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「…………きろ…………お…………きなさい」


「…………んっんん…………ん?」


 誰かの声がした。

 身体は……痛みとかはない、むしろ頭の後ろ辺りが妙に柔らかく暖かい感覚がするぞ、どうなってんだ?

 まさか俺は本当に死んだのか?


 それが事実なら認めなくなかった、しかしこのまま目をつぶっていても拉致があかないのでゆっくりと目を開く。

 すると俺を覗き込む美少女と目があった。


 流れるようでいて輝くような長い金髪とサファイアって宝石みたいな青色の瞳をした女の子だ。

 少し頭がボ~としてるのか、その子を見た俺は素直に綺麗だと思ってしまった。


 その子は俺が目覚めたのを確認すると微笑んで俺に話し掛けてきた。


「よくぞ目覚めたな、身体の方のダメージは私がなんとかしたから死ぬ事はないだろうとは思ったが……本当に目覚めてほっとした」


「……あっ貴女は一体……誰……」


 俺がそう尋ねると美少女は少し困ったように笑い何かを手に取った。

 と言うか今さら気付いた、俺はどうやらこの子に膝枕をされている。


 顔の近さとかアングルとか何よりこの後頭部の感触からして間違いないだろう。

 一体何故、どうして俺はこんなハッピーな状況に陥っているだろうか。


 ついさっきまで金髪ヤバ女に地獄を見せられていた筈なのに。

 まさかアレは……全て夢?


「私が誰か……それはこれをみせれば分かるか?」


 そう言うとその子はヒビ割れて一部が砕けた黒い仮面を俺に見せてきた。


 …………………………え?


「それってあのヤバい金髪女がしていた……」


「そ、そのヤバい金髪女が…………私だ」


「「………………………………」」


 お互いに無言となる。

 そして次の瞬間俺は膝枕から飛び起きた。

 身体が軽い、死んでなくて良かった!

 しかし今はそれどころでは─


「なーーーーい! こんのイカレてる金髪ヤバ女がっ一体何のつもりだ!? 膝枕くらいで殺そうとした事が無かった事になるなんて思うなよコラッ!」


 俺は飛び起きるのと同時に傍に置いてあった金属バットを手に取り臨戦態勢を整える。

 まあ戦えば瞬殺されるだろうが、だからといって無駄な命乞いなんてのを殺そうとしてくるヤツにするなんて真っ平御免だね。


 俺は金髪の美少女を睨みつけた。

 すると金髪の美少女はあの杖とか翼とかが無いことに気付いた、いつでも出せるのかも知れないがどのみちそれらを出してない。


 それはつまり俺と違い臨戦態勢を取っていないって事だ。

 何でだ?


「あなたの態度がそうなるのも無理はない……しかし少しだけでも私の話を聞いてくれないか?」


 なんか普通に話し掛けてきた。

 ついさっきまで人間風情とか言って問答無用で殺りに来てたあの感じは何処にいったんだ。


 そこで一つ、いや何個か気付いた。

 まずさっきまでの金髪ヤバ女よりも若い、だってあの黒い翼を広げてた頃は見た目から言えば年齢は二十代前半くらいのまさに絶世の美女って感じだった筈だ。


 それが今は金髪の美少女、つまり何歳か若返っていて俺と殆ど同じくらいに見える。

 服装はあの肩とか胸元が露出してスリットの入っていて金細工が星々のように散りばめられた黒いドレ……ん? 何故か青いドレス姿になってるぞ。


 どうなってんだ?

 あとちなみに俺は今年の夏休み終わりで17歳となる予定だ、その俺と年齢が同じになってるのもどう言う事なのか不明だ。


 あと若くなってるので身長も俺と大差なくなってる、あのかなり接近した時に気付いていたのだがあの金髪ヤバ女は身長が普通に百八十センチ以上あって外国人のモデルみたいだった。

 今は俺より少し低いって所だ。


 確かに先程まで嫌と言う程感じていた、敵意とか殺気、そう言うのを全く感じない。

 だがそれは俺が探索者として雑魚過ぎるが故に殺気とかも隠されれば多分全く分からないからという可能性もある。


 何故なら目の前の相手は俺なんぞ手も足も出ないとんでもないヤツだからだ。

 その上に口まで上手かったらお手上げだぞ。

 俺はこの美少女の話とやらを聞くだけでも身の危険がある可能性を分かっていた……。


 分かってはいるのだが。


「……はぁっまあ俺を消すならとっくに消してるしな、まあ……話くらいなら聞くだけ聞くよ」


「ありがとう、まず最初に言っておくことがある」


 我ながら俺は美少女とか美女に甘いのかも知れない、普通なら話とか知るかと言って逃げるのが正解だと分かってるのに。


 まあ逃げ切れるというのかって話は別にしてだけどな。

 そしてどんな話をしてくるのか、一応は警戒しつつその話に耳を傾けた俺は──


「実は……今の私には殆どの記憶がないのだ」


「…………………………あ?」


 あまりにも予想の斜め上をいく発言に素っ頓狂な声を上げてしまった。

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