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薄暗い洞窟の中を俺は一人で進んでいる。
装備は金属バット、上下青のジャージに軍手、スニーカー、そして背中にはペットボトルや軽食が入った小ぶりなリュックサックだ。
俺は駆け出し探索者としてダンジョンに来ていた。
ダンジョン、もう何十年も前に突然人類の前に現れ様々な事で当時の人々を驚かせた謎の地下建造物である。
無限に広がるかのような広さとそこに当たり前のように跋扈する怪物たち、当初の日本ではまさに禁足地的な扱いだったそうだ。
しかしその怪物たちは倒せる事が分かり、更には倒すと光となって消え、その後に残る核石と呼ばれる物質は俺みたいな高校生にはよく分からないが、様々な分野で研究が行われ素晴らしい成果を上げたのだそうだ。
その結果というのか分からないが国の大人たちは一人でも多くの人間をダンジョンに送り、その核石を中心とした資源を地上に持ち帰る存在、探索者を量産しようと躍起になった。
無論ダンジョン探索は命懸けなので昔の戦争みたく徴兵制ではないが、ほかの大半の仕事よりも保険やらの制度が良かったりする。
まあそんなのはごく一部の勝ち組探索者に限った話であって俺みたいなソロでダンジョンの第一階層をウロウロしてるヤツは小遣い稼ぎにすらならないのだが。
改めて自己紹介をするか。
俺の名前は明道ワタル、夏休みに入った事をきっかけに何となく……いや、理由はあるにはあるがここでは割愛する。
とにかく数日前に探索者になった高校生二年生だ。
一応の理由としてはぼっちで全然楽しくない高校生生活を何とかしたいというしょうもない理由で探索者になり、何とか夏休み中に結果を出してクラスのカースト上位に近付けないかと妄想しているカースト下位のモブである。
「あ~楽して強くなりたい、いやっ強くなれなくても良いからモンスターを楽に倒せるチート武器とか欲しい……」
そんなどうしょうも無い本音が口を突いて出て来る。
まあ何か信念とかがあってダンジョンに来てる人間でもないからな俺。
何事も……とはいかないが、自分が興味を持った事には挑戦してみたいお年頃な訳でここにいる。
夏休みに入って六日目、今のところ収穫は素人でも倒せるダンジョン第一階層『スライムの大洞窟』に出て来るモンスター、あの青くてプルプルなスライムを相手に頑張っていた。
スライムの核石を数個ゲットしただけだ。
これ一個で百円。
ダンジョンで稼いでる人間は一日で数十万稼ぐとか言うが本当かよっと思ってしまう。
俺もいつかそうなりたい、六日前に探索者になったばかりの人間には遠すぎる理想だけどそう思ってしまう。
そんな事を考えながら洞窟を進むと新たなスライムが現れた。
俺は手にした金属バットを握り直すと─
「……よしっいくか!」
スライムに向かって駆けだした!
時間にして数時間後、休憩と探索を繰り返しながら俺は今日も一日ダンジョンで時間を潰した。
今日の成果はスライムの核石が五つだ。
この数日で本当に少しずつだが成長してるような気がする、出来ればもう少し稼ぎたいが俺が毎日来てる東京第十六ダンジョンは第一階層はスライムしか出ない不人気なダンジョンなのでスライムを見つけるのも割と大変なのだ。
ダンジョンを適当に歩きスライムを見つけるまで結構に時間を食う、まあその分整地されてない洞窟を歩いたお陰で足腰が若干だが強くなったような気もするから良いか。
何事もプラスに考えるようにしてる。
出来る範囲でだけど。
そしてその日も何事もなくダンジョンから地上に帰ろうとした。
その時だった。
目の前に白く光る渦が現れたのだ。
新作です、現代ダンジョン物で主人公はコツコツ成長していきます。
速攻でざまぁとかはないですがダンジョンでは真面目に冒険する予定です。
ブクマと星評価を貰えると作品が続きますのでお願いします。
しばらくは午後の七時半と十時半の二話ずつ投稿する予定です。