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第19話 『これからは……』 ①

(……うぅ、気まずいわ……)


 夜会の翌日の朝。自室で身支度を整えながら、私はそんなことを思っておりました。気まずい、とはもちろんアイザイア様に対して、です。昨日、アイザイア様はとても不機嫌でした。それも、かなり怒っていらっしゃいました。だからこそ、本日の昼に顔を合わせるということが、気まずかったのです。もちろん、日がたつにつれ余計に気まずいということぐらい想像がつきます。ですが、出来れば本日は会いたくないのが本音でした。


「はい、出来ましたよ」


 ヴィニーによって、綺麗に髪の毛がセットされます。いつものように黒色のさらさらとした髪が、艶めいて見えます。その日によって変わる髪飾りは、どうやら本日は青い薔薇をモチーフにしたもののようです。もちろん、ドレスもとても綺麗なものを選んでいます。髪飾りとおそろいのデザインのドレスは、とてもふわふわしていて可愛らしい。


「さて、本日のモニカ様のご予定ですが……」


 次から次へと耳に届く予定の数々は、私の頭の中にうまく入ってきませんでした。家庭教師のマナーレッスンに、ダンスレッスン。他にも様々なレッスンが時間を埋め尽くしており、一日が始まったということを嫌というほど実感させてきます。


「……聞いておりますか、モニカ様?」

「……え、えぇ、聞いているわよ……」


 心ここにあらず状態の私を、心配してくれたのかヴィニーが私の顔を覗きこみながらそう言ってくれます。それに、私はひきつった笑みを浮かべながら対応しておりました。本当は、あまり聞いていなかったのです。ですが、ここで聞いていないと言ってしまえば、ヴィニーに余計な心配をかけてしまうだけ。私の世話や侍女の仕事だけでも忙しいのに、これ以上ヴィニーに余計な仕事を増やしたくなかったのです。


「……ならば、良いのですが。あ、そう言えば、何でもアイザイア様が朝からモニカ様にお伝えしたいことがあるそうです。もうしばらくしたらいらっしゃると思いますが……」

「あ、アイザイア様が!?」

「……何故、そこまで驚くのかは存じ上げませんが、いつものことではありませんか。まぁ、なんのご用件なのかは知りませんが……ルーサーさんを通してだったので、了承しました」


 どうして、今日に限ってヴィニーはアイザイア様の突然の訪問を許してしまったのでしょうか。そう、私は思ってしまいます。いつもならば淑女のお部屋に立ち入るのはマナー違反です、などと言って断ってくれているはずなのに。そう思うのですが、アイザイア様の専属従者であるルーサーさんの名前が出ていることもあり、これは使用人の間では了承されていることなのだろう、と私は理解しました。ルーサーさんは、アイザイア様との付き合いが長いこともあり、周りからの信頼は抜群ですから。


「……そう」


 昼からお会いするだけでも、気が重かったのに。そう心の中で思いながらも、私は鏡台の前からソファーに移動しました。その間に、ヴィニーが応接セットを準備していく。紅茶の良い香りが漂ってくるものの、今はそんなことを楽しんでいる余裕はちっともありませんでした。


 そして、そんな時間がしばらく過ぎたころ。お部屋の扉が三回ノックされました。三回目のノックの後、ヴィニーが返事をすれば、ゆっくりと扉が開きます。そこにいたのは、いつも通りのきっちりの格好をした、ルーサーさんでした。

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