07.最後のオーディションで覚醒!?(牧野咲)
しばらく待っていると、しぶしぶメガネをかけた女の子が入ってきた。
佐藤明澄香さん。志望している役はまだ未定。
あまり演劇に対して熱意は無く、家に帰ってもお母さんがいないため、その代わりに入ったという単純な理由で演劇部の門を叩いた。
そんな彼女が、どうして甘川劇場の出演を希望したのだろうか?
そんなことを考えていると、小さく少し高めな声が、私の耳に入ってきた。
「さ、ささ、佐藤、明澄香、です。まだ、役は決まってません、よろしくお願いします。」
佐藤さんはずいぶん緊張した様子で頭を下げた。
部員が緊張してるところ見ると私も緊張する……!
主演のオーディションに参加できる人はこの前に全員の演技を見て部長が決めたそうだ。
出れる人は三人。
今回、枠は三つあったため、月宮さん、白葉さん、そして佐藤さんが主演としてスポットライトを浴びることは確定だ。
今回決めるのはこの三人をどの役に振り分けるかだけ。
こんな簡単なことだよ、しかも最後だから頑張ろう!
私はそう自分に語りかけた。
「あ、すみません、では……瀬戸美紀の演技をお願いします!」
佐藤さんは、はいと頷くと、演技を始めた。
「バンド……ね……オッケーはなまる!めーっちゃいいじゃん!」
そう言って佐藤さんは指でオッケーマークを作った。
へ!?なんかめっちゃ元気じゃない!?
「『ミラクルズ』!いいねーっ!じゃあ私はギターで……」
佐藤さんの演技も、私の耳には入ってこなかった。
いや、性格違いすぎないか!?
演劇って、人の性格も変えてしまうのか……!?
まあ、これは演技の中だからかもしれないけど。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか全部の演技が終わっていた。
「あ、ああ、ありがとうございました、では、ご退出をお願いします。」
そう言うと佐藤さんはにっこり笑って、教室のドアを開けて出て行った。
佐藤さん……ギャップがすごかったな。
私はなぜかクスリと笑った。
これですべてのオーディションが終了!
次は本番の役の振り分け。
頑張らなきゃ!
ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回は明日(2025年7月13日)の21時に投稿予定です!
(※訂正 本編の24行目のところに、誤った表現がありました。性格を、正確としてしまっていました!現在修正しました!読者の皆様、本当に申し訳ございませんでした!)