FIZZY POP SYNDROME
レビュー執筆日:2022/1/17
●しっかりと印象に残る楽曲を聴かせてくれるものの、アルバムとしてのバランスはやや悪めか。
【収録曲】
1.LIE on
2.サーチライト
3.月と太陽だけ
4.アイデンティティ
5.Bottoms call
6.夢の礫
7.宮の橋アンダーセッション
8.ゴミステーションブルース
9.ホットバニラ・ホットケーキ
10.PAINKILLER
最近、何かとその特徴的な名前を聞くことの多いミュージシャン・秋山黄色のアルバム。今作の収録曲の中で特に印象に残ったのが『アイデンティティ』と『夢の礫』でしょうか。どちらも「絶望の少し先で笑うんだよ」や「なんでうまくいかないんだろう」等といったシリアスな響きを持った歌詞とそれに則したメロディが特徴的な楽曲となっており、「4つ打ちのロックナンバー」と「ピアノをメインとしたバラード」という異なる雰囲気でしっかりと「聴かせる」楽曲を作れてしまう辺りに、ある意味新人離れしたソングライティング能力を見せつけられるようです。
ただ、アルバム全体を見てみると、『Bottoms call』や『ゴミステーションブルース』のように「シリアス」というよりも「想像以上に退屈だ」や「俺はゴミじゃない」等といった「やさぐれた」雰囲気の歌詞を軽快なサウンドに乗せた楽曲がメインといった感じで、『アイデンティティ』や『夢の礫』のような曲は今作においては「例外」のように感じられました。まあ、この2曲はタイアップが付いたシングル曲なので、「ノリの良いやさぐれた」雰囲気のアルバム曲は彼のコアとなる部分が出ていると言えるでしょうが、個人的には前述の2曲の「存在感」がかなり強い印象があり、それによってアルバム曲がやや霞んで見えてしまうところもあります。
もっとも、『LIE on』ではかなり激しめのロックサウンドを聴かせたり、『ゴミステーションブルース』ではレゲエの要素を、『ホットバニラ・ホットケーキ』ではヒップホップの要素を取り入れたりと曲調のバリエーションは結構広く、そういった楽曲群を楽しめる点もあるのですが、その一方で全体的に見るとややバランスの悪さを感じられるアルバム。そういう点においては、「今後に期待」といった感じでしょうか。
評価:★★★★