表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/45

――弱さを測る者、弱さを知る聖女

帝国管理部は、都市の中心からわずかに外れた場所にあった。


装飾のない石造りの建物。

窓は少なく、塀は高い。

要塞というより、思考のための隔離施設だ。


「……歓迎されてる感じはしないな」


剣火の呟きに、案内役の兵士は淡々と答えた。


「ここは、

感情を歓迎しない場所です」


重厚な扉が開く。


中は静まり返っていた。

音が反響しないよう設計された廊下。

歩くたびに、自分の存在だけが浮き彫りになる。


通された部屋には、円卓がひとつ。

待つこと数分――

一人の男が入ってきた。


白衣姿。

軍服ではないが、

背筋はまっすぐで無駄がない。


四十代半ば。

理知的な眼差しの奥に、

長年“人を観てきた”疲労が滲んでいる。


「初めまして」


男は、形式的に一礼した。


「帝国管理部・聖性研究区」


「主任研究官、

ハインリヒ=クローヴァー」


その視線は、

一切迷うことなくテイルに向けられた。


「……男性の聖女」


「記録上では仮説止まりだったが、

実在したとは」


声には驚きがない。

あるのは、確認と評価だけ。


「結論から言おう」


ハインリヒは、席に着く。


「君は――

弱い」


空気が、張りつめる。


剣火が立ち上がりかけるが、

リディアが静かに制した。


テイルは、

何も言えなかった。


「勘違いするな」


ハインリヒは続ける。


「能力値の話ではない」


「聖女スキルの出力、精度、

いずれも優秀だ」


「だが――」


眼鏡の奥で、視線が細くなる。


「君の思考は、

“守られる前提”で止まっている」


その言葉は、

はっきりと痛かった。



「君は、

仲間が前に出ることを前提に判断している」


「支援は早い。

回復も正確だ」


「しかし」


机上に、記録板が置かれる。


そこには、

異空間攫取事件の解析データ。


「この瞬間」


「君は、自分が

“確保対象”であることを

最後まで想定していなかった」


テイルの喉が鳴る。


(……その通りだ)


「魔王軍は、

聖女を殺さない」


「だが、

“奪う”」


「君は、

その現実にまだ立っていない」


責める声ではない。

事実を淡々と並べる声。


それが、

逆に逃げ場を奪っていた。


「……どうすれば」


テイルは、

小さく息を吸う。


「どうすれば、

強くなれますか」


ハインリヒは、

初めて僅かに口角を上げた。


「その問いが出た時点で、

可能性はある」



「答えは、三つだ」


一本目の指。


「自分が戦場の中心であると自覚しろ」


「君が倒れれば、

支援網は崩壊する」


「だから、

守られる存在である前に、

“立ち続ける存在”になれ」


二本目。


「聖女スキルの対象を、

味方に限定するな」


「異空間で行った

“敵への干渉”」


「それは、

聖女としては異端だが、

戦術としては正解だ」


三本目。


「孤立するな」


意外な言葉だった。


「君は、

一人で判断し続けると

視野が狭まる」


「信頼する者を、

意識的に戦術に組み込め」


ハインリヒは、

テイルを真っ直ぐ見た。


「君は、

未完成だ」


「だが帝国は、

完成品には興味がない」


「成長途中の異常にこそ、

価値を見出す」



研究区を出た廊下。


来た時よりも、

床が重く感じた。


「……手厳しいな」


剣火が息を吐く。


「でも」


リディアが言う。


「逃げなかった」


テイルは、

自分の胸に手を当てる。


弱い。

守られてきた。


だからこそ――


「考えるよ」


「どうすれば、

前に立てるか」


帝国管理部は、

優しくない。


だが、

現実から目を逸らさせもしない。


その日、テイルは初めて――

“聖女として強くなる”ことを、

自分の意思で考え始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ