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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第二章 帝国編

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――帝国行きの理由と、歪な一行

帝国領へ向かう街道は、王国側よりも明らかに広く、無駄がなかった。

整えられた石畳を踏みしめながら、剣火が軽く舌打ちする。


「……ほんと、帝国って感じだな」


「どういう意味?」


テイルが聞くと、剣火は顎で前方を示した。


「綺麗すぎる。

人が歩くための道ってより、軍が動くための道だ」


「その通りね」


そう答えたのはリディアだった。


彼女は周囲の地形や道標をさりげなく確認しながら歩いている。

もはや教会の聖職者というより、情報屋の立ち振る舞いだ。


「帝国は“無駄なもの”を嫌う。

人も、力も、感情も」


「……じゃあ僕たち、相当無駄の塊じゃない?」


テイルの冗談に、誰も否定しなかった。



少し後ろでは、アリシアが馬の手綱を引きながら静かに歩いている。

銀髪を揺らし、視線は常に周囲へ。


彼女は元・王国騎士団の剣姫。

寡黙で感情を表に出さないが、

この旅の中で誰よりも冷静に状況を見ている。


「……セレナは?」


テイルがふと思い出したように聞く。


「先行偵察」


短く答えたのはアリシアだった。


「帝国境に近づくほど、

単独行動の方が目立たない」


その言葉通り、

セレナは今この場にはいない。


彼女は情報収集と隠密を得意とする剣姫で、

王国騎士団に籍を残したまま、

“教会から距離を置く”判断に最も早く従った一人だ。


「セレナが先に行ってるってことは」


剣火が肩を回す。


「少なくとも、帝国側はもうこっちを把握してるな」


「ええ」


リディアは否定しなかった。


「だから彼女は“騎士団の剣姫”として動いてる。

教会とも、聖女とも、今は距離を保った立場で」


「都合のいい立場だなあ」


「生き残るためには、必要よ」



少し離れた場所では、

もう一人の聖女――リュシアがテイルの様子を静かに見ていた。


彼女は祝福を使っていない。

それでも、テイルの周囲の空気が微妙に揺れるたび、

何かを感じ取っているようだった。


「……大丈夫?」


小声で尋ねられ、テイルは首を振る。


「問題ない。

今は、まだ」


その言い方に、リディアが視線を向ける。


「“まだ”って言い方、

そろそろやめなさい」


「分かってるけどさ」


テイルは苦笑した。


「僕が聖女である限り、

問題が“起きない”瞬間なんてないでしょ」


誰も否定できなかった。



剣火がぽつりと言う。


「こうして見るとさ」


「王国騎士団に残ってるのがセレナ、

一緒に来てるのが私とアリシア、

教会を完全に抜けたのがリディア」


「で、聖女が二人」


「……ほんと、よくバラバラになったもんだ」


「でも」


アリシアが静かに続けた。


「それぞれが、自分で選んだ結果」


その言葉に、テイルは少しだけ救われた気がした。


誰も無理やり連れてきたわけじゃない。

逃げただけでもない。


選んだ先が、たまたま帝国だっただけだ。



遠くに、帝国領を示す黒い標柱が見えてくる。


リディアが言った。


「ここから先は、

“王国の論理”は通じない」


「利用される可能性も高い」


「……それでも行く?」


テイルは足を止めず、答えた。


「うん」


「少なくとも、

僕たちを“物語”で処理しようとはしない」


剣火が笑った。


「勇者様よりは、信用できるな」


その言葉の裏にある名前を、

誰も口にはしなかった。


帝国は、まだ中立だ。


だが――

この一行を見逃すほど、甘い国でもない。

お読みいただきありがとうございます。

読んで面白いと思った方は是非評価のほどよろしくお願いします。

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