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第32話 『不安だらけ』 ②

 柱の陰に必死に隠れながら、私はただひたすらアイザイア様とレノーレ様を観察しておりました。どうにも、レノーレ様らしき人影は、アイザイア様にべたべたと触れられているようで。べたべたと触れながら、腕を絡めようとされています。それを、アイザイア様は軽く躱していらっしゃるようでしたが、それでも完全に拒絶はされていません。それが、尚更私の心を痛ませました。


(……やっぱり)


 ――私じゃ、ダメなのかな。


 そう、思ってしまいました。それと同時に、胸の中を埋め尽くしていく不安。アイザイア様も、もしかしたらレノーレ様のような女性らしい体型のお方がお好きなのかもしれません。私みたいに、幼児体型で妹としか思えないような人じゃ、嫌なんだ。そんなことを、思ってしまいました。


 そう考えれば考えるほど、私の心は苦しくて辛くなってしまいます。今までの楽しかった思い出が、脳裏をよぎる。私のことを可愛らしいとおっしゃってくださったアイザイア様。アクセサリーやドレスなどを誕生日にプレゼントしてくださったアイザイア様。そのすべてが、私の趣味と合致していてとても嬉しく感じた日々。……でも、それは所詮私の趣味に合わせてくださっただけなのかもしれない。エストレア公爵家のことがあるので、婚約を解消することはほぼ無理でしょう。でも……側妃を娶ることは、容易いこと。きっと、アイザイア様はレノーレ様のことを側妃として娶られるのでしょう。……嫌だ、なぁ。


(あれ、でも、どうして私はアイザイア様が側妃を娶られることを嫌だって思っているのかしら……?)


 一国の王となられるのだから、側妃を娶ることだって普通のはず。なのに、何故か私はアイザイア様が側妃を娶るかもしれないという現実に、傷ついていました。


 分かっていた、はずなのです。心の奥底では、そう言う可能性があることだって。今の国王陛下が、王妃様しか娶っていないということは、稀なんだともわかっていたはずなのに。


(もう、ここにいるのも辛いわ。いったん、自室に戻りましょう)


 そして、私はそのまま踵を返して自室に戻ることにしました。ゆっくりと歩いても、胸が痛む。これは、いったいどういうことなのでしょうか? そう思いながら、私は自室に戻ったらヴィニーに話を聞いてもらおうと決めました。


 これ以上、一人で苦しんでいても周りに迷惑をかけてしまうだけでしょう。だったら、潔く姉の様に思っているヴィニーにお話を聞いてもらって、解決策を導き出すのが一番いいでしょう。そう、判断したのです。


 この不安だらけの心の中が、いったいいつまで続くのでしょうか。そう思えば思うほど、私の気持ちは重苦しくなってしまうのでした。

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