第5話
翌日の学校も特に大きなことはなく、あっという間に放課後になってしまった。
昨日約束したはいいが、特に待ち合わせとかもしていないため、これから、どうしようかと考えていたが、
「同じクラスなんだから、そもそも、待ち合わせなんてする必要なかったね!さぁ、帰ろっか!」
といつも通り明るい声で向さんがやってきた。
急に声をかけられ驚いたのもあるが、どこからか視線を感じたような気がして、そわそわしていると、
「どうしたの?なんか落ち着かない様子だけど?」
と、向さんは、不思議そうにこちらを見て、様子を確認しているようだ。
「いや、急だったからちょっとびっくりしただけ……。」
と、向さんに悟られないように、周りを気にしながら、答えたつもりだったが、
「なんか、様子変じゃない?何もないならいいけど……、心配事?」
と予想外にも気づかれたので、隠すのも面倒になってきて、
「誰かに見られてたような気がしただけだよ。多分気のせいだろうし、気にしないで……」
と返答したが、
「あー……。またいつもの名物かって思われてるかもね、これ。最近は、将棋勧誘控えてたけど、まぁ、同じ中学のクラスメイトもそこそこいるし、多分私のせいだから気にしないでいいよ!」
「なるほど。そんなに有名なのか。」
「まぁ、あのときは張り切りすぎてたから。……って、その話はいいの!さ、早く帰ろ!」
あまり触れられたくなさそうだったので、きっと黒歴史なんだろうなと察して、向さんにしたがい、素直に帰ることにするのであった。
道中、黙っているのも、なにか気まずい気がしたので、
「そういや、今日って、昨日言ってた、棋譜並べ……?だっけ?をするの?」
と軽く聞いてみると、
「それがさ……。なかなかオススメのいい棋譜なくってさ……。」
と、ちょっとテンション低めの珍しい様子になった。
「じゃ、今日は、なんもなしでただ交流を深める的ななにか……?あまり、嫌にならないようにうまくバランスを考えて、いつの間にか将棋漬けにしようとか考えていたり……?」
と、少し茶化して、いつもの調子に戻ってもらおうとしてみた。
「そんな変なこと考えてないよ……?どういうふうに私を見てるのさぁ……?」
と、本当にちょっと悲しそうに返答してきたが、思ったことを率直に、
「いつもの元気はどこへ行ったんだ?いつもの調子なら、そこは軽く怒って元気になるような……?」
と返答すると、不貞腐れたように、
「そういうふうに私のこと見てるんだ……?まぁ、そこまで間違ってもないからいいけどさ……。」
と、一応、自覚はあるようで認めながらも、
「でも、今回はそうじゃないから!真面目に龍馬の好みに合うように、パズルっぽいやつないかなって考えたんだからね?」
と、いつもとは違うんだ!といった様子がうかがえた。
俺も内心驚きながらも、
「パズルっぽい将棋って、詰将棋以外なんかあるか……?軽くしか調べてないから、詳しくは知らないけど……」
と半信半疑ながら、続きを聞いてみることにした。
「それがね……!あるんだよね!色々頑張って探したからね!」
と自信満々の様子で、さらに続けて、
「逃れ将棋っていうものがあるんですよ。家に本があったんだー。まぁ楽しみにしててよ!」
と、これはどうだと言わんばかりの表情で続けた。。
「あと、まぁ、これは私が考えついたんだけどね?詰将棋をちょっとアレンジして、持ち駒を隠して、何があれば詰むか考えてみるとかさ。こういうのってどう思う?」
と、こちらの反応を楽しみにしているのがうかがえた。
だが、俺は、
「逃れ将棋は……知らんけど、詰将棋のアレンジねー。面白そうな気もするけど、答え1つに決まらなくない?それ」
と、気になったことをそのまま口にした。
すると、
「そういう問題もたしかにありそう……?でもさ……、事前に何手詰めかは言っておくだけでも、ほぼ一通りになるんじゃない……?早詰めしたらおかしいって気づけるし……?」
と急に、少し自信をなくしたように、疑問系でこちらに聞いてきたので、
「なんで考えた本人が疑問系なんだ……?まぁ、完全に定まるかはわからんが、やってみてのお楽しみってことでいいんじゃないか?」
と、まぁ、面白そうだし、やってみる方向性で話してみると、
「何事もやってみなくちゃわからないよね!」
と、すぐに元気を取り戻した。
それから、しばらくして、聞きそびれていたことを思い出したので、
「そういえば、もう1つの逃れ将棋……?本があるって言ってたけど、それは一体どんなものなんだ……?」
向さんは、待ってましたと言わんばかりに声を弾ませた。
「逃れ将棋っていうのは、簡単に言えば、詰将棋の反対でね?一通りしか逃げ道がないなかで、詰まされないように安全なところまで王様を逃がすことができれば正解、ってものなんだよ!」
「なるほど。確かにパズルっぽいな。だけど、以前、将棋系のパズルを調べてもなかったのはなんでだ……?」
「まぁ、明確にルールを作るのが難しくてちょっと曖昧な部分もあるらしいから……?なのかなぁ?」
「そういうものなのか……。」
「多分、そういう曖昧さのせいで、扱いづらいから検索上位には出てこないのかな?でも、見方を変えれば、逃れ将棋だと詰み筋がいっぱいあるから、結果的にたくさんの詰将棋ができる!みたいな考え方もできるかもよ?」
「明確に持ち駒も手数もわからないものは果たして詰将棋なのか……?」
「それをいうなら、私の考えたアレンジ詰将棋もよく似たものじゃない?」
「そう言われたらそうな気もするなぁ…。とりあえず、そういう見方もありえるってだけ思っとくわ」
「そうそう!楽しみは多い方がいいよ!」
そんなやりとりを続けているうちに、ふと顔を上げると、すでに向さんの家に到着していた。
長編として投稿予定ですが、ストックが少ないため、途中ですが、先にお届けします。更新は不定期ですので、気長にお付き合いください。




