神頼み
家の近所に、ある神社があり、そこには神様の姿を模したと言われる銅像がある。由来は私も詳しくは知らないけど、小さい頃、母からこの銅像の逸話を聞いて育ってきた。そして今、7歳になる息子と一緒に、その話をする。
「この銅像はな、悪いところを治してくれるんだ。足が痛いなら、銅像の足を撫でる。腰が痛いなら腰って感じでな」
「ふーん……ねぇ、どうして目隠ししてるの?」
銅像は七福神のような恰好をしており、長い髭を蓄えた高齢の男性の姿だ。だが、その目には手拭いで目隠しがしている。
「それはな、目だけは治してくれないんだよ」
「どうして?」
「目が無い神様らしくてな。撫でてくれたところは分かるけど、目は無いから撫でてもわからないからダメなんだとさ」
「目が無い神様って……なんか怖いね」
「そうかもな。だから、ゲームとか漫画とかで目が悪くなっても神様は治してくれないぞ?」
「じゃあ、叔父ちゃんが撫でてもダメなんだね」
「……ああ、そうだな」
その日は、息子と銅像の足を撫でて、帰る。目を撫でてはいけない理由は、実は嘘だ。撫でても何もないわけではない。撫でたら、来るのだ。
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「目を撫でたらだめよ。目だけは治すんじゃなくて、つぶされるの。何人も被害に遭ってきてるから、本当にだめだからね」
小さい頃、母からその話を聞いた私の兄は、母の忠告を聞かずに度胸試しと称して右目を撫でてしまった。その時は目を隠してはおらず、私達も半信半疑だった。けど……
「窓の外に、あいつがいる!」
深夜、急に騒ぎ出したかと思うと。
「ほら、そこにいる、なんで見えないんだよ!?」
狂ったかのように何もいない部屋の隅に物を投げつけ、やがて……投げて跳ね返ってきたボールペンが右目に刺さり……失明した。
「絶対に触るなって言われたから気になった」
そういう兄のような人はほかにも何人かいて、同様に害が及んだ為、あの銅像には目隠しをし、同じことをする者が出ない様に、事実を隠すようになったのだ。撤去すればいいとも思ったが……撤去しようとすると関係者に不幸が起きるそうで。
「なぁ、兄貴」
「なんだよ」
「あいつって、どんな姿だったの?」
目の傷の治療で入院していた兄が退院して、聞いてみたことがある。途端、兄は震えながら言った。
「……あの銅像。あいつが、来たんだよ。目のところに穴が開いてて、そこから誰かがのぞき込んでくるんだよ。その目が、本当に怖かった。ただの人の目なんだけど、なんでか怖くて仕方がなかったんだよ」
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銅像は今もあの神社にある。行かなければいいと思うかもしれないが……息子は足が悪く、車いすで生活している。手術をしても治るかどうかわからない。それなら……神にだって縋るというものだ。たとえそれが兄の片目を奪った神であろうと。
完




