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第四のループ、第21章 : 光を越えた出会い

突然、空気が変わった。


低い振動音が部屋に響く。最初はかすかだったが、次第に大きくなっていく。

床が震え、鋭い衝撃が脚を突き抜けた。


そして——


突如として、凍てつくような風が部屋を切り裂いた。

皮膚を叩きつけ、氷のように刺すような冷たさが全身を襲う。


俺はよろめきながら、腕を上げて顔をかばった。「なんだ、これ——?」


船が不気味な音を立てる。

光がちらつき、不安定に点滅しながら、この混乱に抗おうとしていた。

風の音がさらに強くなり、壁の隙間から悲鳴のように吹き抜ける。


まるで、部屋全体が引き裂かれようとしているかのようだった。


そして——


白い閃光が爆発するように空間を支配した。


俺は反射的に目を閉じる。

まぶた越しにも焼きつくような光。

耐えがたいほどの輝きが、すべてを呑み込んでいく。


息が詰まる。

心臓が激しく鼓動する。


そして、その光は、現れたときと同じくらい唐突に消えていった。


振動音が止む。

風が静まる。


——沈黙。


恐る恐る腕を下ろし、まだ残る残光に瞬きをする。

心臓はまだ速く打っていたが、部屋は元の静けさを取り戻していた。


……いや。違う。


俺は、もう独りではなかった。


全身が強張る。


部屋の奥に——影があった。


薄暗い光の中、その存在はじっと佇んでいた。

ほとんど闇に溶け込んでいるが、確かにそこにいる。


胃の奥が冷たくなる。

指が無意識に拳を握りしめる。


誰だ……?


その影が、ゆっくりと前に出た。


慎重な足取り。

ゆるやかだが、意図的な動き。


顔はまだ闇に包まれている。

だが、俺の手の中にある小さなバイアルの光が、わずかにその輪郭を浮かび上がらせた。


そして——俺は、彼を見た。


息を飲む。


全身が凍りついたように動けなくなる。


それは——俺だった。


まるで、ひび割れた鏡を覗き込んでいるような感覚。


俺の目の前に立つ男。

それは、ほとんど俺と同じ姿をしていた。


鋭い顔立ち。

同じ体格。

立ち方まで——まるで鏡の中の自分のようだった。


だが、違いもあった。

彼の髪は俺より少し長く、ところどころに灰色が混じっていた。

まだ俺が生きていない"時間"が、そこに刻まれているかのように。

顔には深い疲れの影が刻まれ、目の下には消えない闇。


そして、その目——


悲しみ。


理解。


長い沈黙。


喉が渇き、唾を飲み込む。

声を絞り出そうとするが、思うように出てこない。


ようやく漏れた言葉は、かすれた囁きのようだった。


「お前は……誰だ?」


男は答えない。


ただ、俺を見つめていた。


まるで、俺の理解を超えた何かを見ているように。

まるで、俺の知らない何かを知っているかのように。


沈黙が重く、息苦しくなる。


そして、ついに彼は動いた。


ゆっくりと、俺に歩み寄る。

床を踏みしめる音が、空間に冷たく響く。


一歩、また一歩。


近づくたび、体の奥から不安が膨れ上がる。

それでも俺は、動かない。

動じるな。呼吸を整えろ。


そして——彼が目の前に立った。


近くで見ても、やはり俺とそっくりだった。

違うのは、その目だけ。


俺を見つめるその瞳が、何かを探している。


そして、彼は口を開いた。


「時間がない。」


静かな声。

だが、その奥には、抑えきれない切迫感が滲んでいた。


心臓が跳ねる。


「……どういう意味だ?」


「もし迷えば——」


彼の目が揺れることはなかった。


「彼女を失う。」


雷のような衝撃が全身を貫いた。


鋭く一歩を踏み出し、声が焦りに震えた。

「彼女を失う?何のことだ?なぜお前が泉のことを知っている?!」


男の視線が、俺の手に握られたバイアルに一瞬だけ落ちる。

彼の表情に、一瞬だけ読み取れない何かがよぎった。


だが、彼は俺の問いには答えなかった。


代わりに——


声を落とし、囁くように言った。

「お前はもう、何をすべきか知っているはずだ」


胃の奥が締めつけられる。


「答えを聞く準備ができていないのなら——」

彼は続ける。


「無駄な問いを投げかけるな」


奥歯を噛み締める。

胸の奥に、苛立ちが燃え上がる。


「どういう意味だ?お前は誰だ?なぜそんなことを知っている?!」


男の顎が固く締まる。

目の色が、さらに暗く沈んだ。


だが、その奥に見えたのは——


脆さ。


後悔。


再び口を開いたとき、彼の声は先ほどよりも静かだった。

「俺は見たんだ」


その視線が、一瞬遠くを彷徨う。

まるで、過去の苦しみを思い出しているように。


「お前が直面する選択を。

 お前が支払う代償を」


拳を強く握る。

周囲の空気が重くなり、正体のわからない何かが場を支配していく。


「何か知っているなら言え」

俺は詰め寄るように、一歩前に踏み出す。


「謎めいた言葉で誤魔化すな!」


その瞬間、男の視線が俺を捉えた。


そこには、燃え上がるような激情があった。


「俺が誰かなんて、関係ない」


鋭い声。切り裂くような言葉。


「大事なのは、お前が次に何をするかだ」


——その言葉を理解する間もなく。


船が激しく揺れた。


再び響く振動音。

先ほどよりもずっと大きく、壁が震え、床が崩れ落ちそうになる。


男の表情が変わる。

焦燥が、その目に閃いた。


「元いた場所へ戻れ」

彼の声が、鋭く響く。


「彼女が、お前を待っている」


背筋が凍る。


彼女?


泉のことか?


「……どういう意味だ?」


俺は揺れる船の中でさらに一歩踏み出し、詰め寄る。


「"彼女"って誰のことだ?!何を言っている?!」


だが——


男は何も答えなかった。


ただ、一歩後ろへと下がり、

最後に、ほんの一瞬だけ俺を見つめた。


「すぐに分かるさ」


そう、低く呟く。


その声は先ほどとは違っていた。


どこか……寂しげな響きを帯びていた。


「だが、それは——お前が前に進んだ時だけだ」


そして——


光が、再び爆発した。


眩しすぎる光。


全てを覆い尽くすような、圧倒的な輝き。


反応する暇もなかった。


その力が俺の全身を飲み込み、

まるで津波のように押し流していく。


俺は息を呑み、手を伸ばす。


「待て——!」


だが、男の姿はすでになかった。


光が、俺を包み込む。


——そして、俺は落ちていった。


時を超え、空間を超え、

すべての境界を超えて——

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