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神頼み

作者: モモモタ
掲載日:2022/08/27

 家の近所に、ある神社があり、そこには神様の姿を模したと言われる銅像がある。由来は私も詳しくは知らないけど、小さい頃、母からこの銅像の逸話を聞いて育ってきた。そして今、7歳になる息子と一緒に、その話をする。



「この銅像はな、悪いところを治してくれるんだ。足が痛いなら、銅像の足を撫でる。腰が痛いなら腰って感じでな」


「ふーん……ねぇ、どうして目隠ししてるの?」



 銅像は七福神のような恰好をしており、長い髭を蓄えた高齢の男性の姿だ。だが、その目には手拭いで目隠しがしている。



「それはな、目だけは治してくれないんだよ」


「どうして?」


「目が無い神様らしくてな。撫でてくれたところは分かるけど、目は無いから撫でてもわからないからダメなんだとさ」


「目が無い神様って……なんか怖いね」


「そうかもな。だから、ゲームとか漫画とかで目が悪くなっても神様は治してくれないぞ?」


「じゃあ、叔父ちゃんが撫でてもダメなんだね」


「……ああ、そうだな」



 その日は、息子と銅像の足を撫でて、帰る。目を撫でてはいけない理由は、実は嘘だ。撫でても何もないわけではない。撫でたら、来るのだ。



ー----------------------------------------



「目を撫でたらだめよ。目だけは治すんじゃなくて、つぶされるの。何人も被害に遭ってきてるから、本当にだめだからね」



 小さい頃、母からその話を聞いた私の兄は、母の忠告を聞かずに度胸試しと称して右目を撫でてしまった。その時は目を隠してはおらず、私達も半信半疑だった。けど……



「窓の外に、あいつがいる!」



 深夜、急に騒ぎ出したかと思うと。



「ほら、そこにいる、なんで見えないんだよ!?」



 狂ったかのように何もいない部屋の隅に物を投げつけ、やがて……投げて跳ね返ってきたボールペンが右目に刺さり……失明した。



「絶対に触るなって言われたから気になった」



 そういう兄のような人はほかにも何人かいて、同様に害が及んだ為、あの銅像には目隠しをし、同じことをする者が出ない様に、事実を隠すようになったのだ。撤去すればいいとも思ったが……撤去しようとすると関係者に不幸が起きるそうで。



「なぁ、兄貴」


「なんだよ」


「あいつって、どんな姿だったの?」



 目の傷の治療で入院していた兄が退院して、聞いてみたことがある。途端、兄は震えながら言った。



「……あの銅像。あいつが、来たんだよ。目のところに穴が開いてて、そこから誰かがのぞき込んでくるんだよ。その目が、本当に怖かった。ただの人の目なんだけど、なんでか怖くて仕方がなかったんだよ」



ー----------------------------------------



 銅像は今もあの神社にある。行かなければいいと思うかもしれないが……息子は足が悪く、車いすで生活している。手術をしても治るかどうかわからない。それなら……神にだって縋るというものだ。たとえそれが兄の片目を奪った神であろうと。



                         完

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