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13 リアディーナの誓い

 我ながら、かなり問題のある発言をしてる自覚はあった。

 しかし全ては事実なのだ。


 今後の事を考えれば契約を結び、自分のサーヴァントとなった存在がどう言う状態にあるのかをちゃんと説明しておく必要があると考え私は話をした。


 当たり前だが目の前の少年はかなり驚き、そして何を言ってるのか理解したくない、といった表情を浮かべて私を見ていた。


 はねっ毛のある少し伸びた黒髪と同じ色をした瞳、あまり自分を着飾ったり細かい手入れなどをして良く見せようとするタイプではなさそうだ。


 しかしけったいな服装はしているが肌のツヤや顔色から見てかなり健康的ではあるみたいだ。

 健康的なのは良いことなので良かった。


 もちろん私はその後に何故そんな事になったのかを事細かに説明した。

 記憶が無いと言ってもつい先程まで……あなたを襲おうとしていた記憶くらいならあると。


 逆に言えばそれ以前の記憶すら殆どない訳だが。

 当然、目の前の少年を何故襲ったのかすら今の私自身には分からない。

 なら少年の立場で考えれば、記憶が戻るなりすればまた私が襲ってくるかもと考えるだろう。


 そこはしっかり否定した。

 その理由は私の傍に置いてある仮面だ。

 私は砕けたその黒い仮面の欠片を手に取り少年に見せてその理由の説明をする。


「その仮面の欠片がなんだってんだ?」


「私自身に関する記憶は確かにないのだが、この黒い仮面や自身のスキルなどについてならある程度分かる事もある」


 少年は私が手にした仮面に【鑑定】のスキルを発動した。

 頭の回転も悪くないみたいで助かる。

 そしてこの仮面の能力を知った少年は顔をしかめてた。


「……一体なんなんだよその仮面は」


「ああっこの仮面は一種の洗脳の為の魔道具だ。相手に無理矢理にでも着けさせればその自我を封じ込め自らの手足のように操り、従わせる事が出来る」


 とても邪悪で穢らわしい魔道具だ。

 こんなものを使った相手を我が主などと呼んでいた過去の私に鳥肌がたった。

 どう考えても私はその者に洗脳されていたのだろう事は用意に想像出来たからだ。


「つまりアンタは操られていたから俺を襲ったと?」


「その通り、そしてその支配は完全に解かれた。なら私があなたを襲う理由など例え記憶が戻ってもありはしないだろうと私は考えている」


「そうはいってもな……ならなんでその洗脳とやらは解かれたんだ?」


 少年の疑問はもっともだ。

 これは完全に私の予想でしかないのでそれを説明した。


 そもそもこの仮面は装着者を支配し操る事だけに特化した魔道具だ、恐らくだが本来の私を支配出来る魔道具などという物はこの数多の異界と繋がるダンジョンですらまず殆ど存在しないだろう。


 だからただでさえ貴重な魔道具を更に一部の能力を特化させ改造を施した物を使われた可能性が高い。

 つまり洗脳に特化した魔道具には新たに洗脳……いや意識に介入する別の力への対抗策までは用意されていなかったんだ。


 故にあの『契約』の魔法が付与されたカードが発動した時、契約を結ぶ為には私の自我を目覚めされる必要があったのでカードは抑えられていた私の自我を目覚めさせた。


 この忌まわしい仮面を破壊する事で。


「そんな上手い話が」


「あったのだろう、元からあまり記憶はないが抑えられていたと言っても自我はあったんだ。あなたに放った光剣が全て外れたり、最期の一撃が紙一重で止まったりしただろう? アレはかつての私に出来た最期の抵抗だったんだ」


「…………マジか~~」


 そして仮面から僅かに解放された私には二つの選択肢があった。

 その契約を拒否し、再びこの仮面の支配下となり暴力を振るう人形となるか。

 全ての記憶と力の大半を失い、目の前の非力な人間の……彼のサーヴァントとなるか。


 私は刹那の時すら迷わなかった。


「……あなたの名前を教えてくれるか?」


「俺? 俺はワタル、明道ワタルだ」


「私の名はリアディーナ、ワタル、あなたと主従契約を結び、サーヴァントとなりあなたをマスターと定めし者……」


 サーヴァントととして契約する手前の段階でその者とマスターとなる者はお互いの心にある記憶が情報となって与えられる。


 どんな性格でどんな人間性を持つのか、言葉で幾ら嘘偽りを並べても無駄なようにだ。

 本来は契約を結ぶ時に碌でもない手合いに騙されて契約をしない為にあるものだ。


 しかし私には記憶がない、故に少年には殆どその情報が与えられる事はないだろう。

 ならばどうするか、それは今後の私の働きをもって証明するしかないだろう。


 そして私にはその覚悟がある。

 何としてでもイカレた金髪ヤバ女と言うイメージを払拭したいという強い覚悟が!


 私は目の前の少年に、私に再び自由を与えてくれるという奇跡を起こしてくれた存在に最大限の礼を示す。

 そして契約の最期に、誓いの言葉を口する。


「我が力はあなたの剣に、我が身はあなたの盾に、我が意思はあなたの未来を照らす星となり、この身が消え去るまで共に在ることをここに誓いましょう」


 これは多くを失った、今の私の全てを賭けた誓い。

 例え記憶が戻ろうと、かつて私を支配した存在が現れようと、私はこの少年の側に立ちそして戦う。


 その違えることなき絶対の誓いだ。

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