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第16話 『婚約者の嫉妬』 ①

「アイザイア様! 私と少しばかりお話をしませんか?」

「ちょっと! 私の方が先にお話をするのよ!」


 そんな声が会場内に響く中、私はただ茫然と立ち尽くすことしか出来ませんでした。アイザイア様に群がるご令嬢方は、きっと皆アイザイア様の妃の座を狙っているご令嬢ばかりでしょう。いくら正妃になるのが私だと決まっていても、側妃や愛妾にならば自分たちだってなれる。そんな思惑が、ご令嬢方からは見え隠れしていました。


「……あ、喧嘩はよくないよ、キミたち」


 そんなご令嬢方に、アイザイア様は疲弊したような表情で対応していらっしゃいました。アイザイア様は、いつもおっしゃっていました。本当の思惑を隠して、自分に媚を売りに来るご令嬢方が苦手だと。それは、親からの命令なのか。はたまた、自分の容姿に自身があるから着ているのか。どちらにせよ、あまり良いものではないと。


 そして、私は気が付いてしまいました。……アイザイア様が、明らかに怒っていると。


 それに、私はアイザイア様の疲弊したような表情に強く胸を締め付けられてしまいました。歪でも、笑顔を浮かべようとしていらっしゃる。いいえ、もしかしたらそんな笑顔についてだけではないのかもしれません。私がアイザイア様のお隣に並んでも、兄と妹にしか見えません。なのに、他のご令嬢が並べば婚約者や恋人に見えてしまう。アイザイア様が、他のご令嬢方を無下にされるお方ではないということを、私はよく分かっていました。それでも、私は思ってしまうのです。私だけに、笑顔を見せてくださればいいのに、と。


 ですが、私はその気持ちを口に出すことはしませんでした。この気持ちは、立場上口に出してはいけないからだ、と思っていたからです。


(……アイザイア様……)


 私が心の中でアイザイア様のことを呼んだところで、アイザイア様がこちらを向いてくださることはないでしょう。ただ、他のご令嬢方に歪な笑顔を浮かべられ、話を聞かれているだけです。そんな現実に、私はさらに胸が締め付けられていました。


 ですが……私は、この気持ちが嫉妬心だと知りませんでした。そして……アイザイア様の方が、その感情が強かったということも、私は知らなかったのです。

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