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サードループ, 第 十七 章 : 闇の中の灯火

施設全体を引き裂くような轟音が響き渡り、足元の大地が激しく揺れた。焼け焦げた回路の刺激的な匂いが鼻を突き、裂けた金属の匂いと、何か… 何か異質なものが入り混じる。モニターは不規則に点滅し、青白い光が外の混乱を映し出していた。金属の床には亀裂が走り、頭上のパイプからは蒸気が勢いよく噴き出している。けたたましい警報が鳴り響き、すべてが崩壊していくことを告げる不吉な交響曲のようだった。


何とか体勢を整えようとしながら、私はコンソールの端を掴んだ。心臓は肋骨を打ちつけるように激しく脈打ち、喉の奥にパニックがせり上がる。「何が起きてるの!?」叫んだが、声は揺れていた。私はダイチを見た。今、この嵐の中で唯一の拠り所だった。


彼は崩壊の中心に立っていた。微動だにせず。

彼の手にあるアーティファクトが異様な光を放ち、その銀色の輝きが彼の顔を照らしていた。世界が崩れ落ちようとしているのに、彼はまるでそれを意にも介さないように静かだった。だが、私は知っている。この目の奥にある重みを、彼が必死に抑え込んでいる焦燥を。


「…不安定化が進んでいる」

彼の声は静かだったが、重かった。その言葉は混乱を切り裂く刃のようだった。

「ヴァニシングはただ残されたものを消し去るだけじゃない――現実そのものを解体しようとしているんだ。」


胸の奥が氷のように冷たくなった。息が詰まる。「…そんなの、ありえない…!」声が震えた。「まだ… まだ時間があるはずだった!」


新たな揺れが私を襲い、体勢を崩しかけた瞬間、ダイチの腕が素早く伸び、私を支えた。その手はしっかりとした力強さを持っていて、私を安心させた。でも、彼は迷うことなく私の手を引き、廊下へと走り出した。


迷っている時間はなかった。


薄暗い廊下を駆け抜ける。非常灯が赤く脈動し、壁に血のような影を落とす。施設の自動警告システムが、無機質な声で告げる――「壊滅的崩壊が迫っています。」 遠くで金属が軋む音が聞こえ、恐怖が背筋を駆け上がった。


息が切れそうになりながら、私は叫んだ。「ダイチ、どこへ行くの!?」


「制御室だ」彼は短く答え、速度を緩めることはなかった。「もう、止める方法は一つしかない。」


その言葉に、全身が冷たくなる。「…たった一つ?」 でも、心はすでにその意味を理解していた。


廊下の先に現れたのは、外の破壊から唯一無傷の部屋だった。埃っぽく、静かで、時間が止まったような場所。壁に並ぶモニターは弱々しく点滅し、まるで過去の亡霊のように揺れていた。


ダイチが先に足を踏み入れた――そして、その瞬間、何かが… おかしかった。


私は戸口で足を止めた。説明できない圧迫感が胸を締め付ける。「ここで… 何をするの?」 声が小さくなる。


ダイチは振り返った。その表情は読めなかった。でも――次の瞬間、彼の瞳がわずかに和らぎ、私は足元が崩れ落ちるような感覚を覚えた。


「ここにいてくれ。」彼の声は静かで、優しかった。まるで私を眠らせるように。

「君なら、安全だ。」


心臓が跳ね上がる。違う。違う。違う。


私は彼の腕を掴み、爪が袖に食い込む。「いや…」 声が震える。指先が震える。「ダイチ、やめて… 行かないで…」


彼はそっと私の手を包み、優しく指をほどいていく。その仕草が、痛いほどに優しかった。「行かなくちゃ、イズミ」 彼は言った。その声には悲しみが滲んでいた。「これしか… 方法がないんだ。」


涙がこぼれる。「そんなはずない…!」声が詰まる。「私たちはいつだって別の道を見つけてきた… 一人で背負わないで…!」


彼は微笑んだ。苦く、優しく、切なく。

指先がそっと頬に触れ、涙を拭った。


「もし他の道があったなら…」 彼は囁いた。「迷わず、それを選んでいる。」


膝が崩れ落ちそうになる。私は必死に彼の服を掴んだ。

「もう、二度と失いたくないんだ…」 しゃくり上げながら、声を振り絞った。「お願いだから、ダイチ…!」


彼はそっと額を合わせた。その温もりが、私の崩れそうな心を必死に繋ぎ止める。

「君は思っているよりずっと強いよ。」


私は首を振った。涙が彼の肌を濡らす。

「強くなんてなりたくない… もし、それがあなたを失うことなら…!」


背後で、ドアが軋んだ。機械音が鳴り、ロックがかかる。


「待って…」 声が割れた。「いや、いや、やめて…!」


ダイチの指が、私の手からすり抜ける。


その瞳に浮かぶのは、最後の覚悟。


パニックが全身を駆け巡る。「約束したじゃない!」叫ぶ。「一緒に方法を探すって…!」


彼は私の手を取り、しっかりと握った。「努力すると約束した。でも… もう時間がない。」


「いや――!」叫びが嗚咽に変わる。「置いて行かないで… 行かないで…!」


彼が後ずさる。


そして、ドアが閉まった。


私は叫びながら、鉄の扉を叩いた。「ダイチ!!開けて!!お願い!!」涙が止まらない。「行かないで…!」


――沈黙。


そして、扉の向こうから――


「ごめん。」

震える声が届いた。「ずっと… 愛してるよ。」


そして、彼は消えた。


涙の向こうで、アーティファクトが強く光る。


世界が震える。


すべてが、光に飲み込まれていった。


そして――

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