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「これって……ダンジョンポータルだよな?」
ダンジョンについて分かってる事は殆どないと言われている。
そんなダンジョンには時折変わった現象が起こるのだ、その一つがこれ、ダンジョンポータルである。
何の理由もなしにダンジョンの何処かに現れ、時間が経つと消える白い光の渦。
それに触れるとダンジョンの何処かに飛ばされるという。
そこにはとんでもないお宝があるとかえげつない強さのユニークモンスターがいるとか言われている。
確か以前、配信で稼いでる探索者がダンジョンポータルを探索中に見つけて視聴者に言われてポータルを使った。
中にはとんでもなく強そうで大きな三つ首の黒竜がいた。
幸いその黒竜は眠っていた、そしてダンジョンポータルは使った後もそこに残っていたので再びそれを使い生還したそうだ。
そんな訳でダンジョンポータルは使っちゃダメって言うのが俺たち探索者の当然のルールとなった。
ちなみに、このダンジョンポータルは何故かソロでダンジョンに来ている探索者の前にしか現れないとか、ある一定の階層まで行けるまで強くなると現れないとか言う噂があるが真偽は不明だ。
しかしダンジョンが現れて数十年、それだけの時間が経てばその手の噂にもある程度の信憑性がつくもんだ。
そして俺はこのダンジョンポータルについて、一つの仮説を考えていた。
俺は今からこのダンジョンポータルを使う。
無論単なる探索者殺しのダンジョントラップだったら俺が死ぬけどな。
しかし俺の仮説が当たっていれば……。
「どのみちこのままダンジョンに来て探索者を続けても夏休み中にダンジョンで一発当てるなんて無理な話だ……だったらここは一つ、賭けに出てみるしかないよな」
そうっ俺はこのダンジョンポータルが現れる可能性に賭けて連日ダンジョンに挑める夏休みに行動を開始したんだ。
俺はダンジョンポータルの上に乗った。
すると視界は一変し、次の瞬間にはさっきまでいた洞窟とは全く違う場所に来ていた。
そこは何か大きな建造物の中。
見上げる程に高い天井、そして左右には石柱が立ち並んでいて出所不明の薄明かりがその内部を照らしていた。
そしてその奥には……いた。
三つ首の黒竜だ。
人間の何十倍はある巨軀とまさにドラゴンといった見ため。
普通に考えたら俺なんて到底勝ち目のない存在だ。
しかし俺には仮説があった。
その仮説とは、この黒竜、或いはあのダンジョンポータルとはいわゆる救済措置の類ではないかと言うものだ。
普通なら信じられない話だが、このダンジョンと呼ばれる建造物には俺たち探索者の為にあるとしか思えない施設が多数ある。
例えばトイレと安全エリアだ。
『スライムの大洞窟』には普通なら有り得ないはずの木製の扉が洞窟の壁に忽然と設置されている場所がある。
その扉の向こうは安全エリアとなっていてダンジョンのモンスターは入ってこない。
更に、その安全エリアの奥にも扉がありそこには公園とかにあるような数人分の水洗トイレが設置されているって訳だ。
どうだ? 意味が分からないだろう。
他にもゲームとかなら同じみだがわざわざ下に進めば敵が強くなり、浅い層のモンスターは本当に雑魚ってのも普通なら有り得ない話だと俺は思っている。
まるでこのダンジョンは、本当に探索者、つまりは人間を成長させる事が目的なのではないかとすら思ってしまうんだよな。
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