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ふたりの秘密基地  作者: 鷹山英則
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モチベーションぶっ壊れたから、思い付き短編

「俺、ユイのことが好きだ」


「は?……何言ってんの?」


「……いや、忘れてくれ」


 無理でしょ。……私のことが好き?サクが?……何の冗談?


「いや、無理でしょ……」


「あー、あれだよ。友達としてってやつだ」


「……ロリコンなのかと思った」


 私たちは友達だけど、お互いについてあまり知らない。


 私がサクについて知っていることと言えば、近所にある高校の生徒だということだけだ。だから、サクは私の……2歳か3歳くらい年上ということになる。……多分。私は今中学2年生で、次に中学3年生になる。サクは多分高校1年生か高校2年生だと思う。高校3年生なら、こんなところに来る余裕はないはずだから。


 今、私たちがいるのは、昔私が作った秘密基地。この秘密基地は、小学生の時に家の近くの山に当時の友達と作ったものだ。もうその友達は引っ越してしまっていないけれど、落ち着きたいときにたまに一人で来ていた場所だった。


 1年くらい前、嫌なことがあってこの秘密基地に来たら、サクが先客として友達の席だった場所に座っていたのが、出会いだった。最初は……


『ここ、私の場所なんだけど。出てってくんない?』


『は?知らねえよ。命令すんな』


 ……みたいな会話をしたと思う。それから少しして、また秘密基地に行くと、サクがいてその時のことを謝られて、それからよく秘密基地で会うようになって……という感じで今の関係が築かれていった。


 だから、ここでサクが話した内容しか私は知らないし、サクは私が話した内容しか知らない。お互いにフルネームすら知らない。悩み事とか愚痴とかを言ったり、ゲームをしたりはするけれど、お互いの詳しいことを話したりはしない。そしてサクの愚痴は、親が厳しすぎるという内容の物ばかりで、そこから派生したことしか私はサクのことを知らない。


「ロリコンって……失礼だな」


「中学生が好きな高校生はロリコンですー」


「いや、んなわけないだろ。ロリコンってのは13歳以下の女の子が好きな成人男性のことだ。俺はまだ高校生だし、お前は13歳以下じゃないだろ」


「なんでそんなに詳しいの?こわ……」


「別に詳しいわけじゃねえよ。常識だろ」


「そんな常識知らない……」


「とりあえず、俺はロリコンじゃない。……あと、好きって言ったのも友達としてだ」


「まあ、サクは私にとって愚痴聞いてくれる人かな」


「光栄だね。またなんかあったのか?」


「そうなんだよ!親がもうすぐ受験だからって塾に行けって言うんだよ!」


「……いけばいいだろ」


「いやだ!」


「あのなあ……塾いかないで受験しようってのは大変だぞ?むしろ塾に行かせてくれる親に感謝するべきだろ」


「そうだけどさあ……。あっ、じゃあ、サクが教えてよ!サクが行ってる高校って頭いいよね」


「……無理。……というか、俺の親みたいに、馬鹿みたいに厳しいわけじゃないんだから、言うこと聞いとけって。まあ、塾が嫌な気持ちもわかるけどな」


「でしょ!?塾って、勉強って聞くだけで嫌になるでしょ!?」


「いやそこまでじゃないけど」



………

……



 それからずっと私が愚痴を言っていて、辺りが暗くなり始めたので帰ることになった。


「じゃあ、私帰るね」


「ああ……、……さようなら」


「じゃあね」


 私は、いつもの通りに別れを告げて帰った。



 少し違和感はあった。「さようなら」なんて、いままで言われたことがなかった。でも、私はその違和感を無視して帰ってしまった。




~~~




「今日もいない……」


 サクと最後に会ってから10日ほど経っている。こんなに会わないことは、最近はなかったので不安になってしまう。もしかしたら事故にでもあったのかもしれないという考えが頭によぎってしまう。


 もしそうなら、もし、そうなら……。


 バクバクと心臓の鼓動が早くなっていく。ありえない話ではない。サクが事故に遭ったとしても、その話が私に届くことはない。私たちは連絡先の交換をしていない……というか、サクが携帯を持っていなかったから。


 ……そんなわけない。サクが事故とか、あり得ない。


 そんなことを思って、私たちの唯一の接点だった基地内を見回す。何かメッセージがあるかもしれないと思っての行動だった。心の隅では、そんなものないだろうという考えがあったけれど、何か行動を起こさないと、と思った。


「あれ、これ……」


 そして、そんな考えに反して、サクからのメッセージはすぐに見つかった。昔、この基地を作ったときに、連絡することがあるときに手紙を入れておこうと言って設置した少しサビついた箱の中から、一つの手紙が出てきた。


 綺麗な字でユイへ、と書いてある手紙を手に取る。胸の中は不安感でいっぱいだった。中を見たくない。だけど、見たい。嫌なことが書いてある気がする。でも、この不安を早く解消したい。


 そんなことを頭の中で巡らせながら、私はゆっくりと手紙を開けて中に入った紙に目を通した。


『ユイへ


 引っ越すことになりました。だから、ユイの基地にはもう行けません。行けませんっていうのも変だけどな。俺が押しかけていたみたいなものだし。


 こんな手紙で伝えることになってしまって、ごめん。どうしても言い出せなくて、こんなふうに伝えることになって、本当にごめん。


 ユイと1年くらいあの基地で過ごして、すごく楽しかった。いろんな話をして、お互いにグチを言い合って、一緒にユイの携帯でゲームをして、本当に楽しい時間だった。本当に助けられた。ありがとう。また、いつか会えたら嬉しい。


 受験、頑張れよ。


サクより』


 最初に飛び込んできた引っ越す、という言葉で鼻がつんと痛くなるのを感じた。そして、最後まで読み終わるころには目から涙があふれていた。


 助けられていたのは、私の方だ。愚痴だって、私のほうがたくさん言っていたし、相談事だってたくさんしてた。ここが、サクが私の居場所になってくれたおかげで、私は上手くいかないことがあっても、なんとかやってこられたんだと思う。


 私は手紙を片手に走り出す。サクが通っていたはずの高校に向かって。何か情報が欲しい。この手紙だけでは、何もわからない。



 しばらく走って、サクが通っていた高校についた。そして、ちょうど校門から出てきた人に話しかける。


「すみません、あのっ、サクって言う人、知りませんか?」


「えっ、いや、知らないけど」


「その、つい最近引っ越しちゃった人なんですけど」


「ごめんね。知らないよ」


 そう言って、少し迷惑そうな顔をしてその人は去っていった。



 それから、何人かに同じように聞いてみたけれど、何の情報も得ることはできなかった。

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