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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第一章 聖女(男)になりました。

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――剣姫は二人になり、聖女は振り回される

剣姫アリシアとの実地検証任務が始まって三日目。

正直に言えば――胃が痛い。


「……で、君はどうしてそんなに落ち着きがない?」


馬に揺られながら、アリシアが淡々と問いかけてくる。


「そりゃ、隣に“万が一斬る”とか言う人がいれば緊張もしますよ」


「合理的判断だ」


否定しないのか。


北方の魔物多発地帯へ向かう道中、アリシアは終始寡黙だった。

だが、戦闘になれば話は別だ。


「支援を」


短い一言。

それだけで、僕はスキルを展開する。


《祝福付与》《身体能力強化》《集中力向上》


光を纏ったアリシアは、まさに剣姫だった。

無駄のない動き、的確な判断。

強化の相乗効果で、その剣はまるで魔物を切り裂く風のようだ。


戦闘後、彼女は静かに剣を納めた。


「……やはり、本物だな」


「疑ってたんですか?」


「今も疑っている。ただし――力は否定できない」


それ、褒めてるのか微妙なラインだ。



その日の夕方。

僕たちはとある街道沿いの町に立ち寄った。


目的は補給と、もう一つ。


「ここで合流する」


アリシアがそう告げた。


「合流?」


「追加の監視役だ」


……まだ増えるの?


嫌な予感しかしない。


宿の酒場に入ると、やたらと視線を感じた。

理由はすぐにわかる。


「――あら?」


艶やかな声。

振り向くと、そこにいたのは――とにかく、目立つ女性だった。


豊かな金髪が肩に流れ、胸元はやたらと開いている。

腰のくびれも、脚線美も、全部主張が強い。


「噂の“男の聖女”って、あなた?」


視線が、上から下までなぞられる。


「え、あ、はい……テイルです」


「ふふ。思ったより可愛い顔してるじゃない」


距離が、近い。

物理的に。


「離れてください」


アリシアが間に入った。


「相変わらず堅いわね、アリシア」


女性は笑いながら一歩下がる。


「紹介するわ。

第二騎士団所属、剣姫――セレナ・ヴァイス」


剣姫。

また剣姫。


しかもこの人、雰囲気が真逆だ。


「よろしくね、聖女くん?」


「……男です」


「細かいことは気にしないタイプなの」


気にしてほしい。



セレナは、見た目通り……いや、見た目以上に自由だった。


「ねえテイル、聖女って回復もできるのよね?」


「え、まあ」


「じゃあ後で部屋でお願いしよっか」


「何をですか!?」


「肩こり」


即答だったが、信用できない。


アリシアが咳払いをする。


「ふざけるな、セレナ。これは任務だ」


「わかってるわよ~。でもね」


セレナは急に真剣な目になる。


「この子、相当な爆弾でしょ?」


空気が変わった。


「男で聖女。

王国も教会も、放っておくわけない」


「……だから、二人で見る」


アリシアの言葉に、セレナは肩をすくめた。


「了解。じゃあ、実力チェックね」


その夜。

町外れで魔物の反応が確認された。


「二人同時……?」


「そう。

私とアリシア、両方を支援してみて」


無茶ぶりだ。


「できるかどうか……」


「できなきゃ、ここで終わり」


セレナは笑っているが、目は本気だった。


――やるしかない。


《全体強化》《祝福拡張》《魔力循環最適化》


光が二人を包む。


「……っ!?」


セレナが目を見開く。


「なにこれ……身体、軽すぎ……!」


「集中が途切れない……」


二人の剣が、夜を裂く。


連携。

圧倒的な連携。


戦闘は、数分で終わった。


「……はは」


セレナが笑った。


「これは……反則ね」


彼女は僕の肩に手を置く。


「ねえ、テイル。

あなた、自覚ある?」


「なにをですか」


「あなたがいると、私たち――“最強”になる」


アリシアも黙って頷いた。


男の聖女。

異端で、危険で、理解不能な存在。


だが。


「決まりね」


セレナが笑う。


「この旅、面白くなりそう」


こうして僕は、

二人の剣姫に挟まれながら旅を続けることになった。


……胃が痛い未来しか見えないけど。

お読みいただきありがとうございます。

読んで面白いと思った方は是非評価のほどよろしくお願いします。

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