第5章「科学の世界」
[黄金魔力は、生み出す物の構造が分かっていれば良いんだったな。]
(錬金。もしや、物を作るだけではないかもしれないな。)
[あの本によると、構造さえ分かっていれば魔力の許す限り、無制限に何でも作れるそうだからな。]
【であれば、我が栄光を復元する時。】
(確かにそうだな。前世の自分なら、自分が一番知っているに決まっている。)
[ならば、錬金魔法によって作れるはずだ。]
【さぁ、前世に取り残された栄光よ。我に戻るが良い!】
視界が一瞬暗転した後、視界が高くなった。
(成功だな。)
[重しを外したかのような気分だな。]
【そして、栄光は増幅されて取り戻される。】
(この海賊服か。)
[黒一色で、ドクロマークの入った海賊帽。そして、左目の海賊眼帯。]
(懐かしい。これが始まりか。まだ厨二人格の確立する以前の厨二世界。)
「軍!包帯を持って来t...」
(今頃か。)
[遅いな。]
【我が速度について来れなかったようだな。】
「【怪我程度、たいしたことはない。】」
「そ、そうか。」
「ところで、その姿は?」
「【完全なる我が栄光だ。】」
「?、そうか」
(もう少し具体的に説明してやれよ。)
[客観的に見ると、会話が成立していないようにしか見えないが。]
「ひとまず、魔法は使えたようだな。そうしたら、この国について詳しく教える為に、平良家の長男で軍と同年代くらいの平良 勇人さんに来てもらおう。彼はよく街に出たりして、色々と知っているからな。」
(話が飛躍したが、それより何故わざわざ平良家の方から?しかも、幸一と同じく王じゃない世代である長男だし。)
[いや待て、これは名目上の話で、主目的は別にあるパターンでは?]
(そう考えると、目的は源元家と平良家が仲が良いことを民衆に知らしめるためか?)
[そうだとすれば、民衆の中に源元家と平良家の分断を狙う反逆者がいるということか?]
(それか、民衆に見せかけた別の国の特殊部隊的なのが裏工作をしている?)
[ふむふむ。ついにゲームみたいく面白くなってきたじゃないか。これは中々楽しめそうだな。]
【反逆者だろうが、特殊部隊だろうが、我が帝国の為に散るが良い。】
「[分かった。]」
「そうしたら、しばらく待っていてくれ。」
「[把握。]」
(さて、そしたら力を得ないとな。)
[転生者を相手にするなら、錬金魔法は重要だな。]
(それは前世の姿を取り戻すので検証し終わったから、錬金魔法に対抗する何かを生み出すってのが良いか。)
[錬金魔法は、魔力を物に変換する。]
【ならば、その逆をするとしようか。】
(なるほど。魔力から物にできるなら、物から魔力に変換できるはずだと。)
[言うなれば、『反錬金魔法』って所か。]
(なら、まずは適当な的として鉄球を錬金魔法してと。)
【さぁ、我が魔力へと戻るが良い。】
鉄球に向けて手をかざすと、手から電流のようなものが放たれ、鉄球が消滅した。
(ん?電気魔法か?)
【いいや、電気魔法とはこのことを言う。】
右腕に電流が走り、右手から地面に向けて電気を放った。
(当たり前のように使うやん。)
【ふっ、最強の力である電気を我が理解していないわけがないだろう。】
(まぁそうだな。)
(で、さっきの電流のようなのは何なんだ?)
[それは不明だな。]
(ひとまずは、反錬金魔法の効果を確認できたし、良しとしておこう。)
[次は銃の錬金か?]
(そうだな。魔力を使わない強力な武器として、銃は作れるべきだからな。)
[だが、銃の正確な構造なんて把握していないが、どうしたものか。]
【その程度、分割してやれば突破できるだろう。手段は問わない。結果を得るのだ。】
(なるほど。なら、ひとまずは分かるパーツから作るか。)
[一番分かりやすいのは、回転式拳銃だな。]
(ロシアンルーレットやらのリボルバーか。)
[錬金魔法でそのまま作れるのは、銃身に、引き金、シリンダー、弾頭。]
(後は、弾丸に着火する仕掛けと薬莢の火薬だな。)
[魔法を応用でどうにかできるかだな。]
【我が力は、そう単純な物ではない。応用程度、できて当然だ。】
(なら、着火するのは火魔法でいけるな。)
[火薬部分は、風魔法で酸素を生み出しつつ燃料を錬金で作っておけば良いな。]
(そして、できたのを組み合わせて錬金すれば、)
[完成だな。]
(見た目的に、問題はなし。シリンダーも、問題なく回るな。)
[なら、後は撃つだけだが、銃声はどうしようか。]
(リボルバーはサプレッサー付けてもシリンダーとかから音漏れするからなぁ。)
[となると、ここら一帯を防音しなきゃならない訳だが、]
(仕方ない。二重三重で壁でも作って密室にしてみるか。)
細長い空間を残して壁を作り、的を設置した。
(こんな感じで良いかな。)
[サバゲーでも構えは慣れているが、反動と銃声に慣れるのが問題だな。]
(銃声に関してはゲームでも聞き慣れてるし、その音がかなり大きくなった程度だろう。)
【反動程度、我が力であれば無力化くらいできる。】
(そうか。じゃあ、撃ってみるか。)
両手で構えて、的を狙って撃つ。
[中央に命中。狙い通り。]
(反動は無力化できてるな。魔力の力か?)
【反動程度、この世界の我が力で簡単に無力化なり。】
もう1発撃った。
[中央に命中。射撃精度問題なし。]
(エイムも武器性能も十分だな。)
[リロード。]
(次は腰撃ちだな。)
的を作り直して、6発連射した。
[中央2発。中央からの1ずれ3発。2ずれ1発。]
(そんなに射撃精度が良いわけではないか。)
[腰撃ちとしては悪くない程度だな。]
(幸一もそろそろ帰ってくるだろうし、ひとまずこのくらいにしておこう。)
[近距離は魔法で対処するだろうしな。遠距離の精度があれば十分だろう。]
(異世界人相手には問題なく戦えそうだな。)
【ふっ、我が力であれば、その程度できて当然。】
(じゃあ、反錬金魔法で壁を壊すか。)
「軍、帰ったぞ。」
(お、ちょうど良いタイミングで帰ってきたな。)
[このゲームは具体的にどんな設定なのか。見させてもらおうじゃないか。]
【さあ、これが我が帝国の一歩となるのだ。】
ポケットに銃を入れて、玄関の方へと移動する。
「軍、こちらが平良家長男、平良 勇人さんだ。」
「ご紹介に預かった通りです。よろしくお願いします。」
「[こちらこそ、よろしく頼みます。源元家長男の源元 軍です。]」
(流石、ゲームであるようなセリフは完璧だな。)
[もちろん。]
そして、居間に場所を移して、机を囲んで座る。
「それで、軍さんに町を案内する前に、何があるかを口頭で説明しておこうと思います。」
(あくまでも、建前はそれで行くつもりなのか?)
[伝えずにやった方が、自然感は出るということじゃないか?]
【ふんっ、我が力を舐めたものだな。1発入れてやるとしよう。】
「【建前のままで行くつもりか?盗み聞きしている奴も居ないだろう。本来の目的を話したらどうだ。】」
「・・・」
「何を言ってるんだ?軍。」
(平良家長男の方は反応からして演技でもなさそうだな。)
[幸一の方はポーカーフェイスを保ってるか。長年の経験って奴か?人狼で戦うことになったら面倒そうだ。]
「【ふむ。まぁ良いだろう。】」
「勇人さん、気にせず続けてください。」
・・・
しばらくして、町について一通り話し終わった。
「では、町を実際に案内する日程については、また後日とさせていただきます。」
「あぁ。」
「[把握。]」
(後回しか。)
[仕方ない。町の情報でも整理しておこう。]
(そうだな。)
(まず、ここはライパング国の北に位置していて、王城は北の山脈を背にするように造られている。)
[そして、この町の西端には源元家屋敷。東端には平良家屋敷。あと、南端にはジャーマ皇国時代の城門の跡が。]
(町は碁盤目状になっていて、王城と城門跡、東西の屋敷を繋ぐ道は大通りになっている。)
[大通り沿いは店が並んでいて、大通りが一応、埋まらない程度に人が集まる。]
(おそらく、案内するのは大通り沿いの店を順番にって感じか。)
[民衆に見せるのが目的なら、人が集まっている大通りを通るだろうな。]