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2-3.ソロ遊び人と探し人

「え????え、マジ???????」


 BBSの書き込みに「遊び人さんこれできる?」と指名の書き込みがあった。

 貼り付けられていた動画は最新ボス、魔神ラフェルの攻略動画で、投稿主はサザンクロス。

 へえ攻略一号出たんだ、くらいの気持ちで開いた動画に目を奪われた。


 匿名希望アサシン、レベル173、サブは遊び人(・・・)


 イカサマダイス(・・・・・・・)を使用した高回避による避けタンク


 最重要スキルはプレイヤースキル(・・・・・・・・)



「あの人だ……」


 あの人だ、あの人だ、あの人だ!!!!!!!



『これ、この人、匿名希望さん!誰か分かる!?』

『ど、どしたの遊び人さん……』

『分 か る ! ? ! ?』

『えーと、自分が書き込んでBANされるの嫌なんで……でもこっちでお祭りになってる→【遊び人】魔神ラフェル攻略スレPart5【アサシン】』

『ありがとう!!!!!!!!あとこれ私はムリ!!!!!!!!!!』



 ラフェル攻略スレを開く。完全にお祭り状態でイカサマダイス持ちプレイヤーのリストが作成されている。

 リスト内に私もいた。高レベル帯に連れていけるラインでは大変珍しい遊び人メイン職、辻ヒーラーとして記載がある。

 そしてリストの一番上に光り輝くお名前。


 速攻でログインしてメッセージを書いた。



 魔神ラフェル攻略動画拝見しました。

 お久しぶりです、三ヶ月前に精霊虫の森で助けていただいたノービスです。覚えてくれていますでしょうか。

 あなたに憧れて、ちょっとうっかり遊び人になりました。

 今でも楽しくプレイしています。あなたのおかげです。

 ぜひ一度会いたいです。




 返事はなかった。


 原因は分かる。

 私のところにもひっきりなしに知らない人からメッセージが送られてきている。避けタンクをやってくれないか、と。

 最初数件はムリですと返事を返していたが、そのうち返しきれない量になってしまって、諦めて通知を切った。

 あの人も同じかもっと酷い状態なんだろう。私のメッセージは完全に埋まってしまって、きっと開いてすらいないんだろう。


 会いたい。


 会いたい会いたい会いたい会いたい。



 BBSの情報を見た。

 推定ソロアサシン。宵闇の短剣を持っているので多分毒アサ。

 ソロ職じゃないアサシンをプレイヤースキルでソロでやってる変わり種プレイヤーだ。

 会って話がしたい。

 あの時助けてくれて本当に嬉しかったとか、ソロプレイ大変だよねって話とか、辻ヒール楽しいって話とか、イカサマダイス育てるのが大変だった話とか、あなたに憧れていた話とか、うっかり勘違いしてこんな職についた話とか、したい。



「…………これだけ有名になっちゃったんだから、居場所聞けばわかるのでは?」


 レベル173、多分ソロ毒を考えるとレベリングは毒の入る相手になる。イカサマダイスを回避に利用するなら相手の手数が多いとやりにくい。すると単発高火力型か、単体でフィールドポップするタイプがやりやすいだろう。


 ユーザーWikiを開く。

 175レベルくらいの敵は毒無効が多い。あの人のプレイヤースキル的に格下狩りをしているとは考えづらい。185のビッグノームか、195のビートリッチあたりが怪しい。

 ということは帰還タウンはデザートベルタウンか、フォレストクラウンシティ。

 そこで聞き込みすれば……!



 読みは当たっていた。

 ラフェル動画の匿名希望さんは、フォレストクラウンシティにたまに来ているらしい。

 噂好きっぽいおしゃべりなプレイヤーが何人か話してくれた。


「魔神ラフェル討伐行くの?あの匿名希望ちゃんなかなか捕まんないよー?」

「いえ、お話がしたいだけなんです」

「ふーん?まーサザンクロスとかもだけどさ、あんまタウンにいないんだよね。新緑の宮殿とかベレスティア水晶宮とか、そーいうとこの安地にいるってウワサ」

「え、そうなんですか?」

「街中にいたらあたしらみたいのがいっぱい来るもん。ギルドハウスかフィールドエリアのどっちかよ、キホン」

「それで宮殿と水晶宮……わかりました、ありがとう」



 ユーザーショップで旅行日和を大量購入してとりあえずフィールドを踏みに行く。私のレベルより40も50も高いところなので、流石にまともには歩けない。

 安地安地、ここと、ここと、ここ、一応ここも。


 これで、何日か通えば会えるだろう。

 あの人、覚えてくれているかな。





 努力の甲斐はあった。

 新緑の宮殿の安地の隅に設置したテレポートエリアに現れると、遠くの方で確かにあの人の声がした。


 多分私はにっこにこの笑顔だったはずだ。

 うっきうきであたりを見回し、見つけて、近づこうとした時。


 一緒に話していたらしい機械人ロボノイドのプレイヤーが、あの人とソードマンから離れて、私の方に向かってきた。





 プレイヤー:ロイドからPvPの申込みがありました。






 ――へ?



「ウチのファンから通報があってね。匿名希望アサシンにネトストしてるプレイヤーがいると」

「え?ネトスト?」

「BBSで名前の聞き込み、出入りしているエリアのプレイヤーに居場所を聞いて、最近はこのあたりのフィールド安地に定期的に顔を出して探しもの。彼女のネットストーカーじゃないならなんだって言うんだい?遊び人に顔見知りはいないと言っていたよ。“通りすがりの遊び人”さん?」


 ……………………私のことです。紛うことなき、私のことです。


「あ、あの!本当にお話がしたいだけで!他意はなくて!」

「少なくとも今彼女はウチのリーダーと歓談中でね。それ以上近づくようならPKも辞さない所存だ。PvPを受けてくれるのが一番楽なんだけど」



 プレイヤー:ロイドからPvPの申込みがありました。



「…………私が勝ったら、あの人と話をさせてください」

「吹かすじゃないか、遊び人」



 PvPが承認されました。フィールドが展開されます。



 吹かしじゃないよ、サザンクロス(さいきょう)遊び人(マイナー)の戦いを見せてあげようじゃないの。

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