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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

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――軍服の聖女

帝国領に入ってから、

街道の空気ははっきりと変わった。


舗装された石畳。

正確な間隔で並ぶ街路標。

人の姿はないが、

常に見られている感覚がある。


「……やっぱり、帝国だな」


剣火がぼそりと呟く。


その時だった。


街道の分岐点。

小高い丘の上に、

一人の人物が立っている。


白と紺を基調とした帝国軍正規の軍服。

外套は風を計算したかのように揺れ、

姿勢は一分の隙もない。


少女だった。


(……あ)


テイルの胸が、わずかに強く鳴る。


祝福が、反応している。


彼女――イリスは、

こちらをじっと見下ろしていた。


敵意はない。

だが、歓迎もない。


「帝国領内、異常なし」


静かな声が、

距離を越えて届く。


敬礼はしない。

代わりに、形式的な一礼。


「私はイリス」


「帝国軍管理部付、

聖女技能保持者」


その言葉に、

一行の空気が引き締まる。


「……軍所属の聖女?」


リディアが、思わず聞き返す。


イリスは、淡々と頷いた。


「帝国では、

祝福も戦力の一部」


「運用される存在」


剣火が鼻で笑う。


「随分、割り切ってるな」


「感情は、

判断を鈍らせる」


即答だった。


テイルは、

その言葉に引っかかりを覚える。


(……でも)


(この人、

感情がないわけじゃない)


(抑え込んでるだけだ)


二人の視線が、

短く交わる。


祝福が、かすかに揺れた。


共鳴には至らない。

だが、拒絶でもない。


「あなた」


イリスが、テイルを見る。


「聖女技能を持つ男性」


「観測対象として、

非常に特異」


「……観測、か」


「はい」


「帝国は、

理解できないものを放置しない」


その言葉は、

警告のようでもあり、

忠告のようでもあった。



「都市へ向かうの?」


セレナが尋ねる。


イリスは、街道の先――

帝国都市の方向を示す。


「あなたたちは、

正規街道を使うといい」


「私は、

管理路を巡回する」


「……一緒には行かないんだ」


テイルの言葉に、

イリスは少し考えた。


ほんの一瞬。

軍人の仮面が、わずかに緩む。


「同道は、

合理的ではない」


「立場が違う」


そう言って、

彼女は踵を返した。


数歩、歩いてから――

振り返らずに言う。


「都市に入れば、

必ず再観測が行われる」


「その時まで、

生きているといい」


冷たい言葉。


けれど、

不思議と悪意はなかった。



イリスの姿が、

管理路の向こうに消える。


残された一行は、

しばらく言葉を失っていた。


「……すげぇ緊張感だったな」


剣火が、肩を落とす。


リディアは、

帝国都市の影を見つめる。


「教会とは、

まったく別の危うさ」


「でも――」


テイルが、拳を握る。


「逃げるために来たわけじゃない」


「知るために、来た」


都市の城壁が、

はっきりと見えてきた。


巨大で、無機質で、

人を拒まない代わりに

人を選別する場所。


その中で、

彼らはどう扱われるのか。


そして――

軍服の聖女イリスは、

何を選ぶのか。


帝国都市は、

もうすぐそこだった。

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