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あの、僕男ですが、何故か聖女スキルを獲得して剣姫達と魔王を倒す旅に出ます。  作者: 三科異邦
第一章 聖女(男)になりました。

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――聖女は、男に宿った

お読みいただきありがとうございます。

読んで面白いと思った方は是非評価のほどよろしくお願いします。

聖女――。

遥か昔から勇者や英雄を支え続けたスキルである。

選ばれた“女性”のみが授かることを許され、その力は数ある支援系スキルの中でも最強と謳われてきた。


戦場において味方の生存率を劇的に引き上げ、奇跡と呼ばれる現象すら引き起こす。

だが、ここ数百年は顕現した記録もなく、今や伝説として語られる存在だった。


――まさか、それが自分に宿るなど。


あれは冬の寒い時期だった。

この地域では珍しく、朝から雪が降り続いていた。


「はぁ……」


吐く息が白く、足元の雪がきしむ。

僕、テイル・カトレアは、村外れの空き地でいつもの日課をこなしていた。


日課――といっても、特別なことではない。

剣を振り、走り込みをし、身体を鍛えるだけだ。


だが、それが僕の全てだった。


いずれ王国騎士団に志願する。

そのために、才能がなくても努力だけは怠らないと決めていた。


「よし……今日はここまで」


剣を収めた、そのとき。


「おーい、テイルいるー?」


聞き慣れた声が、雪景色の向こうから響く。


「ユフィル、どうしたの?」


振り返ると、幼馴染のユフィルが手を振りながら駆け寄ってきた。

赤いマフラーを巻き、雪に少し足を取られながらも元気そうだ。


「テイル、明日は天啓の日でしょ? 準備はできてる?」


天啓――。

十四歳を迎えた者が、一生に一度だけ授かる神の祝福。


剣の才能、魔法の適性、あるいは生活に役立つ技能。

どんなスキルを得るかで、その後の人生が決まると言っても過言ではない。


「まだ行ってない……そろそろ取りに行かないとな」


そう答えると、ユフィルは大げさに肩を落とした。


「もう。昔からそうなんだから。大事なことほど後回しにするんだから」


「どうせ剣士系が出るかどうか、だろ?」


「簡単に言うけどね。騎士団に入るなら、ちゃんとした天啓がないと難しいんだから」


正論だった。

騎士団は実力主義とはいえ、天啓の有無は大きな判断材料になる。


「……まあ、なるようになるさ」


そう言って笑うと、ユフィルは少し困った顔をした。


「テイルって、たまに自分のこと軽く見すぎだと思う」


その言葉が、なぜか胸に残った。



翌日。

村の外れにある天啓の祭壇へ向かった。


古びた石造りの祭壇は、雪に埋もれながらも静かに佇んでいる。

何人か同年代の少年少女が、緊張した面持ちで順番を待っていた。


やがて僕の番が来る。


「テイル・カトレア。天啓を求めます」


祭壇に手を置いた瞬間、淡い光が溢れた。


――温かい。


身体の奥に、ゆっくりと何かが染み込んでくる感覚。

剣を握ったときとも、魔力を感じたときとも違う。


頭の中に、文字が浮かび上がった。


【スキル獲得】

聖女セイント

支援系最高位スキル

※性別制限:解除済み


「…………は?」


思考が止まった。


聖女?

あの、伝説の?

女性限定の?


「……いや、待て待て待て」


必死に否定しようとするが、スキル情報は容赦なく流れ込んでくる。


《全体回復》《状態異常完全無効》《祝福付与》《奇跡発動率上昇》

聞いたこともないような効果が、ずらりと並ぶ。


「完全に後衛じゃないか……」


剣士志望の人生設計が、音を立てて崩れていく。


そのとき。


「きゃああああっ!」


悲鳴が響いた。


祭壇の外を見ると、雪原の向こうから魔物が現れていた。

この辺りでは珍しいはずの狼型魔物――しかも複数。


「どうしてこんなところに……!」


誰かが叫ぶ。


剣を抜こうとした瞬間、身体が勝手に前に出た。


「……守れ」


そう呟いただけだった。


次の瞬間、柔らかな光が溢れ、祭壇周辺を包み込む。

魔物の牙と爪は、光に触れた途端、まるで存在しなかったかのように霧散した。


魔物たちは怯えたように後退し、やがて雪原の向こうへ消えていく。


静寂。


「……テイル?」


ユフィルの声が震えていた。


僕は、自分の手を見つめた。

剣は握っていない。

だが、確かに――守れた。


「どうやら……これは間違いないらしい」


伝説の聖女スキル。

それを宿したのは、剣士を夢見るただの男。


「……人生って、何が起きるかわからないな」


この日を境に、僕の運命は大きく動き出す。

剣姫と呼ばれる少女たちとの出会い。

男の聖女という、ありえない存在を巡る波乱。


それら全ては、まだ始まったばかりだった

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