深い絶望。


その後、魔王軍に身を寄せることで生き延びた彼は、心に誓った。

「いつか、あの狂気の笑みを見せた聖女たちに復讐する」


周囲の幹部たちもまた、過去の聖女による因縁を抱えていた。

家族や師を奪われた者、村を焼かれた者、仲間を斬られた者――

誰もが、魔王の命令がなければ、自分の復讐心で聖女を排除していただろう。


アル=レグナスはそれを理解している。

だからこそ、影から監視し、必要なら保護という命令を下す。

「命令がなければ、誰もが聖女に牙を剥く」


幹部候補はその想いを胸に、帝国領内の僕たち《希望の光》に向けて動き出す。

「捕獲? 俺の復讐心には意味がない……!」

胸の奥で、過去に失った家族の笑顔と叫びが蘇る。

その記憶が、抹殺の意思となり、僕たちへの攻撃に変わる。


空間が歪む。紫と黒の光が渦巻き、森の木々はねじれ、地面は浮き上がる。

幹部候補――若き魔族の将は、目の奥に憎悪と狂気を宿し、両手で魔力を握りしめる。


「聖女は……根絶やしだ!」

声は低く、凄まじい熱量を帯びて響く。

過去に奪われた家族の顔がフラッシュのように蘇る。母の泣き声、父の怒声、弟妹の必死な手招き――すべてが胸を締め付ける。


「光の刃に、村を、家族を……奪われた!」

彼の身体から暴走した魔力がほとばしり、周囲の木々が燃え、空間そのものが震える。

「今日こそ、終わらせる……聖女は、絶対に生き残らせない!」


過去の聖女による村壊滅の光景が目の前で再現されるかのように、異空間は火と光と破片で満ちていく。

幼き日の記憶と怒りが、今、抹殺の意思となり彼を突き動かしている。


「捕獲? 馬鹿な……俺の復讐に命令も理屈も関係ない!」

幹部候補の目は赤く光り、手から放たれる魔力の光は歪み、黒くねじれる。

「聖女は、根絶やしだ……俺が、全てを終わらせる!」


その叫びに、異空間の重力が歪む。地面が波打ち、浮遊する岩が飛び交う。

僕たち《希望の光》はまだその暴走の全貌を理解できず、ただ異様な圧力に押される。


「過去に奪われた命が、俺をここまで強くした……!」

彼の言葉には、もはや理性の影はない。

復讐に燃えた魂だけが、聖女排除の唯一の目的として存在する。


アル=レグナスの命令は、かろうじてこの暴走を外界に逸らさないだけの歯止めにすぎない。

だが、命令がなくとも、この幹部候補は誰もが恐れる狂気の力を振るうだろう――

「聖女は根絶やしだ!」という信念が、今、戦場を支配している。

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