16
「行くぞっ!」
そこは東京第十六ダンジョンの第二階層『角ウサギの大森林』だ。
リディを仲間にした俺は、その翌日もダンジョンに繰り出していた。
今日も今日とて角ウサギ相手にレベル上げをしている、角ウサギは三羽、先ずは先手の一撃で一羽を倒した。
残り二羽の角ウサギは同時にジャンプし、俺の胴体に風穴を空けてやろうと額の長く硬そうな角を俺に向けている。
そんなので突き刺されたらジャージしか着ていない俺はシャレにならないダメージを受けるので絶対に受けたくない。
俺はその場から賭けだして片方の角ウサギへと攻撃に移る、場所さえ移動すれば同時攻撃は躱せるし片方だけなら金属バットで叩けば良いだけだ。
「おりゃああーーーっ!」
金属バットを振り下ろし、角ウサギの顔面をぶっ飛ばす。
角ウサギは野球ボールのように地面を転がった。
次だ、俺が振り返ると既に最後の角ウサギが再び突撃の構えを見せていた。
俺は一瞬の間に呼吸を整えて身構える。
バットは地面に先がつくような低い位置に。
角ウサギがジャンプして再び俺の胴体を狙ってきた、狙いをつけやすいのは分かるが角ウサギの大きさは普通のウサギより少し大きいかなってレベルだ。
それなら足を狙ってダッシュで突撃した方が俺としてはやりにくい、わざわざジャンプして叩きやすい位置に跳んでくる角ウサギに少しだけ残念な生き物を見る目を向けてしまう。
まっ倒すけどな。
「これで……終わりだぁあーーっ!」
低い位置から振り上げるようにフルスイング。
跳んできた角ウサギをホームランした。
吹っ飛んだ角ウサギを含め、全ての角ウサギが消滅して核石だけが残った。
すると俺の胸ポケットから一枚のカードがふわふわと浮いて現れた。
そのカードから女性の声がする。
「見事だワタル、数が多い相手でも冷静に対処すれば案外どうにかなっただろう?」
「ああっけど先手が取れたから良かったけど三体同時に攻撃されてたらどうだったか……」
現状の俺のレベルだと角ウサギを同時に二体相手にするのがギリギリだと思った。
夏休み初日から今日で十日目、今後は無理せずに行こうと考えている。
リディを仲間にした俺だが、その過程では本当に死ぬかと思った。
やはりダンジョンは甘い場所じゃない、ちょっとした気の緩みで俺みたいな木っ端探索者なんて簡単に死ぬような危険な場所なんだ。
当のリディに消されそうになった事でそれを強く自覚した俺はその事を肝に銘じて今日もダンジョンに来ている。
「ワタル、そろそろ私も出て来ていいか?」
「ああっ出て来てくれて良いぞ」
俺がそう答えるとカードが光を纏った。
そしてその光は形を変えていき、一人の少女になった。
リディは現れると杖と翼を出した。
どちらも彼女の意思一つで現れたり消えたりするみたいだ。
「それじゃあ今日は部屋で話した通り、リディの能力を見させてくれ」
「分かった、全力でこなしてみせよう」
彼女は俺と契約した存在、サーヴァントだ。
サーヴァントとはダンジョンのモンスターだったりファンタジーゲームにでも出て来そうな姿と装備をした様々な種族の戦士が探索者と魔法(と言うか殆ど場合はダンジョンアイテム)によって主従契約をした存在だ。
昨日スマホで調べた。