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 金利はこの歳で仕事もせずに親族を回って金を無心して生きている。

 誰も相手にされなくなってからはやたらと婆ちゃんの所にくるようになった。


 俺が小学校くらいの時なんかほぼ毎日に来てこんな事をしていたのだ、本当に信じられない人間だ。


「……金利、もう二度とここには来ないでと言った筈じゃろうが!」


「なんだよつれねぇなぁ~せっかく可愛い息子が親の顔を見に来てやったのによ~」


「いいからさっさと帰りな!」


 日頃は笑った顔以外見たことのない婆ちゃんもこの男が来たときだけは怒りを露わにする。

 そんな婆ちゃんを前にしても汚い笑顔でヘラヘラと笑うこの金利は当たり前のような顔をして婆ちゃんが住んでる部屋に向かって歩き出した。


 コイツは婆ちゃんが何を言っても無視して勝手に部屋に上がり込み物色、そして金を見つけると平然と持って行くのだ。


 そして金がないと怒り狂い部屋を荒らす。

 爺ちゃんが元気な時はもっと腰を低くして金を借りていたらしい。

 しかし爺ちゃんが死んでからは完全に開き直り今みたいな感じになったとか。


 当然借りた金なんて一円も返す気もないのだろう、その話をする事すらなくなった。

 正真正銘の人間のクズだ。


 俺の両親もこのクズについては知っている。

 しかし……何もかも見て見ぬふりをしている。

 俺の両親は毒親……ではないと思っている、子供に暴力とか暴言を吐いたなんて記憶はないから。


 けど、この金利みたいに本当に見たくないクズや感知したくない物事、それらの面倒事を見ないことにして何もかもを後回しにする悪癖があった。


 両親が実家に距離を置いて禄に顔を見せないのもそんな感じだからだ。

 そこは……そこだけは俺は両親を好きになれなかった。


 そしてそれは俺も同じだ。


「ワタルちゃんは……もう行きなさい」


 婆ちゃんの言葉に小さく頷く事しか出来ない。

 俺は父親にも禄に反抗出来ない人間だ、その兄に対してそれがこんなクズでも文句の一つもいうことが出来なかった。


 ただボ~と突っ立って見てる事しか出来ない。

 まさに俺はあの両親の息子なんだと改めて自覚する。

 ああっ本当に情けなくて、嫌になる。


 そんな俺をヘラヘラとクズが見て言った。


「どっか出掛けるのかワタル、まあそこに突っ立ってるだけじゃウドの大木みたいだしな。それよりは少しは動けよ? ククク……」


「………………」


 俺が夏休みにいきなり探索者になりたいと決めた理由は二つある。

 一つは割愛するが、もう一つはこれだ。


 探索者になって強くなりたい、心身共に。

 そして……。

 ともかく俺は現状も今の自分も嫌いだ、だから何とかしたいと思って探索者になった。


 俺は金利のクズに笑われながらも背を向けてダンジョンに向かう。

 待ってて婆ちゃん、探索者として少しでも強くなれたらそんなクズ俺が……!


 婆ちゃんを見捨てる真似をした情けなさ。

 クズに笑われた怒り。

 自らへの嫌悪。

 多くの感情が俺をダンジョンへと向かわせた。


 いつか必ず俺が全部を解決してやる!


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