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03.牧野サプライズ大作戦(吉野つかさ)

<前回までのあらすじ>

昔ながらの中学校、甘川中学校では、次の学習発表会に向けて順風満帆に準備が進んでいた。

しかし一つだけ、毎年恒例のイベント、演劇部の『甘川劇場』のみ、演劇部だけで開催することが困難だった。でも、甘川劇場をなくすわけにはいかないと、演劇部は色んな人、部活に声をかけていった。

 「あ、部長! お疲れ様です!」

 教室のドアを開けると、一人最後まで残っていた演劇部部員、牧野咲が舞台の構造をスケッチしていた手を止めてこちらに微笑んでくれた。

 「どうでしたか? 許可、とれましたか?」

 「ああ、シナリオ作り、引き受けてくれるって。」

 そう言いながら僕は親指を立てる。

 「はーっ、良かったー! 最近、演劇部の志望者少なくなってきてますからねー! 今まではそういうの、 全部こっち側でできたのに。」

 「えっ、そうなの?」

 僕は牧野が作っていたスケッチに向けていた顔を上げた。

 え、なんで部長の僕が知らないかって?

 なぜかって、僕は部長なものの新人だ。

 僕はもともと『運営委員会』に入っていた。ある日の議題に、演劇部がこのままだと廃部してしまうと いうことが採用されていて、危機感を覚えて入っただけだ。

 それとは違い、四年生から継続して演劇部に入っている牧野は僕からしたら先輩だ。

 「ねえねえ、部長。」

 「ん?」

 ふと、牧野の声がして、僕は前を向く。

 「そろそろ、甘川劇場の出演部員、決めて知らせたほうがいいと思いますよ? 学習発表会まで残り三か 月。練習期間はこれまでと同じく二か月。なら、そろそろやらないと。」

 「あっ・・・・・・!」

 そうだ、すっかり忘れてた!

 最近は運営委員会の仕事に、英語のスピーチの準備で忙しかったから、演劇部のこと忘れてた!

 ああ、部長としてあるまじき行為・・・・・・

 僕は頭を抱える。

 「どっ、どうしたんですか? そんな頭抱えて。今ならまだ間に合いますって!」

 「ええっ、そうかな・・・・・・?」

 ゆっくり顔を上げると、牧野が力強く頷いたのが分かった。

 「そっ、そうだよな・・・・・・! 今ならまだ間に合うよな・・・・・・!」

 牧野もそうですよ、と首を縦に振る。

 「これから忙しくなりそうですねーっ! 甘川劇場、絶対に成功させたいな! 私も舞台構造、しっかり捉えておかないと」 

 そう言って牧野は鉛筆を手に取り、紙に何かを書き始めた。

 「・・・・・・なあ、牧野。」

 僕は恐る恐る、牧野の名前を呼んだ。

 「はい、なんですか?」

 牧野はきょとんとした顔で、こちらを見つめる。

 「お前は、甘川劇場、出ないのか? お前なら主役狙えると思うんだけど。」

 その言葉で牧野の顔は一瞬明るくなったが、すぐに曇ったような顔になってしまった。

 「うーん、嬉しいんですけど・・・・・・私、そもそもプロデューサーになりたくて入ったので。舞台 に立つなんて、夢のまた夢ですよ。私は、私の役目を果たすのみです。」

 そう言って牧野は控えめに笑い、作業に戻った。

 「えっと、牧野。何度も申し訳ないんだけど、出演部員ってどうやって決めるんだ?」

 僕は少し恥ずかしくなりながら、牧野を見る。

 「ああ、それなら毎年、出演希望者の演技を見て、私と部長が決めてます。今回ってお願いできま す?」

 「あ、ああ、分かった。じゃあ牧野は、甘川劇場出演を希望するか、部員にアンケートを取っておいて くれ。集計もできればよろしく。」

 「了解です!」

 そう言って牧野は、甘川小の演劇部が使っているパソコンを開いた。

 ・・・・・・牧野は、甘川劇場に出たくないのか?

 部長は部員一人ひとりの希望を聞いて実現していくことも一つの仕事な気がする。

 もし、牧野が舞台に立ちたかったら・・・・・・

 サプライズで主役に選ばれたって言ったら・・・・・・?

 もしかしたら、牧野が喜んでくれるかもしれない。

 僕は『牧野サプライズ作戦』と名付けた作戦を実行に移すため、こっそりと動き出した。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

第四話の投稿は、明日(2025年7月9日)の21時に投稿する予定です!ぜひ、興味がある方はご覧ください!

そしてわたくしもう一つ、「村のご立派な薬剤師さんはどうやら転生経験者だそうです」という短編小説も投稿しているので、そちらもよければぜひ、ご覧ください!(こちらの短編小説も、この「はばたけ!ミラクルズ!」も多くの方に見ていただいてます!いつもありがとうございます!)

後書きも最後まで見てくださり、ありがとうございます!それではまた!

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