第七話 黒い悪夢②
相手のステータスを見た感じ俺より強い可能性が出てきた。
これではファルは相手にならないだろう。
「ファル!こいつはお前では相手にならん!出来るだけ離れてくれ!」
「……わかりました」
ファルには申し訳ないが仕方がない。
俺は魔法を使い攻撃していたのだが、魔法も魔力ごと食われてほぼ無意味だった。
物理も効かないとなると詰みだ。
「ここまで危機的状況になるのは初めてだな…」
俺が打開策を考えていた時、
「新人!そこをどきなさい!」
後ろを振り返ると以下にも魔法使いの格好をしているメガネをかけた女性が立っていた。
「ダメだ!こいつには魔法が効かない!」
「大丈夫よ!私にはこの眼がある」
そう言うと女冒険者はメガネを外す。
すると、眼が紅く光る。
「弱体化のデバフをかけたわ!これで貴方の攻撃も通じるんじゃない?」
俺は鑑定眼でステータスを見る。
。
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〈弱体化〉
レベル:???
体力:(不明)
魔力:(不明)
攻撃力:(不明)
防御力:(不明)
魔法攻撃力:(不明)
魔法防御力:(不明)
精神力:(不明)
〈称号〉
悪食
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「感謝する」
確かに弱体化されていた。
まぁ数値は相変わらずわからないのだが。
俺は今度こそ首筋を狙って蹴りをいれた。
すると、鬼の魔物の頸は本体から離れ飛んで行った。
そして、鬼の魔物の体から溢れていた黒い瘴気のようなものが消えた。
俺は鬼の魔物に蘇生魔法をかけた。
「え!?貴方蘇生魔法なんて使えるの!?」
「ちょっと静かにしててくれ」
「ご、ごめんなさい」
鬼の魔物は目を覚ました。
「お疲れ様です、ガイア様」
「ファルか…すまんな」
「いいえ、実力不足だったのは理解しておりますので」
「そうか…で、大丈夫か?」
俺は鬼の魔物に話しかけた。
「あ、あぁ…」
「自分が何をしていたのか覚えているか」
「少しだけなら…」
「そうか、まぁ俺は咎めるつもりはない」
「感謝する」
無事、黒い悪夢の脅威は消え、俺は安心した。
その後俺は帰ろうとしたのだが、鬼の魔物と女冒険者がついてくる。
「なぜついてくる」
「俺は貴方に命を救われた、俺の種族は受けた恩は一生をかけて返す」
「そうか、そっちは?」
「私はセンリ、これでもAランク冒険者よ!」
「そうか、俺はガイアだ」
「ガイアは私と同じ眼を持ってるよね?だから興味を持ったの」
「眼?なんだそれ?」
「誤魔化しても無駄よ、貴方ステータスを覗くときに邪眼を使ったでしょ?」
「まぁな」
「やっぱり!でも、どうやって邪眼を制御してるの?私は制御しきれずこのメガネで抑えてるんだけど…」
「なるほど…魔道具か。制御できない?お前魔法使いじゃないのか?」
「魔法は使うけど邪眼とは関係ないでしょ!」
「いや、魔力さえ制御できれば目に集中してる魔力を散らせばいいだけだろう」
「無理だわ!そんな事無理よ!」
「なら諦めるんだな」
「そ、そんなぁ〜」
「おい、そこの女。ガイア様に馴れ馴れしいぞ」
「え、何この子。ちょ〜可愛いんですけど!」
そう言ってセンリはファルに抱きつき頭を撫で撫でし始めた。
「触るな!」
ファルは口では抵抗しているものの顔がふやけていた。
「ふふんッ、私の知り合いに羊使いがいるんだけどそこの羊を毎日撫で続けた私の撫でスキルの恐ろしさを思い知ったか!」
「ぐぬぬ…」
「ふはは!」
「なんだこの茶番は…」
そうこうしている内に街に着いた。
一旦センリとは別れ宿に帰った。
鬼の方は俺の部屋と同じ部屋を使わせる。
「なぁ名前はなんて言うんだ?」
「シンと申します」
「そうか、シン。俺と契約しないか?」
「契約ですか?」
「あぁ、これから着いてくるなら契約しておいた方がいいと思ってな」
「是非!」
俺はファルが描いた魔法陣を見様見真似で再現し、契約を済ませた。
今回もファルと同じ俺が優位の契約だった。
用事も済ませた俺はその日は寝ずにファルとシンと夜が明けるまで話し続けた。