19
角ウサギの群れの怒濤の攻撃をリディはほぼ完璧に受けきった。
ほぼって言うのは俺が顔面に食らったので完全に完璧じゃなかったからだ。
まあそれは俺が雑魚だからであってリディに非はないんだがな。
俺たちを通り過ぎた群れはそのまま止まる事はなくある程度走ると方向を徐々に変えていきこちらに向き直ろうとしていた。
やはりロックオンした相手を逃がす気はないって事か。
「リデありがとう、助かった」
「ああっこの程度……ワタルその顔はどうした!? 鼻血が出てるぞ!」
「さっきの角ウサギにやられたんだよ」
「なんだと……? おのれ角ウサギめ、許さん!」
リディがめっちゃ怒ってる。
俺が鼻血を出したのがそこまでなのか?
鼻血なんて出ている事すら気付かなかったのに。
「リディ、俺の鼻血なんかより次の攻撃が来るぞ!」
「……ああっ次の攻撃なんてさせない。これで殲滅する! 【神雨の光剣】!」
リディのスキルが発動する。
見ると空中に以前見た光が剣の形となった光剣が出現してした、その数もぱっと見では多すぎて分からない、少なくとも数十本以上はある。
リディが杖を振るうと迫ってくる角ウサギ軍団に光剣が降り注いだ。
光剣が閃光へと変わったのかと思う程の高速攻撃だ。
角ウサギたちは全く回避行動もとれずに貫かれていった。
時間にして数秒あるかないか、たったそれだけであの角ウサギ軍団が消滅した。
後には無数のえぐれた地面の穴と角ウサギの核石だけだ。
圧倒的だ、圧倒的過ぎる。
強い強いと分かっていたつもりだったが実際にそのスキルを使った攻撃を目にすればリディの力は俺の想像なんか容易く超えたレベルだったことがハッキリ分かった。
やっぱりあの時、俺がリディに攻撃されて無事だったのは本人が語った通り操られた自分を自我で抑えていたからだと言う説明の通りなんだろう。
じゃなかったら本来俺なんてこの角ウサギと同じように一瞬も保たずに瞬殺されていたんだ。
その事実を改めて理解した俺は再度ビビる。
そしてそれ以上にそんなチート過ぎるリディが俺の仲間になってくれた事に深く感謝した。
「やったなリディ、角ウサギだからってあの数をこんな簡単に全滅とか聞いたことないぞ」
「スキルの相性もあるだろうが、ああ言う数にものを言わせてくるタイプのモンスターなら私に任せてくれ」
心強い言葉だ、リディは元から凛々しい感じの金髪美少女なので一つ一つの仕草と言葉が絵になる。
俺も探索者として成長すればリディのようになれるのだろうか……いや、多分無理だな。
そもそもレベルが上がってもイケメンになれる訳じゃない、それとこれと話が別なのだ。
人間は……そんな便利にはなれないのだ。
……気分が落ち込み過ぎた、もっと別の話をしよう。
「リディ、流石にイレギュラーな事が起きたし今日はもう引き上げないか?」
「分かった、なら先ずはその怪我を治させてくれ。【ヒーリングライト】」
リディのスキルが発動すると俺の顔面の痛みがすぐに消えた。
触ってみると鼻血すらもう止まっているようだ、彼女の回復スキルの初の使用がこんな事で申し訳ない気分もあるが、本当に怪我くらいなら一瞬とは。
雑魚殲滅攻撃スキルと回復スキルの両方を持つなんて、やはりリディはスーパーチートな神……そう女神様的な存在なんだろう。
ありがたや、ありがたや。