――初めてのクエスト
帝国ヴァルハイム冒険者ギルド。
登録を終えた僕たち《希望の光》は、初めての依頼票を手にしていた。
「周辺森域の護衛か……」
剣火が小声で呟く。
「初回にはちょうどいいな」
リディアが頷く。
「怪我人も出ないだろうし、戦力確認には十分ね」
僕は地図に視線を落としながら、自分に言い聞かせる。
(今回は……僕が前に立つ番だ。副作用も抑えないと)
副作用――
僕の聖女スキルは強力だ。
でも光の力が剣姫たちの感情に影響を与える。
前回は密着訓練で少し抑えられたけど、実戦でどうなるかはわからない。
「……大丈夫、集中」
僕は深く息を吸った。
⸻
森の入り口。
木漏れ日が足元に影を落とす。
鳥のさえずりが聞こえる。
この穏やかな空気に油断はできない――と思った瞬間、低い唸り声が響いた。
中型の狼型魔獣が、木々の間から飛び出してきた。
「戦闘開始!」
剣火とリディアが前に出る。
アリシアも両側を固める。
僕は一歩前に出て、剣を抜いた。
(支援だけじゃない。今回は僕も戦うんだ)
まずはスキルの光を最小限に展開し、回復と強化の祝福を味方に送る。
同時に、剣を握る手に力を込める。
狼が剣火の背後に回り込む――その瞬間、僕は光の出力を微調整し、剣姫たちの動きに合わせて攻撃をサポート。
そして、僕自身も剣を振るった。
「――っ!」
狼の牙が迫る。
僕は咄嗟に斬り払う。
剣先が正確に命中し、狼は押し返される。
「僕……やれるかもしれない」
心臓が高鳴る。
支援だけじゃない、自分の力で前に立てる感覚――
それは初めて味わう手応えだった。
⸻
戦闘中、光の力で剣姫たちが反応を過剰に示しかけた。
剣火の動きが少し荒くなる。
アリシアの呼吸も速くなる。
(落ち着け、僕……意識を集中)
僕は副作用を抑えるため、光を出す対象ではなく、相手の動きと呼吸に注意を向けた。
すると剣姫たちは、自然に落ち着きを取り戻す。
初めて、自分の意思で副作用を制御できた瞬間だった。
「……前より安定してる」
リディアが小声で言う。
「まだ完璧じゃない。でも、確かに成長してる」
僕は剣を握り直す。
(守られるだけの聖女じゃない。前に立つ力も、支える力も、僕の手でコントロールできる……)
⸻
戦闘後、森の出口で僕たちは立ち止まった。
息を整える僕に、リディアが微笑む。
「これからが本番よ。
君が戦えるって分かれば、私たちも動きやすい」
「うん……僕、もっと強くなる」
僕は拳を握り、仲間を見回す。
「支援も、剣も。全部、自分の意思で使えるように」
小さくても確かな光――
《希望の光》は、確実に前に進み始めた。
夕暮れの空に、僕たちの旗が静かに揺れる。
僕は初めて、聖女として、そして戦う者としての実感を胸に刻んだ。




