6
そんな事があり俺はいつもの東京第十六ダンジョンの第一階層『スライムの大洞窟』に来た。
いつも通りスライムを探して探索を進める。
「おっいた」
早速スライムを発見。
スライムには何の罪もないのだが、今の俺は心の中にモンスターを飼っているのだ。
少し前の鬱憤をスライムにぶつけるように手にした金属バットを振りかぶると─
「おっるぁあああーーーーーーーっ!」
あの時、この金属バットで金利の頭を……。
そんな思考が一瞬でも頭の中に浮かんでいたのは事実だ。
しかしそれをしたら絶対に婆ちゃんが泣く。
まあどうせビビって動けなかった俺だから、そんな真似が本当に出来たか怪しいがな。
そんな諸々の感情を込めた全力のフルスイングがスライムを捉えた。
重い音と共にスライムはまるでホームランボールのように吹き飛んだ。
「…………マジ……か」
吹き飛んだスライムはそのまま高い洞窟の天井に激突して消滅した。
俺は初めてストレングスシールの効果を実感した。
あんなシール一つでこれかよ……。
完全にチートアイテムじゃないか。
だがこれならもうスライムに遅れをとる事はなさそうだ。
ならやるべき事は一つ。
それはレベル上げだ。
ダンジョンの中ではステータスオープンと念じると【鑑定】の時みたいに四角いB4サイズのウィンドウが宙に現れて自分のステータスを見ることが出来る。
ステータスオープン。
名前:明道ワタル
種族:人間
職業:高校生
レベル:1
生命力:5
精神力:3
魔力:0
筋力:5
耐久:5
俊敏:5
スキル:【鑑定】【危険感知】
これが俺のステータス、魔力ゼロのスキルなし。
完全なる雑魚底辺のステータスだ。
けどスタートの能力なんて始めからどうでもよかった、大事なのはここからどうなるかだ。
取り敢えず今後は瞬殺出来るこの『スライムの大洞窟』で少しでもレベルを上げて更に下の第二階層『角ウサギの大森林』に近いうちに行くと決めた。
そして俺は四体目のスライムをホームランしたタイミングで初めてのレベルアップを経験した。
レベルアップすると勝手にステータスウィンドウが現れてしっかり報告してくれるのだ。
名前:明道ワタル
種族:人間
職業:高校生
レベル:1→2
生命力:5→10
精神力:3→6
魔力:0→1
筋力:5→10
耐久:5→10
俊敏:5→10
スキル:【鑑定】【危険感知】
おおっレベルアップ一つで結構ステータスって上がるんだな、もちろんまだまだ雑魚だろうが一桁から二桁になった幾つかのステータスを見ると何となく安心する。
ぶっちゃけHPみたいな表記はないがその代わりらしき生命力が一桁だとモンスターからの攻撃とかじゃなくて転んだだけでゼロになって死ぬとかありそうだったからな。
まあステータスの数字が減るなんて聞いたことないけど。
この調子なら明日には『角ウサギの大森林』に言っても問題ないか?
よしっものは試しだ。
そんな訳で俺は今、ダンジョン第二階層『角ウサギの大森林』に来ている。
例のストレングスシールを金属バットに貼ってスライムを倒してみた結果、予想以上に攻撃力が上がってスライムを軽くホームラン出来るようになったので少し調子に乗っている事は自覚している。
だがこれ以上スライムとは勝負にならないと考え直ぐに第二階層に下りた。
その判断は悪くないはず、流石にずっとスライム相手だと次にレベルアップするときは夏休みが終わってる可能性すらあるからだ。
次のレベルアップまでの経験値テーブルが判らないのは少し残念だ、そこらへんまでゲームっぽい仕様が良かった。