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 そこにきてこのダンジョンポータルである。

 俺が調べた結果、このダンジョンポータルはソロで第一階層『スライムの大洞窟』や第二階層『角ウサギの大森林』辺りをソロでうろつく探索者の前に低確率で出現するらしい。


 普通に考えたらトラップ、しかしこれもまたトイレや安全エリアと同様に俺たち探索者の為の物だとしたら?


 かな~り都合が良い、或いは厚かましい考えなのは理解している。

 しかしそれでも俺は試して見たいと思った。

 それにも理由がある。


 俺たち探索者は初めてダンジョンに行くと自身のステータスを見れるようになる。


 その時に必ず【鑑定】のスキルともう一つ完全にランダムで一つスキルを得る事が出来るんだ。


 ここで最強スキルで一発逆転!

 と言う話は聞かないので得られるスキルの優秀さには上限があるらしいけどな。


 そんで俺が得たスキルが【危険感知】だ。

 モンスターの危険度や力量を推し量るのにも使えるらしいまあまあ使えるスキルだとネットには載っていた。


 それは俺が探索者となりこの【危険感知】のスキルを得た日の夜。

 暇つぶしにこのスキルを使って何となく動画サイトに上がるダンジョン配信者の動画を見た事が切っ掛けだった。


 なんと画面越しでも【危険感知】のスキルは効果を発揮してこのモンスターはマジで強い、絶対に勝てないと言うのが分かったのだ。


 それはもう笑ってしまいそうになるくらいコイツには勝てないなってのがあったり、コイツには工夫次第でいけないかってのもいたりと面白かった。


 単純にスキルを発動する練習のつもりで何となく他の動画でも試してみていたのだ。


 それでこの三つ首の黒竜の動画を見つけた。

 しかし【危険感知】にはさほど脅威というのが感じ取れなかったのだ。


 纏う気配、押し潰されそうなプレッシャー。

 心臓が早く脈打つのが分かる。

 全身が「早く逃げろ」と言ってくる。


 しかし。

 俺のスキルだけは黒竜に対して反応しなかった。


「…………」


 俺は金属バットを握り、前に出る。

 三つ首の黒竜が目覚めた。

 俺たちの視線が交錯する。

 いくぞ!


 俺は駆けだした。

 三つ首の黒竜は首の一つが伸びて俺に向かってその大きな口を開く。

 そこでドラゴンブレスをしてれば俺は即死だったんだがな!


 そしてその攻撃のスピードは……かなり遅い。

 思った通りだ。

 この黒竜はソロの雑魚探索者でも倒せるように弱体化されてる、或いは─


「おっるらぁああーーーーーーっ!」


 俺は渾身の力を込めて金属バットを黒竜の横っ面に叩き込んだ。

 次の瞬間、黒竜は悲鳴を上げた。


 人間の、それもこんな駆け出し探索者の攻撃がドラゴンに通じる訳がない。


「つまり、この黒竜は……偽物だ」


 三つ首の黒竜の身体が白い煙に包まれる。

 そして煙が晴れると、そこには白いスライムがいた。


 メタモルスライムか。

 自身より強いモンスターに化けて相手を威嚇して追い払うスライムの特殊個体だ。

 まさかこんなのが黒竜に化けていたなんてな。


 メタモルスライムは光となって消えた。

 本来なら核石が残る筈だが何もない、まさか魔法やスキルで生み出された本当に実体のある幻の類だったのか?


 まさかのお宝なしってか? と考えた俺の目の前である変化が起こる。

 メタモルスライムが消えた場所に魔法陣が出現し、その真ん中にフードを被った魔導師みたいな格好をして女性が現れたのだ。


 年齢は不明、フードで顔も見えない。

 しかしフードから見えた髪の毛は濃い紫色をしていた、そして顔が見えないのに女性だと分かったのはとある部分がやたらと主張していたからだ。


 あのフードとかローブとかの上からでもハッキリと分かるレベル……只者でないと俺は瞬時に理解した。


 しかし流石にこれは予想外だった。

 更に言うと女性魔導師は半透明だ。


「あっあんたは一体……」


『殆どの恐怖とは自らの内より出でる虚像である、よくぞその虚像に囚われることなく一歩を踏み出しました。その勇気を称え、ささやかながら褒美を与えましょう』


 それは予め録音された音声みたいだったが、綺麗な女性の声だった。

 言うだけ言うと半透明の女性魔導師は消え、その後には魔法陣だけが残った。


 するとその魔法陣からまた別の何かが出現する。

 それは木製の宝箱だった。


「ウソ……褒美ってマジなのか、やったぁ!」


 ダンジョンポータルの先、黒竜を何とかしたら何かしらレアアイテムとか手に入るかもと思ってはいたが、まさか本当にこんな展開になるとは。


 俺はめっちゃくちゃ喜んだ。

 しかし小躍りしたい気分だが早まってはいけない。

 まずは宝箱に罠がないか調べないと。


 スキルは意思を集中させ、頭の中で唱えると発動出来る。

 俺は【鑑定】スキルを発動させた。

 俺の視界にB4サイズの四角いウィンドウが現れる。


【宝箱:中に魔力を秘めた物が入っている。罠は仕掛けられていない】


 よし、なら開けてもいいな。

 俺は宝箱を開けた。

 中にはカードが二枚とブーツか二足、そして『S』というロゴのシールが入っていた。


 早速【鑑定】を使ってみる。


【魔法カード:それぞれ『封印』と『契約』の魔法が付与された魔法のカード、どちらかを使えば残ったもう片方は消滅する。】


 おおっなんかこれは使うタイミングを慎重に考える必要が有りそうな魔法のアイテムだな。

 見た目はトレーディングカードとかと同じくらいのサイズのカードだ、しかしイラストとかはなくそれぞれ謎の象形文字みたいなのが書かれている寂しいカードだ。


 多分だけどそれぞれ契約と封印って書いてあるんじゃないだろうか……知らんけど。


【トラベリングブーツ:徒歩や走る時の疲労をかなり軽減してくれる魔法のブーツ。】


 これは良い、俺も高校生なんだが帰宅部だからダンジョンの通路を歩くだけでも普通に疲れる。

 それを軽減してくれるのならその効果は大きいかも知れない。


【ストレングスシール:装備強化アイテム。このシールを貼った武器はその攻撃力が上がる。】


 ただのシールかと思ったらこれも魔法のアイテムっぽいな。

 使うなら俺の場合は金属バットか?

 攻撃力がどれくらい上がるのかにもよるがついついこういうのには期待しちまうんだよな。


 どれもこれもなんか良さそうだ。

 少なくとも俺の探索者ライフ、そこそこのスタートダッシュを決めれた予感がする。


 俺は意気揚々とそれらのアイテムを手にしてダンジョンポータルに乗った。

 『スライムの大洞窟』に戻った、振り返るとダンジョンポータルは消えていた。


 役目を終えて消滅したのかな。


「……ありがとう、このアイテムは大切に使わせてもらいます」


 多分これらを用意してくれたのはあのフードの女性魔導師なんだろう。

 なら感謝しないとな。

 俺は心の中で女性魔導師に感謝して一度家に帰った。


 そして三日後。


「……………………」


 俺の目の前にはダンジョンポータルがあった。

 ダンジョンポータルってあれ一個じゃなかったのかよ!

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