表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/61

第50話 『いざ、最後の舞台へ』 ②


**


「本日はお招きいただき、誠にありがとうございます。エストレア公爵家を代表しまして、本日は私が参加させていただきますわ」

「まぁまぁ、ご丁寧にどうも。王太子殿下もいらしてくださって、私とても嬉しいですわ」


 エストレア公爵家に立ち寄った後。私はアイザイア様と共にベアリング伯爵家で開かれているお茶会の会場にやってきておりました。お父様もお母様も後々参加されるそうなのですが、今回のエストレア公爵家の代表は私になっています。なので、丁寧にあいさつをしました。


 ベアリング伯爵夫人は、とても豪奢なドレスとアクセサリーを身に纏われた、派手なお方。私はちらりと視線だけで彼女を観察し、そんなことを思っていました。


 私がベアリング伯爵夫人にあいさつをしている間、アイザイア様は視線だけで辺りを見渡しているようでした。後から聞いたお話では、この時このお茶会の規模を図っていらっしゃったそうです。とても伯爵家のものだとは思えない大きさだと、私も思っておりました。しかし、ベアリング伯爵家の後妻である今の奥様は、社交がとても派手で見栄っ張りだと有名なお方。仕方がないと、心の何処かでは思っていたのかもしれません。


「ぜひとも、お時間までお庭などを散歩していただければと思いますわ」


 そんな中、ベアリング伯爵夫人がそう私たちに告げました。今回のお茶会は、比較的フリーダムであり、そこまで堅苦しいものではありません。各々に会話を楽しみながら、お茶を飲みお茶菓子をつまむ。そう言った場所。そのため、私もふんわりとした笑みを浮かべて「そうさせていただきます」と言いました。世にいうよそ行きスマイルです。


 そして、アイザイア様と共にベアリング伯爵夫人の元を離れます。ベアリング伯爵夫人は、特に気にされた風もなく、次の招待客のお方にあいさつをされていました。


「……モニカ、やっぱり臭いね。この規模は、とてもじゃないけれど伯爵家が開けるようなものではない。やっぱり……そう言うことかな。よし、俺はちょっと席を外すから、ルーサーと一緒に行動してね」

「はい」


 アイザイア様がそうおっしゃると、颯爽とルーサーさんが私の後ろに現れました。影のように控える能力でもあるのか、ルーサーさんはこう言うことがとてもうまいです。そう言う言い方であっているのかは分かりませんが、とにかく気になりませんね。


「……ねぇ、ルーサーさん。アイザイア様は、あの件についてはここで終わらせるそうですが……具体的に、どうしてこの場所を選ばれたのでしょうか?」


 少しばかり人がまばらなところで、私はお茶を飲みながらルーサーさんにそう尋ねました。警戒が必要とは言え、お茶を飲まないと不審に思われてしまいます。そのため、私はちょびちょびとお茶を飲みながら、ルーサーさんにそう問いかけました。


「それは後々分かるかと思われます、モニカ様」


 ですが、にっこりと笑ってそう言うルーサーさんの雰囲気には、これ以上は尋ねることを許さないとでも言いたげで。私は、静かに口を閉じました。


 そんなことをしている間にも、招待客は増えていく。中には私の知り合いの方もいらっしゃって、時折会話も交わしました。しかしアイザイア様は、あれから私のところに姿を現してくださいません。いったい、何をされているのでしょうか? そう思いながら、私は招待客の方々と会話を繰り広げます。ですが、それからしばらくした時でした。


「お久しぶりですね、モニカ様」


 そうおっしゃって、私に一人の殿方が話しかけてこられたのです。そのお方は、間違えるわけのないお方。一時期、私の心をかき乱されたお方、アラン・ベアリング様。アラン様は私のことを見つけて駆け寄ってこられたのか、軽く息を乱しておりました。


「……お久しぶりでございます、アラン様」


 私はにこやかな笑みを浮かべて対応します。いくら警戒している人物とは言え、その警戒を表に出すわけにはいきません。そのため、私は表面上はにこやかに友好的に接して、アラン様との会話を楽しんでいる「フリ」をします。


「アラン様。今回はこのようなとても素敵なお茶会にお招きいただき、誠にありがとうございます。……随分と、規模が大きいのですね」

「えぇ、まぁ。新しい母上が、見栄っ張りな人なのでね。……正直、僕は疲弊しているのですが」


 苦笑を浮かべながら、アラン様がそんなことをおっしゃる。その表情は、本当に疲弊しているように「表向き」には見えましたが、裏にも何か感情が込められているように見えました。


(……しかし、アラン様は私に近づいてこられて……何が目的なのかしら?)


 そして、そう深読みしてしまいます。私のことを「好き」と言ってしまった手前、無下にすることが出来ないということなのでしょうか? そう言うことならば納得ですが……何処か、腑に落ちないのですよね。


「そうだ、モニカ様。少し、二人でいろいろとお話をしませんか? 二人きりで、ね?」

「っつ!」


 アラン様が、不意にそうおっしゃって私の手にご自身の手を重ねてこられる。その瞬間、私の背筋がぞっとしました。どうしてでしょうか? うすら寒いのです。まるで……底知れぬ狂気が迫ってきているような。そんな雰囲気が、ありました。


「……あ、あの」


 さて、どうやって断りましょうか。


 私はそう必死に思考回路を張り巡らせて、言葉を探します。でも、こんな肝心な時に限って、言葉が何も出てこない。どうしよう、どうしよう。そう思っている間に、アラン様が私の手を掴んでこられる。あぁ、嫌だ。


 ――やっぱり、アイザイア様以外に触れられたくない。


 私は、自然とそう思っていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ