01.甘川劇場の危機(井上るる)
「ふうっ」
私はため息をつきながら、紙とにらめっこをする。
作品制作計画……何を作ろうか、まったく思いつかないな……
やっぱり今日も、『サキペン』かな……
私はそんなことを考えながら、完成図のところに丸っこいかわいいペンギンを描く。
「あれ?るる、またそれ?」
その時、隣の席に座っている私の親友、鈴木加奈が私の計画書を覗き込んできた。
「あ、うん。」
私はこくりと頷く。
「へーっ、今回は何作るの?」
加奈がにこにこしながら私に聞く。
「えっと、マスコットキーホルダー作ろうと思ってて。」
「へぇ、いいじゃん!」
加奈は指でオーケーマークを作り、私に見せた。
またこれかといじられなくてよかったとほっとしていると、また加奈が口を開いた。
「でも、るるったらほんとサキペングッズしか作らないよね!ほら、そのペンケースもサキペンだし。」
「う、うん、まあね……」
図星だ。
つい今さっき起こらないといいなと思っていたことが完全にそっくり再現されている。
私は少しうつむきながら、机に置いてあったサキペンのペンケース、『サキペンケース』を握りしめた。
その時、パンパン! と手をたたく音が教室中に響いた。
私が所属している手芸部の部長が、いつも部活動が終了するときに鳴らすサインだ。
私はサキペンケースを握りしめながら、慌てて前を向いた。
「はい、みなさんお疲れ様でしたー!今日はここで終了、と言いたいところなんだけど、どうやら演劇部の人からお話があるそうです。しっかり聞いてね!」
演劇部? 演劇部って確か咲がいるところじゃ……
そう思っているうちに、私の幼馴染である牧野咲と、演劇部の部長、吉野つかささんが教室に入ってきた。
吉野さんは私たちにお辞儀をしたあと、ゆっくり話し始めた。
「みなさん知っていると思うんですけど、僕たち演劇部では学習発表会で、『甘川劇場』と呼ばれる演劇を、毎年披露しているんです。今回はそのことで、手芸部の皆さんに手伝ってもらいたいことがあって……」
そこまで言うと、吉野さんに代わって今度は咲が話し始めた。
「はい、その手伝ってもらいたい事なんですが、実は本番の時に私たちが着る衣装の製作が間に合ってなくて……誰か、お手伝いしてくれませんか?」
ええっ、間に合ってないの!? これじゃあ演劇が中止になっちゃうんじゃ……
うーん、手伝ってあげたいけど責任重大だな……
どうしよう?
「あの……ちょっといいですか?」
その時、手芸部の部員が張り詰めた空気を破って手を挙げた。
「はい、なんですか?」
「あの、その衣装って、どういうものにするとか、衣装の色とかって、決まってるんですか?」
部員は不安げな顔で質問する。
「ああ、それも決まってないんです。だからそういうのも考えていただきたいなと……」
「ええっ、学習発表会まであと一か月だよね?」
「それはやばい!」
教室のいろいろなところから、部員の声が上がった。
「あの、すいません!私も質問いいですか?」
さっきの部員に続き、私も手を挙げる。
「はい、どうぞ」
「衣装の構造を決める係と、作る係で別れてやるっていうのはありですか?」
「ああ、それもオッケーです。ただできる人は両方やってくれると嬉しいです。」
そう言って吉野さんは手を合わせる。
「ほかに質問がある人はいませんか?」
教室はしーんと静まり返る。
「では、だれか手伝いしてくれる方、いませんか?」
私はすっと手を挙げた。それ以外にも何人か手を挙げている。
それを見て咲は微笑んだ。
「ありがとうございます!手伝ってくれる方は、来週の月曜日に体育館までお願いします!」
そう言い残して、咲と吉野さんは失礼しました、と教室を去っていった。
そしてその後、部長が前に出て私たちに話し始めた。
「はい、じゃあ演劇部の人の言う通り、協力できる人は協力しなね!では、お疲れさまでした!」
「お疲れさまでした!」
私はサキペンケースをサッとスクールバッグにしまい、足早に教室、そして学校を出た。
はあっ、手挙げちゃったな……
辞退します、なんて手挙げたそばから言えるわけないけど、やっぱり緊張する……
でも、せっかく立候補したんだし、頑張ろう……!
私は一つ深呼吸をして、走り出した。
第二話は明日(2025年7月7日)の21時に投稿予定です!ぜひご覧ください!
このお話は色んな人の視点で書いていくつもりです!
(以下、わたくし白狐まるの自己紹介となっております!気になる方は是非ご覧ください!)
みなさん初めまして!白狐まるです!小学五年生で、小説初心者です!
今回初めて「小説家になろう」さんに投稿させていただいたんですけど……初心者なもので、分からないこと多すぎーっ!!
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