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2-1.初期職とソロ???

「やばいやばいやばいやばいやばい」


 前情報に全くなかった巨大なイモムシに追いかけ回されながら必死に森の中を走る。

 すでに手元の煙玉は底をつき、微妙に当たる酸のような何かでジリジリ削られる体力回復に連打し続けているポーションもそろそろ数が怪しい。

「次の街に着いたらフェニックスの羽買わなきゃ」なんて悠長なことを言っていた自分を全力で殴りたい。必携品で絶対切らすなってWikiにも書いてあったじゃん馬鹿なの?阿呆なの?

 あ、いまのでスタミナポーションラストだ。死んだわ。


 ダッシュ時スタミナ不足による走行の強制失敗ファンブルで足が盛大にもつれ、地面に激突した。


 振り返った先には巨大イモムシの大きな口。

 さようなら私の所持金。次からはもうちょっとで次の武器買えそうだからって言っても、フェニックスの羽だけはケチらないようにします。


 そう覚悟した直後。


 突如上から紺色の何かが降ってきて、私とモンスターの間に立ちふさがった。


 がぶりとイモムシの口が閉じる。

 自分以外が食べられる視界情報にヒッと喉の奥が鳴く。

 だけど降ってきた人は何でもないようにそのままそこに立っていて、私に向かって何かを投げた。


 スタミナがみるみる回復する。

 これが噂に聞く辻回復ポーション。


「あれ、倒していいやつ?」

「へっ!?!?あ、はい!!!!!」


 降ってきたプレイヤーは短剣を構えて前に飛び出す。

 プレイヤーの頭に見慣れないサイコロのエフェクトが踊っている。

 短剣を振るたびに赤いエフェクトが舞ってイモムシのHPがモリモリ削れていく。

 イモムシの攻撃は一発もプレイヤーには当たらない。

 命中失敗ではなく、プレイヤースキルで避けている。すごい。


 ほどなくしてイモムシは光の粒になって消えた。


「えと、立てる?」


 ノーダメでイモムシを倒したプレイヤーが、こちらに向き直る。


「た、立てます!ありがとうございました!!」

「えと、初期職ノービスの人、ですか?ここ、就職前だとしんどいと思いますけど」

「え?ここ修練の森じゃないんですか?」

「え、えと、修練の森はもう抜けちゃってます。ここは精霊虫の森、推奨レベルは50」


 うっひゃああああ、40レベルも上の森来ちゃった!!!いつの間に!?


「えと、帰れますか?帰還アイテムとか持ってます?」

「持ってないんです、所持金足りなくて……」


 厳密には次武器のために必要経費までケチってお金貯めてて……


「あー、えっと、これあげます」


 その人は小さなお守りの様なアイテムを差し出した。


「なんですこれ?旅人日和?」

「錬金術で作るアイテムらしいです。なんか別のアイテムの副産物でたくさんできるらしくて、ユーザー販売で安く売ってます。使うと1時間モンスターから認識されないし、触れなくなります。えと、絶対に1時間継続するので、討伐系の依頼もできないです。観光用アイテムですね」


 1時間モンスターに襲われない!?そんな神アイテムがあるの!?


「これがあれば街に帰れる!?」

「えと、私の持ってる帰還用アイテム今全部譲渡不可ばっかで……それで自力でお願いします」

「とっても助かります!所持金半減したらどうしようって思ってました!!!」

「えと、あの、フェニックスは切らさないほうがいいですよ…?」

「はい、気をつけます……」

「あ、じゃあ私はこれで」

「あの、何かお礼を…………行っちゃった」


 お名前も聞けなかった。

 でも親切な人がいてよかった~歩いて前の街まで帰ろう。


 こうしてゲーム開始五日目。私は死にかけながら無事に前の街に戻ってきた。


 あの人かっこよかったな、あの人みたいな職業につきたいな。

 そう思って、初期職ノービスからの就職には遊び人を選んだ。

 サイコロが転がるエフェクトは遊び人固有らしかったから。




 おかげさまでゲーム開始三ヶ月目。




 今日も元気にソロプレイです!!!!!




※<旅人日和>

使用すると1時間の間モンスターに認識されず、モンスターに触れる・触れられることがなくなるアイテム。

マップ観光、採集などに利用される。

上級錬金で作成できるアイテムだが、このアイテムの”作成失敗時”に上位ランカー必携品<敵意の塊>が生成される。

敵意の塊を1つ作るために旅人日和を何百も何千も作成するため、常時すごい量が捨て値で販売されている。

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