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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

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――帝国ともう1人の聖女

帝国領に入ってから、

セレナはずっと違和感を覚えていた。


(……止められない)


検問は形だけ。

名前も目的も、深く聞かれない。


代わりに、

こちらが何も言わないうちに、向こうは知っている。


それが、この国のやり方だった。



街道沿いの小さな交易町。

セレナは先行偵察の名目で、

一人、街に入った。


フードを深く被り、

あくまで「流れの傭兵」を装う。


(……噂は、酒場)


王国でも帝国でも、

情報は人の口から漏れる。



酒場は昼間から人が多かった。

商人、兵士、職人。


帝国では珍しく、

宗教色の薄い空間だ。


セレナはカウンターに腰掛け、

さりげなく話を振る。


「最近、

 この辺り、やけに兵が多くない?」


酒場の主人が肩をすくめる。


「そりゃあな」


「“あれ”が出たからよ」


「あれ?」


主人は声を潜めた。


「……聖女だ」


セレナの手が、ほんの一瞬止まる。


(帝国に、聖女?)


「帝国って、

 教会の聖女とは別じゃ?」


「そりゃそうだ」


「でもな、

 奇跡を起こすなら、

 呼び名は一つだろ?」



別の客が、会話に割り込んできた。


「まだ若い娘だ」


「顕在したのは、

 つい最近らしい」


「祈りも教会式じゃない」


「帝国の軍医が、

 “観測”してたって話だ」


(観測……)


セレナの胸がざわつく。


「……それで、どうなった?」


「どうもこうもねえ」


主人が苦笑する。


「教会に引き渡すどころか、

 帝国が囲った」


「今は関所の奥で、

 軍と一緒に動いてる」



その言葉を聞いた瞬間、

セレナは“あの視線”を思い出した。


関所で見かけた、

白基調の実用的な服。


兵士に守られていないのに、

誰も近づかなかった理由。


(……そういうことか)


(帝国は、

 聖女を“管理対象”にした)



酒場を出たセレナは、

屋根の上から関所を再確認する。


例の少女が、そこにいた。


祈っていない。

祝福も放っていない。


それでも、

空気が“揃えられている”。


(無意識下で、

 周囲を調整してる……)


それは教会の聖女とは違う、

未整備で、だからこそ危険な力。


(テイルが、

 この国に入ったら)


(同じ扱いを受ける)


いや――

それ以上だ。


男の聖女。

教会が切った存在。


(帝国からすれば、

 最高の研究対象)



セレナは、すぐに決断した。


(……急がないと)


この国は、

敵意を向ける前に、

「理解した」と判断する。


理解された瞬間、

もう逃げ道はない。


セレナは仲間の元へ向かって走り出した。


帝国は危険だ。


教会とは、

別の意味で。

お読みいただきありがとうございます。

読んで面白いと思った方は是非評価のほどよろしくお願いします。

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