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「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
九章 第四回公式大会

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9-19.本戦 準決勝第二試合 セリスアネシアVSアルマジロ先生ブレイザー先輩

『それでは!時間繰り下がりましたが開始していきます準決勝第二試合!選手の入場です!』

『Cグループ!ギルドですぺなるてぃより!ギルドリーダー、サブリーダー!アルマジロ先生・ブレイザー先輩ペア!』

『Dグループ!ギルド未所属ダークホース!セリス・アネシアペア!』


 解説の声と共にフィールドへ転送される。

 隣のアネシアは何度も手をにぎにぎと動かしていて、少し落ち着きがない。

 努めて観客席は見ないよう心がけ、前を向く。


『ベスト4にギルド未所属はもしかして初じゃない?』

『さっき記録見たけど、多分初!情報なし(ノーデータ)による初見殺し連発、めっちゃ見ごたえあるよね!』

『さあしかし今回の相手はデータマンと名高いアルマジロ先生だ!』

『先生ボートタウン図書館の閲覧可能図書全部読んだってホントですか!?』


「流石にソレは嘘だよ」


 目の前のくまさん……アルマジロ先生が、解説の声に苦笑した。


「あそこ、青空文庫と繋がってるから、閲覧可能図書って言ったら大量の近代文学が入ってしまう」

「え、そうなんですか?」


 思わず声を上げると、アルマジロ先生は優しげな目を向けた。


「一度行ってみると良い。本を読むことだけを目的とするギルドなんかもあるよ」

「今度、行ってみます。クエストで行ったきりで」

「ゲーム内設定の本も面白いよ」

「先生、設定関連の本は全部読んでますよね?」

「禁書は読ませてもらえなかったんだよねぇ」


 ……それはつまり、解説さんの言ったことはあながち嘘ではないのでは?


「さて、そろそろ時間かな」

「今度はどんなびっくりを見せてくれるんです?」

「……言ったら、びっくりにならないじゃないですか」

「それはそうだ」


 くつくつとくまさんが笑って、


「ギルドですぺなるてぃ、ブレイダーのアルマジロ先生だ。お見知りおきを」

「ギルドですぺなるてぃ、ロマン砲ブラックマジシャンのブレイザー先輩です」

「え、あ……アサシンの、セリスです」

「通りすがりの遊び人の、アネシアです」

「正々堂々、などと言うつもりはないよ」


 彼は赤い大きな両手剣…………ノックバック特化オメガバスターを背中から抜いた。


「小手先の全てを使ってかかってきなさい。――――踏み潰してあげよう」


 彼の纏う空気が変わる。

 フィールドに、カウントダウンが響いた。



『カウントダウン! 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 GO!』



「イカサマダイス」


 初手スキルを使用して駆け出す。

 ブラックマジシャンの彼はフィールド中央で小さく座り込み、その目の前にアルマジロ先生(くまさん)が陣取っている。


 ジャンプブーストで飛び上がり、


「ポイズンレイン」


 ばらばらと毒の雨が落ちる。


「乱れ斬り」


 ぐんと振り回された大剣がほとんどの雨を絡め取り、いくらかがブレイザー先輩に落ちたが、MISSの表示が出た。

 イカサマダイスの効果で命中判定に不安はないので、毒耐性装備は持ってきているということだ。


月夜の魔人(デモン・リュネール)


 シアさんの鎌が飛んでくる。ランダムヒットはブレイザー先輩だ。


「ディフレクション――本当に、無茶をする」


 攻撃軌道をそらすスキルで鎌が地面に突き刺さり消える。


「ドリームショートソード」

「ブレードガード」


 ガードで止められた攻撃にノックバックが乗って、後ろに吹き飛ぶ。

 うーん、完全無敵でもガードノックバックには反応しちゃうんだよな。


 MISS表示はなかった。攻撃という扱いにはならないらしい。

 手にしたイエローラクーンを構える。


「アジリティアップ」

奇術の時間(イッツァショウタイム)


 様子見を終えて敏捷を上げるスキルを使用する。シアさんも奇術の時間を入れてくれた。戦闘参加人数が4人なのでバフ効果は15%だけど、この底上げだって無視はできない。

 向こうのチャージが貯まるまであと3分ちょっとというところか。


 まっすぐに駆け出す。

 狙うのはアルマジロ先生――麻痺だ。


 先生がシアさんの攻撃を弾く。その後ろ隙に通常攻撃を差し込む。

 麻痺をいれるなら火力(スキル)よりも手数重視になる。ダメージはゴミだけど。

 毒耐性が100でない可能性を考慮してクールが空ける度にポイズンレインも降らせる。

 毎回必ず範囲ガードをしている。本当に100じゃないのかもしれない。


 そして本当にこの先生(くまさん)は、体の使い方が上手い。


 シアさんのカードスローを剣で叩き落とし、後ろに迫った私に回し蹴りが入った。

 武器所有判定のない蹴りやパンチは、ダメージは装備効果を一切含まない素の攻撃力で判定されるので大抵~100くらいのカスダメだが、完全無敵判定は消費されてしまう。

 こんな突破のされ方があるとは思っていなかった。無手攻撃なんて誰もしてこないから。完全無敵が一枚削れた。

 ノックバックも特化するととんでもなくて、攻撃判定外で足場として触れただけで体が吹き飛ぶ。


 幾度も通常攻撃のダメージは入ったが、麻痺が通らない。

 うん、流石に確定でいいだろう。先輩は毒対策。先生は、麻痺対策だ。


 幾度目か吹き飛ばされた先で装備画面を開く。

 武器を宵闇の短剣に持ち替える。

 トラキチさんのような即時持ち替えはムリだけど、先生の目的も時間稼ぎなので、手は出してこない。


「おや、気づかれてしまったか」

「参考までにお伺いしますけど、あと何回残ってましたか?」

「ん、そうだね、あと3回かな」


 先生も虚空をタップしたかと思うと、両腕と両足に四輪のトパーズリングが表示された。

 4つセットで麻痺率50%カット、5回まで麻痺無効だ。


「アクセサリーをじゃらじゃら表示するのが好きじゃなくてね」


 先生は余裕の声で喋りながら、シアさんの花吹雪をいなす。

 あと3回、それは絶望的に遠いな。やはりこっちにするしかないか。


 さて、残り時間は2分弱。倒せるかは微妙なライン。


「やりますけどね」


 再度駆け出す。

 手にはここ三ヶ月ほどの相棒を。

 向けられた剣を避けずに懐に突っ込んで。


 MISS


「ポイズンショートソード」


 高付与率の毒スキルが入る。

 毒に…………ならない。ウェポンガードが差し込まれ、体が吹き飛ぶ。

 ぴったりのタイミングで後ろから飛んできたはずのカードスローを、ノールックの剣回しではたき落とす。

 後ろに目でも付いているんだろうか。


「毒をいなす方法はいくつかあるのだけど、ことこの場面においては、別に100%対策する必要はないんだよ」


 シアさんが投げ込んだ通常攻撃のカードを全て叩き落とし、背後から迫った私にただすっと剣を構えた。

 短剣と大剣のぶつかる攻撃は完全無敵判定で私の攻撃だけが通ったが、直後私の体が攻撃判定の終了した大剣に触れて吹き飛ぶ。

 宵闇の短剣の通常攻撃は当たったはずだが、また、毒にはならない。


「毒耐性が40%ほどもあれば十分なんだ。宵闇の短剣は70%だろう?それで42%まで下げられる」


 スローインダガーを投げ込むが、ぐるりと回された剣に叩き落され、後ろから迫ったシアさんの攻撃も巻き込んでいく。


「毒Ⅰは4割で入っても20%しか削れない。毒Ⅱ毒Ⅲはスキルでしか付与できない」


 再度懐に入り込む。完全無敵一枚と引き換えに、今度こそ毒が入った。


「そして君は多分、無発声スキルを練習していない」


 1%ずつ削れていくHPを気にもとめず、シアさんの攻撃を弾き落とす。


「4分保てば良い。その時間制約では、この構成の毒耐性の突破は、結構難しいよ」


 あと30秒。


 大剣に向けて出したスキルは隠し刀(インビジブルエッジ)。大剣は、斬盾属性だ。

 触れた瞬間の一発だけ当たり判定になり、直後にノックバックが発動して体が吹き飛ぶ。


 あと20秒。


 姿勢を低く、ギリギリの位置で短剣を構える。


 あと10秒。


「イカサマダイス 百発百中 貴方に特別な賞品をプライズイズアサプライズ

「ブランディッシュ」


 シアさんの発動したプレゼント爆撃が、大剣の振り回しスキルで叩き落とされる。


 中央でずっと座り込んでいた彼が鎌首をもたげ、その杖を振り上げた。


「ジャンプブースト」

「爆裂、ジャンプブースト」


一切の希望を捨てよラッシャーテオニスペランツァ


 地獄の門が開いて、足元に急速にマグマが広がっていく。


 くまさんはその横で悠然と立つ。

 味方にはダメージ判定がない。


 一応、知識は入れてきましたよ。ダメージ判定がないだけ(・・)だって。


 ジャンプブーストで接敵する。

 武器ガードを発動しようとした彼の挙動に


 短剣を下に一回振り回す。


 滞空時間が一瞬伸びる。


 ガード挙動の隙間に入り込み、短剣を振るう。

 先生もとっさに大剣を振り回すが、その動きは攻撃の判定だ。


 MISS


 短剣を差し込みつつ頭を踏みつけもう一度飛び上がる。


 真上から振ってきた私に今度は正しく盾ガードが入り、ノックバックで上に飛び上がる。


 シアさんが爆弾をボンボンと投げ捨てて軌道を調整する。

 連続自爆(空中移動)でHPをごりっと削りながら、先生の上を飛び越え()()()()()()()()


 ねえ先生、確かこのマグマ、物理演算の関係で、水没フィールドの影響は味方も受けるんでしょう。

 私の相方の攻撃に、間に合いますか。


「っ!先輩!」


 次の魔法発動のために目を瞑ったブレイザー先輩の明るい金髪に、シアさんが、スキルを――――


「フラワー「メテオバレット」」


『『『「え?」』』』


 金髪の下から覗く緑の瞳がまっすぐにシアさんを見据えて、


 隕石の四球が、彼女を貫いた。



「シアさん!」


 彼女の体が消えた。


「メテオアロー」


 MISS


 隕石の矢が体を貫いて、完全無敵が消費される。


「ファイヤーアロー」

「スローインダガー」


 飛来する炎の矢にとっさに短剣を投げつけるが――火力特化魔法使いの矢はその程度では止まってくれなかった。


 MISS


 先生の真っ赤な大剣が目の前に迫る。


 MISS


「ファイヤーバレット」


 赤い火の玉が眼前に迫って



 世界が暗転した。





『勝者!アルマジロ先生&ブレイザー先輩ペア!』

『ぐっどげえええええええむ!』

『俺先輩がバレット使ってんの初めて見た!きゅーどすとぅゆー!!』


ブックマーク1000件突破しました!応援ありがとうございます!

ブクマ1000行ったらやりたいなーと思っていた、X(Twitter)の開設を行いました。

作者プロフィールのウェブサイト欄、又は本日の活動報告よりご確認頂けます。

たまーに本編とは関係の無い設定話などをしているので、気になる方はどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 残念だけど、経験値の差がでちゃったかな感はあるのかなあ 先生、学生の思考とか読む術には長けてそうだし 3位決定戦でなんかやらかしてくれることを楽しみにしています
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