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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

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――合流、そして

帝国との国境は、

思っていたよりもあっさりしていた。


高い城壁も、

聖句の刻まれた門もない。


黒い鉄柱が一本、

街道脇に突き立っているだけだ。


そこには短く、こう刻まれていた。


《ここから先、帝国領》


「……ほんとに、これだけ?」


剣火が首を傾げる。


「拍子抜けするくらい、何もないな」


「だからこそよ」


リディアが答えた。


「帝国は、

“信じさせる”必要がない」


「力があることを、

前提にしてる国だから」


テイルは境界標を越えた瞬間、

胸の奥がじわりと熱を持つのを感じた。


(……気のせいじゃない)


聖女としての感覚が、

何かに触れたような、

引っ張られたような感触。


そのとき――


「止まって」


低い、よく知った声。


一行が一斉に振り向く。


街道脇の林から現れたのは、

フードを被った剣姫。


「……セレナ?」


剣火が声を上げる。


「無事だったのか!」


セレナはフードを外し、

一瞬だけ安堵したように息を吐いた。


「合流できた」


「でも……」


彼女は周囲を見渡し、

境界標に視線を向ける。


「一歩、遅かった」


「もう帝国領よ」



少し歩き、

人目の少ない場所で足を止める。


セレナは迷わず切り出した。


「先に言う」


「この国は、教会より危険」


「え?」


テイルが思わず聞き返す。


「でも、帝国は中立で――」


「中立じゃない」


セレナは首を振った。


「“感情を挟まない”だけ」


「助けもしないし、

 裁きもしない」


「ただ、

 使えるかどうかを判断する」


剣火が腕を組む。


「……兵器扱いってことか?」


「もっと冷たい」


セレナは静かに言った。


「現象扱いよ」



「セレナ」


リディアが問いかける。


「どうして、

帝国の聖女が国境近くにいるって分かったの?」


「最初は分からなかった」


セレナは正直に答えた。


「ただ、関所に

“変な空気”があった」


「祈ってないのに、

場が整ってる」


「兵士が無意識に距離を取ってる」


「……それ、

聖女特有のやつだ」


テイルが呟く。


「ええ」


「でも確信はなかった」


だから、

街で情報を集めた。


酒場。

露店。

宿屋。


「最近、兵が増えた理由」


「関所の奥に、

軍と一緒に動く若い娘がいること」


「奇跡を起こしたって噂」


それらを繋げて、

ようやく分かった。


「帝国の聖女が、最近顕在した」



「じゃあ、なんで国境に?」


リュシアが不安そうに聞く。


セレナは、

なるべく分かりやすい言葉を選んだ。


「聖女の力は、

顕在した直後が一番危険」


「本人も制御できないし、

周囲に影響が出やすい」


「だから帝国は、

街の中心には置かない」


「国境付近で、

影響範囲を限定する」


「同時に――」


一拍置く。


「外から来る異常も、

まとめて観測できる」


全員が、息を呑んだ。


「……僕たち、か」


テイルの言葉に、

セレナは頷いた。


「聖女が二人」


「しかも一人は、

教会が制御できなかった存在」


「帝国からすれば、

“絶好の比較対象”」



剣火が顔をしかめる。


「つまり、

あの帝国聖女は――」


「監視役でもあり、

測定器でもある」


「本人にその自覚があるかは、

分からない」


「でも」


セレナははっきり言った。


「もう、見られてる」


テイルは、

さっき感じた胸の熱を思い出す。


「……呼ばれてる感じがした」


「それ、正解」


セレナは即答した。


「帝国の聖女は、

同じ力に反応する」


「だから、

ここに配置されてる」



沈黙が落ちる。


「それでも、進むしかない」


アリシアが言う。


「戻れば、

教会と勇者がいる」


「止まれば、

帝国に囲われる」


リディアが静かに決断する。


「なら、

“捕まる”前に動く」


「帝国に、

こちらから名乗りを上げる」


「観測対象じゃなく、

交渉相手として」


セレナは小さく笑った。


「賢い選択」


「この国で生き残るには、

それしかない」


帝国領の奥へと続く街道。


そこには、

剣で切れない網が張られている。


そしてその中心に――

まだ姿を見せない

帝国の聖女がいた。

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